ちょっとカタコトっぽくなるのが新鮮? 「促音省略言葉」
「促音省略」 とは、例えば 「かっこいい」 を 「かこいい」、「やっぱり」 を 「やぱり」、「いってきます」 を 「いてきます」 などなど、本来の言いまわしに含まれる促音 (主に っ/ 小さいつ) を省略する言い回しの事です。 ある種のくだけた若者言葉となりますが、ネット の 掲示板 などで多用されがちなものについては ネットスラング だとの認識がされることもあります。
また促音を省略するだけでなく、さらに全体をカタカナや半角カタカナであらわす場合もあります。 代表的なのは 「かっこいい」→「かこいい」→「カコイイ」 などで、初期の 2ちゃんねる やそれ以前の匿名系掲示板などで AA などとともによく使われたことから、掲示板用語とか 2ちゃんねる用語 として扱われる場合もあります。
促音を抜いたり入れたり…日本語変化しすぎ
一方、本来は促音などないのに促音を挿入する、あるいは強調のためにつけた語尾の促音の位置をずらす言い回しもあります。 この場合、おおむね若者言葉として1970年代あたりから広まった 「イ言葉」 の 「イ」 を抜いてアレンジされたものが多く、例えば 「ウザイ」 の 「イ」 を抜き間に促音を入れて 「ウッザ」(あるいは強調のための語尾促音の位置ずらし (「ウザッ」→「ウッザ」) が分かりやすい代表例でしょうか。
同じ構造の言葉は 「キモイ」(キモッ) を 「キッモ」、「ダルイ」(だるッ) を 「だっる」、「クソ」(クソッ) を 「クッソ」 など数多くあります。 このあたりの言葉の使い方は、新しく使われるようになったイ言葉とは関係がない 「ウマイ」 が 「ウマッ」 から 「ウッマ」 に変化したあたりと時期が同じで、お笑い芸人がグルメ番組などで多用していたことから広まった部分もあります。 ちなみに 「バカ」 を 「バッカ」 とする部分は、1950年代に一世を風靡したコメディアン (ヴォードヴィリアン) トニー谷さんの流行語 「バッカじゃなかろか」 もあり、このあたりの相互作用は不明です。
こうした促音を足す言い回しはネット時代に増え、2ちゃんねるで スレッド を立てた人 (発言番号が1の人) を >>1 や 1、イチからイッチとなったり、そこから派生した ママ (母親) をマッマ、パパをパッパ、イヌをイッヌ、ネコをネッコなどなど、様々なものが使われるようになっています。
いわゆる 「い抜き言葉」「ら抜き言葉」「れ入れ言葉」 などなど、若者の使う話し言葉の変化やそれに伴う書き言葉の変化は様々なものがあります。 女子中高生言葉やつっぱり・ヤンキー言葉などもありますし、それが1990年代あたりからのネットスラングとの融合、ネットと親和性の高い人が多かった おたく な人の使う おたく用語 や 同人用語 とも融合して、同一事象を表現する言葉やその派生語が爆発的に増えている状況があります。
これらは世代や生活している 環境 が違うと意味が反転したりもして、なぜその文字列がその意味になるのか暗号のように ワケワカメ なものもあります。 これらを 「乱れた日本語」 と批判するのは簡単ですが、とはいえ基本は 普通 の日本語にあるので、その多くが初見でも何となく意味や ニュアンス が伝わりますし、言葉は変化する生き物なので、あまり批判しすぎるのも野暮と云うものでしょう。 仲間言葉はあえて意味や表現をすり替えて内部でのみ通じるようにする意味もあるので、これはこれで一つの文化です。 もっとも何でもかんでも認めてしまったら言葉が持つ意思疎通の道具としての有用性が損なわれますから、おのずと限度はあるのでしょうけれど。
なおこれらを 「若者の記号」 として創作物に取り入れるとリアリティが向上しますが、若者言葉や流行り言葉はすぐにまた変化したり廃れたり陳腐化するため、数年経つと一気に古臭く見えてしまう問題があります。 携帯電話やスマホといった工業製品の形状などもそうですが、変化の激しいものを取り入れすぎるのも 作品 の寿命を短くする諸刃の剣かもしれません。 これらはしばしば 設定の無効化 などと呼ばれます。 一方で時代性というかその時代の空気を保存するタイムカプセルみたいな意義もあったりはしますが、適切なリメイクがされないと新しい世代がその作品を楽しむためには面倒な歴史の追体験が必要になるかもしれません。 それもまた古い作品が持つ楽しみではありますけれど。