ああ素晴らしきEDベータデッキの世界 ソニー EDV-9000

●トップページへ ●元いたページに戻る
● VHS デッキ ●自己紹介ページへ
 


 ■ VHS とのフォーマット戦争に敗れた孤高の高画質ビデオ

 我が家では、最初に買ったビデオデッキが VHS 機で、以来エアチェック用のビデオはほとんど全て VHS 機でした。 カメラは ノーマル8ミリ、Hi8 ばかりで、実はベータはほとんど使っていないフォーマットだったりします。 しかし S-VHS のハイエンドマシンが出揃うまで、画質、音質ともに最強とも云われた ED ベータフォーマットですし (フォーマット上でのカタログ性能では S-VHS を依然凌駕)、元々ソニー大好き人間でもあったので、実用性は二の次、三の次、所有することそのものが目的の、完全に道楽として買ったのがこの EDV-9000 です。
EDV-9000 フロントビュー

誇らしげに輝く ED-Beta のエンブレムとランプ、インジケーターつきの
ジョグ&シャトルダイアルがかっこいい。 2台並べると超精密編集も可能に。

EDV-9000 前面パネル
いかにも80年代のビデオデッキらしい無骨で重厚な EDV-9000のフロント周り。
サイドには高級感たっぷりのウッドパネルが装着されています。
黒い筐体のビデオデッキなどの音響機器は、今はもうほとんど見なくなりましたね。

EDV-9000 背面
背面部の接続端子群は、必要にして十分な数が揃ってます。

EDV-9000 電源部

電源部が大きく飛び出したリアビュー。 SONY のAV機器のハイエンドモデルでは、
ビデオに限らずこういうレイアウトが多いですね。

EDV-9000 操作部
正面向かって右のオープンスイッチを押すと、各種スイッチ類が載ったドアが
ゆっくりと開きます。 それぞれのスイッチ類はかなりおおぶり。

 ソニー/ SONY EDV-9000 1993年製

 あたしがビデオを初めて購入した頃 (1985年) は、すでに ベータ VS VHS 戦争は大勢が決していた頃でした。

 前後してベータ陣営は次々とメーカーが落伍し (ビュースター (東芝)、マイコニック (サンヨー)、ビスタック (NEC) など)、事実上の敗北宣言と受け取られた有名な 94年の 「ベータマックスはなくなるの?」、「ベータマックスを買うと損するの?」 という逆説的な広告によって、フォーマット戦争は完全に終結。 ベータ陣営は本家 SONY を残すのみとなっていました。

 VHS に比べコンパクトなテープカセット、VHS を寄せ付けない高画質、高音質、多機能。 さらに発売時期の先行など圧倒的なアドバンテージを握っていながらシェア争い、標準化戦争に敗北したベータは、単にオーディオ機器、電化業界の話にとどまらず、経営学の教科書にも登場するほどの様々な示唆を与えています。

 EDV-9000 は、そんな雌雄が決しつつあるフォーマット戦争の末期に、「ベータプロ」「EDベータ、プレステージモデル」 とのキャッチと共に、まさに最後の超重量級スーパーベータデッキとして誕生しました。 発売された 1987年当時の定価は 298,000円。 その後物品税が廃止されたことによる価格改定 (時代を感じる…) で 272,000円となり、確か末期 (2002年頃)にはオープン価格表示となり、実売 245,000円ほどの実勢価格となっていました。 専用の 「EDーMetal」 テープを使用し、水平走査線500本のハイバンド化により高精細映像記録を実現した民生用ビデオ最強の ED ベータ方式を採用し、質量およそ16,5 Kg。 価格共々文字通り、最後の巨艦として船出したデッキでした。

 VHS 党のあたしがこのデッキと出会ったきっかけは、当時とある出版社で仕事をしていた際に、「兄貴が SONY の開発をやってる」 とかいう女性編集者の方がいて、その人の家にお邪魔した時に見かけたデッキ、SONY SHB Betamax SL-2100 (1988年/ 販売延長された DEV-9000 を除き、最後のベータ機 (ハイバンドベータハイファイ) となるデッキ、定価 180,000円) に、思わず心を奪われたのがその発端でした。

 「レンタルビデオが見れないからこんなビデオいらない、何でもいいから VHS のデッキが欲しい」 とこぼしていて、ベータにそれほど興味はなかったものの、一応売価は知っていたので、思わずそこらの電気店で安い VHS 機を買って交換しようかと思いましたが (^-^;)、「これはいいものだから、大事に使うべき、邪魔じゃないなら VHS を買い足せばいいよ」 とアドバイス。

