「橙色の靴履いた女の子 (;_;)」     
  「続・橙色の靴履いた女の子 (;_☆)」


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 この作品は、《ぱら☆あみ》メンバである剣聖きーちゃんさんが、当時住んでいた北海道から東京に遊びに来た際、東京タワー内の売店で “身の丈50cmほどのヴィーナスちゃん(バンダイ社製:エクセレントドール)”と出会ってからの実話を、それっぽく物語にしたものです。 当時まだ隠れファンであった彼は勇気が出ずエクセレントドールは買えなかったのですが、地元に帰った後に、少し小さめの着せ替えドールのヴィーナスちゃんは保護しました(笑)。 このいきさつを、ヴィーナスちゃんの視点でメルヘンチック(?)に描いたものです。

「 橙色の靴履いた女の子 (;_;) 」

「橙(ダイダイ)色の靴ぅ〜履いてたぁ〜女の子ぉ〜、、、濃人(ノウジン)さんに連れられてぇ行っちゃったぁ〜〜、、、、」

   それはそれは哀しい愛の物語。

 お年玉握りしめた子供達の歓声で賑わう、町のおもちゃ屋さん。
身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんは今日も、そんな光景を楽し気にガラスケースの中から見つめます。
自分を此処から連れ出してくれる、優しいご主人様を待ちながら…。

 ある日のこと、身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんが いつもの様にケースの中で微笑んでいると… いかにも優しそうな、美青年が自分を見ています。
身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんの、塩ビで出来た 「こころ」が高鳴ります。 もしかしてあの人が私を、夢の世界へと連れ去ってくれるのかしら?
しかしその美青年は、

「僕は隠れファンだから、買っても部屋に飾れないよ」

そう言って、身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんの前を通り過ぎ、雪深い地元へと、帰ってしまいました。

 それから数日後…。 また身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんを見つめる、しかし今度は濁った目がありました。
両脇に羽の付いた帽子を被り、牛乳瓶の底の様な眼鏡を掛けた小太りのその男は、

「うほほぉ〜いっ!身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃん見っっけ! 今の内に買って、押入の奥深くにしまい込んで、プレミアが付いたら売っちゃおっと!」

とガラガラ声で叫び、無造作に手に取ってレジに突き出すと、無節操にもウェPの紙袋に、無理矢理押し込んでしまいました。

袋の中で、身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんが途方に暮れていると、どこからか、泣き声が聞こえて来ます。

「しくしく。 貴方も私たちと一緒に、押入の中に閉じ込められるのね」

そう言って泣いているのは、女神さまのガレキ人形でした。

身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんも、自分の運命を呪い、我慢仕切れずに工場で生まれてから初めて、泣き出してしまいました。

「あぁ… いつか会った、あの剣聖きーちゃんさんに、貰って欲しかった…」

笑顔の消えた、身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんを、それから見た人は、いない………。

FIN

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「 続:橙色の靴履いた女の子(;_☆) 」

 それはそれは、哀しい大海原に浮かぶ、小さな小さな愛の物語…。

 ここは、濃人さんのグッズ貯蔵押入れ。愛する人と、幸せな生活を送ろうと生まれて来た無数のお人形さん達が、値が上がりマニアに転売出来るまで、ずっとずっと閉じ込められている、昼なお暗い、寒くて寂しい場所。
身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんが、きらきらしたショーウィンドゥからここに連れてこられて、いったいどの位の月日が経ったでしょう。

「ごほごほ… お嬢ちゃん、また泣いているのかい?」

身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんが振り返ると、この場所のヌシ、ぼろぼろになった、スペクトルマンお爺さんが立っていました。

「しくしく。 お爺さんは、いつまでもここにいて、哀しくないの?」
「はは、、もう慣れたからね。ワシもジャイアントロボさんや月光仮面さんの様に 人気があれば、もっと早くここを出られた筈なのじゃが… ごほごほ」

身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんは、スペクトルマンお爺さんの背中をさ すりながら、いつか会った美青年:剣聖きーちゃんさんを思い、また泣くのでした…。

 それから数日後、テレビの天気予報が大寒波の放送をしている、寒い寒い夜の事です。 締め付ける様な冷たい空気が忍び寄って来た深夜、乾いた不気味な音で、身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんは、目を覚ましました。

