書き込み削除との熾烈な争い…縦読み
「縦読み」 とは、原則として横書きの 掲示板 や ブログ の コメント欄 といった ネット の 書き込み のうち、各行の最初の一文字を縦に読むとつながるように細工した独特の書き込みスタイルのことです。 和歌や詩歌の 「折句」(頭取り) と、基本的に同じです。 「ねこ大好き」 とも呼びます (後述)。
最初の1文字目ではなく、2文字目を読む場合は 「2列目縦読み」、3文字目なら 「3列目縦読み」 となります。 また最初の1行目は1文字目、2行目は2文字目、以下、3行目3文字目、4行目4文字目といった感じで、斜めに読むスタイルもあります。 これは 「斜め読み」「斜め」「ナナメ」 などと呼びます。
さらに上から下ではなく、下から上へ読むタイプや、1文字目2文字目の両方が別々の縦読み (ダブル) となっているもの、1、2、3文字目がそれぞれ縦になっているトリプルや、斜めがクロスしてるものなど、種類も豊富です。
縦読みサンプル
とりあえず、一番簡単なものの実例を見た方が早いでしょう。 以下のような感じになります。 この見本では分かりやすいように、最初の1文字目の 色 を変え、それ以外の文字との境目に半角スペースを入れてあります。 1文字目を1行目から順に上から縦に読むと、意味がつながっているようになっています。
同 じ 趣味 の集まりだからって何をやってもいいわけじゃない。
人 によって微妙に考え方も違うんだし、
用 もないのに、いちいち文句のためだけに文句を言うのは間違ってるよ。
語 彙の少ない人の中傷カキコはウンザリ!
この例では、1文字目を縦に読むと 「同人用語」 になります。
斜め読みサンプル
こちらは 「斜め読み」 のサンプルです。
同 性愛とかロリのマンガってどんな人が読んでるの?
愛 人 が2人もいてリア充の俺にはわからんわwww
研究 用 に何冊か買って読んでみたけど意味不明www
恋愛を 語 ろうなんて、オタには100年早いわ
この例でも、斜めに読むと 「同人用語」 になります。
縦読み…それは、「発言削除」 される場所への書き込みのために
こうした書き込み方が生まれ、また流行った背景としては、特定サイトの掲示板やブログのコメント欄などに意見を書き込む時に、管理人 が削除するのを防ぐ意味があります。 例えばあるブログの意見に反対の意見を持っているとして、その反論をコメント欄に書き込んでも管理人の検閲 (コメントデザイン) によって都合の良い意見だけが掲載され、反対意見は反映されなかったり削除されたりする場合です。
この場合は、普通の読み方をすると無害だったり一見そこの管理人の意見に賛成するような意見の形で書き込み安心させて、その実よく見ると、縦読みで痛烈な批判をしているなんて攻撃の仕方に使います。 単なる削除逃れだけでなく、管理人が検閲したつもりで気がついていないのを笑う訳ですね。 初期のころは ゲーム 関係の 公式 な掲示板 (SEGA BBS とか Leaf 公式 BBS とか) などでよく見かけるものでした。
前述した通り、こうした 「最初の一文字取り」 は、和歌や詩歌などの世界では 「折句」(折り句) として昔からありますし、例えば有名な詩人、谷川俊太郎 (1931年12月15日〜) の 作品 に、最初の1文字をつなげると 「あいしてる」 になる、ちょっと ロマンチック な和歌もあります。
ネットの世界に関して云えば、多かれ少なかれ、パソコン通信 の時代から存在するある種のパズル、暗号として、豊富な語彙を駆使して秘めた心のうちをそれとなく記す方法として、昔からポピュラーなものなんですね。 またこうした手法は日本独自のものではなく、例えば英語にも 「アクロスティック」(acrostic) なんてのがありますし、ある種の暗号、密書の謎掛け、あるいは言葉遊びとして、戦記ものや推理小説などにも登場しますし、洋の東西を問わず文字で意思疎通する場合にはつきもののようです。