 その頃あたしは S-VHS 機を2台所有していましたが、SL-2100 の高画質に驚き、「それの上を行く ED ベータはどれほどなんだろうか…」 と強く興味を持ちました。 また人に 「ベータは良いものだ」 と云っておきながら、自分は雑誌 「ビデオサロン」 で読みかじった程度の知識や実感しかないのも何だかなぁ…なんて思ったりして、気がついたら…バカでかいデッキが我が家に鎮座していました (笑)。

 その後 EDV-9000 は、発売以来 15年、なんと 2002年の8月まで生産を続け (ベータ最後の普及機 SL-200D (Betahi-fi)/ 定価 100,000円 と一緒に)、カタログに載り続けた 「沈まない巨艦」 でした (大型量販店などのビデオ売り場で、他のメーカーのおしゃれなシルバーやゴールドの VHS 機の中で、「ずもももぉぉぉぉ…」 と黒い筐体で独特のオーラを発するさまは一種の名物でもありました (^-^;)。

 技術革新の激しいAV機器業界にあって、大量生産を行う大メーカーの1つのモデルがこれほどの長期間製造され続け、またカタログに掲載され販売され続けたなんて、世界的に見てもほとんどこの EDV-9000 くらいじゃないでしょうか。 SONY の最後の意地を感じさせますね。

 現在はもうベータどころか VHS も、W-VHS、D-VHS 含め 「昔のフォーマット」 となっていますが、個人用ビデオフォーマットが普及し、また発展する中、一方の雄、ベータの最上位機種に触れることができたのは、個人的にはすごく幸運なことでした。 ベータの録画テープはあんまり増えませんでしたが… (高いよw)。

 さて肝心の画質ですが、フォーマット自体のスペックは S-VHS をしのぐ性能を持っていて、また SONY が威信を掛けて作ったデッキだけに、発売当時はもちろん、今見ても時代を感じさせない素直さ、素晴らしさがあります。 発売当時のVHSとの直接対決では、S-VHS (Super-VHS) 一号機となる Victor HR-S7000 (1987年/ 198,000円) を受けて、さらに画質と編集機能にとことんこだわった Victor の S-VHS ハイエンドマシン、HR-S10000 (1988年製/ 300,000円/ CLIAZ クリアーツ) あたりが、価格帯といいデザイン、レイアウトの類似性といい、好敵手でしょうか。 この時点では、まだ ED ベータに軍配が上がっていたような記憶があります。

 しかし S-VHS がその後、各社競って薄膜ヘッドや TBC とか三次元 YCS/ DNR、デジタルオーディオなどの新技術を搭載し、さらにソースとなるチューナー部分などの高画質、高音質化を次々実現して行く中、87年から技術的進歩が止まった EDV-9000 は、あらゆる点で 「見劣り」 がしてしまう感じになっています。 テープ自体が高価なこともあり、その真価は発揮しずらい感じですし、経年劣化もあり、我が家の EDV-9000 ちゃんは、ちょっと我が家の他の S-VHS 機にかなわない感じです。

 我が家はまだごく一部しかデジタル化してませんが、ハイビジョンやらデジタル放送やらが当たり前の昨今、もはや出番はない感じがします。 前述の通り、我が家のライブラリはほとんどが S-VHS テープでのものなので、一応完動する EDV-9000 ちゃんをこのままモスボール状態で家においておくのが良いのかどうなのか、迷っているところです。 あたしが貧乏で金目のものを手放していた時期を乗り越えた愛機ですが、持ち主によってはまだまだ現役で働けるのに使わなくなったデッキを無為に手許に留め置くのは愛用したデッキに失礼な気持ちもするし (窓際族みたい (^-^;)、もし仲の良い知人宅で活躍する場があるなら、お嫁に出すのもいいかな…なんて思ったりもしてます。

 …やっぱりイヤw

 なお 「ベータプロ」 は、ベータマックス発売 10周年を記念して発売された Hi-Band ベータ機 SL-HF900 (1985年/ 定価 239,800円) を初代とする Hi-Band ベータ、ED ベータの最上位機種のみにつけられた称号で、ED ベータには編集機能などを簡易化した下位機種もラインナップされていました。 EDV-8000 、EDV-7000 、EDV-6000 、EDV-5000 (EDV-8000 と EDV-6000 は後に登場)という、分かりやすい名称のラインナップでした。
EDV-9000 リモコン
 愛してやまない VHS デッキについては、こちら ああ素晴らしきVHSデッキの世界 をご覧ください。 また姉妹サイトの 「同人用語の基礎知識」 ページでも、ビデオの解説を行っています。 こちら 「ビデオデッキ」 です。
 
(喫茶《ぱらだいす☆あ〜み〜》皿洗い/ うっ!)
●前の話ぃ ▲このページの先頭に戻っちゃう ●次の話ぃ
スペース
戻る