「……? 今の音は、なに?」

ぱきっ。ぱききっ。その音は、押入れのあちこちから聞こえてきます。

「ごほごほ… どうやら、また仲間が死んでしまった様だの……」

スペクトルマンお爺さんが、横たわったまま、語りかけて来ました。

「死んだ? どうして?」
「ごほごほ、こういう寒い晩にはな、ワシら塩ビの人形は、体が裂けてしまうの じゃよ… ごほごほ……」

身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんは慌てて自分の体を調べて見ましたが、生まれてまだ間もないからか、どこも裂けてはいませんでした。

「ごほごほ… しかし体が裂けてしまっては売り物にならん。 その人形は濃人さんに捨てられてしまうのじゃが、ここから出られるのじゃから、幸せかも知れん」

身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんは、もう何処にも逃げられない自分の運命を悟り、今度こそ、絶望の底に突き落とされた気がしました。 しかも……!

  ぱきっ……。

「?…… お…… お爺さん?スペクトルマンお爺さんっ!?」

身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんの目の前で、スペクトルマンお爺さんの体が、真っ二つに裂けてしまいました。

「いや。 いやよ。 お爺さんが死んでしまったら、誰が私の涙を拭いてくれるの? 誰が私を慰めてくれるの? いや… いやぁ〜〜〜っ!」

スペクトルマンお爺さんは、ヒーロー人形から、ただの塩化ビニールの破片へと、その姿を変えてゆきました。

その時です! 優しい光が、スペクトルマンお爺さんの体から発して…。

「?… この光は… なぁに?」
「ほほ…、お嬢ちゃんはずっと、泣いてばかりじゃのぅ…。 お人形さんはいつでもにこにこと、微笑んでいなくては駄目なのじゃよ… ほほ」
「お爺さん…… なの?」
「人形はの、長生きをすると、人間と同じ魂を持つのじゃ。 ワシの魂と、最後の力を振り絞って、お嬢ちゃんにちっぽけな魔法を掛けてあげよう…」
「魔法…?」

 それは奇跡。

 気がつくと身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんは、暖かいお布団の中で寝ていました。 固かった髪の毛は、ふさふさの金髪になっています。 そこからは、ほのかにムースの香りも…。 これが私なの?
そして隣には、夢にまで見た、あの剣聖きーちゃんさんの優しい寝顔が…。

「てへっ。身のたけ50cmほどのヴィーナスちゃんが、身のたけ25cmほどに縮んじゃったぁ… (ありがとう!スペクトルマンお爺さん!!)」

笑顔の戻った身のたけ25cmほどのヴィーナスちゃんは、これからはずっとずっと、愛しい人に守られながら、ここで笑顔で暮らしてゆくつもりです。

皆さんのお家のお人形さんは、にこにこ微笑んでいますか?

FIN
 “髪の毛のムース”の前後のくだりは、美青年のモデルとなった方の“着せ替えヴィーナスドールへの溺愛”(笑)ぶりの実話に基づいた、かなりドキュメンタリイな描写になってます (^-^;)
 前編・後編に分かれているのは、前編を書いた時点では、まだ 「現実」が、そこまでしか進んでいなかったからです。 この妄話に影響を受けたのか受けなかったのか、その後現実が新しい展開となったので、後編 (続編)が書けた訳ですが、物語を現実で引っ張って (着せ替えドールを保護して)くれたモデルの剣聖きーちゃんさんには、感謝したいと思っています。

 いや、実際自分自身 (うっ!)でも、前編を終えた時点では単純に「剣聖きーちゃんをからかってやろう」と云う意図で始めたものの、「あまりに身の丈50cm程のヴィーナスちゃんが可愛そうだ… (T-T)」と思い、なんとかしたかったと思っていたので、嬉しかったですね(笑)。

 それにしてもこの妄話、初出は96年のアタマだったのですが、「ウェPの紙袋」とか、当時の流行をしのばせる記述がありますね… (^-^;)。 “濃人(ノウジン)さん”は何故かアラレちゃんグッズに身を固めていますが、まさかその後リニューアル放送されるとは思いませんでしたし(笑)。

 え…? ヴィーナスちゃんのその後ですか…?(笑)
大丈夫、いまでも幸せに、暮らしていますよ(その後一緒に東京に来て、お洋服を一杯買って貰って、しかもサクラさんなどのお友達も出来たようです(笑)

「橙色の靴履いた女の子(;_;)」
  初出日:96年1月13日(《ぱら☆あみ》第二期PATIO /発言番号:1550)

「続:橙色の靴履いた女の子(;_☆)」
  初出日:96年1月20日(《ぱら☆あみ》第二期PATIO /発言番号:1758)

(うっ!:98年12月22日付)  

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