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ネクタイ
クラバットの歴史

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古くから、人類の首回りを飾り付けてきたネクタイ

 「ネクタイ」(Necktie) とは、ブラウス (ワイシャツ/ ホワイトシャツ) の首回り、胸元に結びつける紐や棒状の布で作られた服飾装飾品のひとつです。 スーツを着用したサラリーマン、あるいはスーツタイプの 指定制服 を持つ学校のユニフォームなどでは、ほぼ必須の装飾品となっています。

 言葉としては 「ネック」(Neck/ 首)+ 「タイ」(Tie/ 結ぶ、つながる) との造語となりますが、日本やアメリカ以外の国では 「タイ」(Tie)、もしくは 「クラバット」(Cravat) などと呼びます。

 同人 などの世界では、ある種の フェティシズム を喚起する対象として、制服フェチなどと共に男女を問わず、独特の価値や使われ方、取り上げ方をされる場合があります (裸ネクタイ など)。

様々なネクタイの代表的なタイプ

 このうち女学生の制服で一般的なのは リボンタイ (スクールリボン)、男女ともに日本でもっともポピュラーなのは、両先端が剣先のように尖った棒状の布でできた 「棒ネクタイ」(幅広/ 幅タイ/ ダービータイ) でしょう。

 棒ネクタイの場合、生地の柄、色、幅、素材によって胸元のイメージも一変しますし、古典的なシンプルノット、多くの人が無意識にやっているであろうダブルノットから、複雑なクロスノットまで、結び方は6種類から10種類にまで及び、これだけでもネクタイの表情、イメージは大きく変わります。

「ネクタイの再現図」

これは再現図です。下のサムネイル画像へマウスオーバーすると、左側に大きな再現図が表示されます。

回線の状態によっては、表示までに少々時間がかかる場合があります。

棒ネクタイ
(幅広/ 幅タイ)
リボンタイ 紐ネクタイ
ストリングタイ
蝶ネクタイ ループタイ
(ボーラータイ)
ノーネクタイ

 あわせて使うネクタイピンなども、胸元の 雰囲気 作りのワンポイントとして重宝しますし、フォーマルな場で必須であると同時に、とても便利なおしゃれ服飾品と云えるでしょう。

 なお日本では、環境 省が音頭を取る 「クール・ビズ」(COOL BIZ) の一般化により、2005年の夏 (6月1日〜9月30日) からノーネクタイ軽装略装による 「涼しい」 いでたちが夏季の推奨される服装として提唱され、普及しつつあります。

 その後 2010年になり政権がかわり、自民党主体で行われた 「クール・ビズ」 の行方は不明ですが (夏場のネクタイの 需要 が落ち込むとして、2010年1月、ネクタイなど服飾業界が廃止を申し入れています)、何かまた新しいファッションの提案はあるのでしょうかね。

一風変わったネクタイ、あるいはネクタイ活用法

 ネクタイは結び方で雰囲気や趣が変わる便利な服飾 アクセサリー ですが、結び方が分からない、面倒だ、なんて人のために、ワンタッチネクタイ (スナップタイとも) と呼ばれる簡便なものも出回っています。 蝶ネクタイやリボンタイなどは結ばないのが前提なので、こうしたタイプは昔からありますが、幅ネクタイでまで横着するのは、ちょっとアレだなぁ…って感じもしますね。

 なお一風変わった使い方としては、頭に鉢巻のようにまわして結ぶ使い方は、年末の忘年会ではおなじみの光景となっていますね。 サラリーマンのお父さんも大変なんです…。

ネクタイ…クラバットのルーツとは?