「縦読み」 大流行のきっかけは、ネタばらしと掲示板削除対策
なおネットの世界でこれほど 「縦読み」 がポピュラーになったのは、掲示板 2ちゃんねる の中で 釣り や釣りを兼ねた 煽り と呼ばれる書き込みが多かったことがあげられます。
2002年の2月23日には、ガイドライン板に 「【縦】縦読みのガイドライン【縦】」 が立ち、各板の秀作縦読みが集められていました。 とりわけ、「オカルト板」(オカ板) に、2000年12月12日に立てられた スレッド、「(゚o゚)恐怖体験(゚o゚)」 において、スレを立てた人が自分の恐ろしい体験を真実かのように書きながら、縦読みで 「ネタ ですよ」 とばらしていたのは、話題になっていました。
それが一気に盛り上がったのは、いわゆる 「ウヨサヨ論争」 において、左系の人たちの掲示板などに、保守系の人たちがこの手の レス を仕込むのが流行ったことが発端となっています。 左系、革新系の人たちの掲示板の容赦のない発言削除や検閲は、ものすごいものがありますから
なお 「2ちゃんねる」 の 「ハングル板」(ハン板) に、2001年8月3日に立てられたスレッド、「私は韓国の ファン ですが・・・」 の 最初の書き込み (1の発言) において、韓国を擁護した書き込みに見せて、最初の1文字目を縦読みすると 「韓国人は死ね」 となっているものがあり、当時のウヨサヨ最前線 (拉致問題や、2002年の日韓開催となった第17回ワールドカップのあれやこれやで盛り上がっていました) であった 「ハン板」 で、これらが相乗効果をもたらして縦読みが大流行。 大きく広がるきっかけを作ったようです。
無理やりな縦読みには、ねこ大好き
さらにその後、「ねこ大好き」 が縦読みで流行。
なぜ 「ねこ」 なのかと云えば、「>>1 氏ね」(死ね) の 「ね」 に相当する最後の行に苦し紛れに入れたのが発端のようで、縦読みであるのを高らかに宣言するため、最後の行にことさらに 「ねこ大好き」 を差し入れたり、一行目の縦読み 「ねこ大好き」 が流行し、「ガイドライン板」 でスレッドが立ち (「『ねこ大好き』のガイドライン」/ 2003年6月16日)、様々な改変バージョンが生まれたりしました。
縦読みが韓国ネタで大きく盛り上がっている時期でもあり、瞬く間に各板や他の掲示板にも伝播。 以降、この言葉を縦読みに仕込んだり、縦読みそのものを 「ねこ大好き」 と呼ぶ場合もあります。
気がついてない人に注意喚起する 「志村〜」
「縦読み」 であるのに気づかず、縦読みレスに反論 (マジレス) するような人に、「志村〜」「しむら〜」 と呼びかけることがあります。 これは、ザ・ドリフターズの 「8時だョ!全員集合」(TBS系列/ 1969年10月4日〜1985年9月28日) の前半コント (22分コント) などで、志村の後ろから幽霊などが近づいてくるのを見た会場の子供たちが、それに気づかない (演技をしている 志村けん) に、「志村〜後ろ後ろ〜!」 などと大声でそれを教えている様子から転じた言葉です。
なお、いわゆる お祭り が盛り上がり議論が加熱すると、縦読みが乱発される傾向にあります。 殺伐 とした 雰囲気 となり、「もう縦読みはいらねえ」 なんて罵声を浴びることもあります。 さらに縦読みだと明白なものであっても、一見すると批判対象の擁護だったり、そのスレッドの空気とは正反対の意見だったりするのを恣意的に 解釈 して取り上げるマスコミなどもあり、「相手を利している」「議論の邪魔だ」 と嫌う雰囲気もかなりあります。
縦読みもビシっと決まると爽快なものがあるのでしょうが、限度を超えたり時と場合を選ばないと、罵声を浴びて終わりというケースも多いようです。