 なお 「ネクタイ」(クラバット) の起源は、実はあまりはっきりしておらず、兵士が防寒のため羊毛で作った 「マフラー」 のようなものが装飾的に華美な進化を遂げたとする説や、喉の保護のための布がアクセサリー的な アイテム になったなど、諸説あるようで決定的な説はまだ存在しないようです。

 およそ2世紀頃には首に何かを巻くという布の使い方が生じ記録に残されており (ローマ軍の兵士とも)、それがそのまま 「ネックレス」 などとはまったく異なった進化を遂げて今日に至っているとの話もありますが、「布を首に巻く」 という行為は、ほとんど布が発明された頃には行われていたであろう事が予想され、何を持ってルーツとするかは難しい問題です。

17世紀、フランスで 「クラバット」 が表舞台に

 現在のような使われ方、似た形状のものが確立したのは時代をずっと下って17世紀頃と云われ、フランス王 ルイ14世 (Louis XIV de France/ 1638年9月5日〜1715年9月1日) の時代とも云われます。

 「クラバット」 とは、クロアチアの兵士のことを指しますが、ブルボン朝を最盛期に誘い、ヴェルサイユ宮殿を造営するなど派手で陽気、軍拡にも熱心だった野心家のルイ14世は、各国の軍隊を飲み込み、その際にクロアチアの騎兵が弾除けと活躍のおまじない、目印などのために首に巻いている布を目にしたようです。

 ちなみにルイ14世が 「あいつらの首に巻いているものは何だ」 と尋ねたところ、側近が勘違いして 「あれはクラバット (クロアチアの兵) でございます」 と答えたのを、ルイ14世が 「あの布はクラバットか」 と早合点したとの逸話があります。

 ただしルイ14世はこの 「見慣れないおかしなアクセサリー」 を好意的には捉えておらず、一説には身に着けないよう禁止したとも伝わります。 クロアチア兵はそれでも身に着けるのをやめず、目立たないように工夫して首にまいていたようです。 ただし兵隊が色とりどりの布を目印として首に巻く行為は前述の通り歴史も古く、いつごろから完全な飾りとなったのか、この時にルイ14世の勘違いで作られた 「クラバット」 という言葉と、こんにちのネクタイとの繋がりにどう歴史的な意味があるのかは、少々議論の余地があります。

19世紀になり、ネクタイは男性の正装の必須アイテムに

 現在の蝶ネクタイや幅タイ(棒ネクタイ) のような結び目をつけるタイプは、19世紀になってからです。

 イギリスの競馬で有名なダービー伯爵 (ダービー卿/ 1485年 「薔薇戦争」 の功績によりトーマス・スタンリー/ Thomas Stanley に与えられ、代々使われている称号) が、自身が所持する競馬場に訪れる際に、一風変わったおしゃれとして首に布を結んでいましたが (先が尖った剣先タイプの布を最初は首に巻き、後に結び下げたネクタイで、現在の棒ネクタイ、幅広タイ、幅タイのルーツ)、これが 「かっこいい」 として競馬 ファン の間で流行。 1850年代には、ダービー競馬場のマストアイテムになったようです。

ダービー伯爵家とイギリス王室のファッション競争

 競馬のオークス、ダービーを創設したのは ダービー伯爵 12代目エドワード・スミス・スタンリー(Edward Smith-Stanley/ 1752年〜1834年) ですが、14代目、15代目あたりで、こうした流行が作られたようです。

一般的な幅広タイプの棒ネクタイ  とりわけ時期的に、首相にまで上り詰めた 14代目 エドワード・ジェフリー・スミス・スタンリー (Edward Geoffrey Smith Stanley/ 1799年3月29日〜1869年10月23日) の影響が大きかったようで、肖像画や写真にも、古典的な形状のネクタイをしたスタンリーの姿が残っています。

 またダービー伯爵家は直系の10代目までは王位継承権を有しており、直系が断絶して傍系となった 11代目以降も首相や大臣、陸軍の将軍、植民地の総督、オックスフォード大学やロンドン大学の総長などを代々輩出しているイギリス貴族の超名門、セレブ中のセレブですから、ある種のファッションリーダーとして、真似する貴族や上流階級が多かったのでしょうね。

 その後、1711年にアン女王が創設したもう一方の超名門、イギリス王室所有のアスコット競馬場 (ロイヤルアスコット/ ROYAL ASCOT) でも似たアイテムが流行し、それぞれ 「ダービータイ」(Derby Tie)、「アスコットタイ」(Ascot Tie) として人気になり、それがその他の服飾にも影響を及ぼしていったようです。

 第一次世界大戦 (1914年〜1918年) 前後までには、このタイプのクラバットを身に着けるのは貴族や限られた上流階級の徒弟だけではなく、男性のごく一般的な正装となっていたようです。 前後して 紳士 のたしなみとしてアメリカにも伝わり、エリートビジネスマンの正装として大流行。 アメリカ式のファッション、文化の一つとして世界に広まりました。

 ところで棒ネクタイの柄と云えばストライプがポピュラーですが、多くのストライプ柄は縦や横ではなく、斜め方向に線が走っているものです。 この斜めの方向が正面からみて右側が上がっているものは英国式 (イギリス式/ このサイトのモデルが装着しているタイプ)、反対に左側が上がっているのは米国式 (アメリカ式) と呼ばれています。 厳密に使い分けられているわけではありませんが、ネクタイはもちろん、スーツやシャツ (ブラウス)、革靴などのデザインの一部にも英国式や米国式特有の意匠を持つこともあるので (とくにアーガイルとかチェックとかディンプルなどの柄)、ごちゃ混ぜだとファッションにうるさい人からはおかしく見えるかもしれません。

 また英国式の柄は日本で云う家紋のようにストライプの太さや本数、色などを含め、身に着ける人の出自や所属をあらわす文化が一部で残っているので、イギリスを訪れる際は柄物は避けた方が無難だとはよく聞く話です。 まあちょっとしたビジネスや旅行で訪れるなら問題はないのでしょうけれど。 なお日本で使われるストライプ柄は、学生服用・一般向け用含め、その大半が向かって右側が上がっている英国式のものです。 日本に洋装が入ってきた時に欧州タイプが主流だったこと、戦後の経済成長の中、営業マンが身に着けるネクタイでは右上上りが右肩上がりに通じて縁起のよいものだと受け取られたからなど様々な説があります。

日本人最初のネクタイ着用者は…?

 日本人で最初に 「ネクタイ」 をしたのは ジョン万次郎 (中濱万次郎/ 1827年1月27日〜1898年11月12日) というのが定説となっているようです。 万次郎がアメリカ人と交流を持ち、アメリカにわたって生活していたのが 1841年〜1851年頃 (天保12年〜嘉永3年) ですから、アメリカでもこの頃には一部の地域で一般的に見かけ、また入手も容易な服飾品になっていたのでしょう。

 ただし現在のネクタイ (クラバット) の直接のルーツとも思われる 「ダービータイ」 の発祥と流行が 1840年代から 50年代ですから、時期的にかなり近い感じがします。

 万次郎は日本人として唯一、1848年頃にアメリカ、カリフォルニアで発生した 「ゴールドラッシュ」 に参加した人物ですが (ここで大金を手にして、日本に帰ることができた)、このゴールドラッシュには、当時不況で職にあぶれていたヨーロッパの下級貴族や農民、商人などが 「一攫千金が狙える新天地」 を目指して多数わたっていたようです (人口が2〜3年ほどの間に 20万人近く増え、後の西部大開拓につながります)。 この際に、競馬好きでギャンブラーなネクタイをしたイギリス人と遭遇し、あるいは譲り受けたのかも知れません。

 蛇足ですが、ゴールドラッシュ時代に生まれた代表的なファッションにジーンズ (デニム/ ジーパン) もありますが、こちらは白洲次郎が最初に身に着けた日本人とされているようです。

フェチの対象、フェチ要素としての 「ネクタイ」

 制服に 「フェティシズム」 を感じる多くのファンが、ネクタイにもとりわけ強いフェチ的要素を感じるのは興味深い点です。 制服系のフェチは 「裸にしたら意味がないだろ」 という要素が非常に強いのですが、例えばスーツフェチ、ブレザー制服 のフェチであっても、最後の最後にネクタイだけしていれば (いわゆる裸ネクタイ、裸リボンタイ)、まぁそれもアリか…なんてことになっているのが面白い点です。

 棒ネクタイはある種の 「首輪」 のような雰囲気もありますし (似た理由で、チョーカーの人気も高い)、制服 やスーツにはある種の神聖さ、体制における従属のような意味もありますから (逆に緩めたり乱したりすると情欲など心情の表現がしやすい)、こういった点が、見た目による本能だけでなく、想像を掻き立てる、理性を揺さぶる魅力を持つのでしょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2002年11月26日)
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