弱者が強者に勝つカタルシス 「ジャイアント・キリング」
「ジャイアント・キリング」(Giant Killing) とは、弱者が強者に勝つこと、もっぱらスポーツの試合において、弱小・格下のチームや選手が、はるかに格上の強敵を倒すことです。 大番狂わせや 下剋上、大物食い、大金星や大波乱を意味し、実力や知名度が上の強豪を巨人に喩え、それを倒して 勝利 する、すなわち 「巨人殺し」 ということになります。 略して 「ジャイキリ」 と呼ぶこともあります。
言葉のベースとなる 元ネタ は旧約聖書 「ダビデとゴリアテ」 やイギリスの童話 「ジャックと豆の木」、それを モチーフ とした巨人殺しのジャック、およびその英語表現から由来しますが、とりわけサッカーの世界では同名の マンガ の影響などもありよく使われ (後述します)、カップ戦などで下位リーグが上位リーグのチームを倒した際などに使われます。 その他、野球や相撲、さらにはスポーツ以外のビジネスや選挙、ゲーム やギャンブル、日常 の生活のあれこれに対して比喩表現として使われることがあります。
判官びいきといった言葉があるように、人はしばしば弱者や敗者、挫折 や 不運 な立場にあるものには同情したり肩入れしたくなりがちですし、不利な条件を乗り越えた勝利には新鮮な驚きや爽快感、カタルシスも覚えます。 それぞれひいきのチームや選手はあるにせよ、不利な条件や逆境を超えて勝利する姿はたとえ敵であってもおおむね称賛の対象となるものでしょう。 逆に勝って当たり前の巨人の側の 敗北 に対する評価は極めて辛辣にもなりがちです。
ちなみに 戦闘 で巨人殺しを成し遂げたもの、あるいはそこから転じてゲームなどで巨人を倒したとの伝説を持つ 武器 とか、格上の相手にのみ強い 特効 が生じるような 装備品 や アイテム、特殊効果などはジャイアント・スレイヤー (Giant Slayer/ 殺害者・討伐者) と呼ぶこともあります。 なおスレイヤーという言葉自体にも ファンタジー の世界を中心に、強力な敵や越えがたい巨大な障害を打ち倒す者といった意味や ニュアンス があります。
大人気サッカーマンガ 「GIANT KILLING」
なお 「モーニング」(講談社) にて2007年から連載をしている綱本将也さん・ツジトモさんの人気サッカーマンガ 「GIANT KILLING」 の作品名や、そこから転じた同様の意味の言葉を指すこともあります。 かつてはスター選手として栄光の座にいた 主人公 達海猛が、古巣の弱小クラブ 「イースト・トウキョウ・ユナイテッド」(ETU) に監督として舞い戻り、強敵相手にチームを勝利に導く 物語 となっています。 2010年に アニメ にもなった同作品はサッカー ファン らはもちろん、一般層にも 愛され、同作登場以降の 「ジャイアント・キリング」 の元ネタは、実質的にこの作品名からだといっても良いでしょう。
一方、巨人討伐の物語として世界的な大ヒットとなった 作品 に、諫山創さんの 「進撃の巨人」(別冊少年マガジン/ 講談社/ 2009年) があります。 こちらの言葉を使った 「巨人討伐」「討伐せよ」 みたいな フレーズ も同様の意味で使われることがあります。
2026年2月の総選挙でジャイアントキリングが連発
この言葉が一種の流行語になったことがあります。 それは2026年2月に行われた第51回衆議院選挙です。 前年10月に憲政史上初の女性総理に選出された高市早苗総裁率いる自民党と結成されたばかりの中道改革連合、および他党諸派が争った選挙でしたが、それまで自民党と連立政権を組んでいて離脱した公明党と野党第一党の立憲民主党とが合併して作られた中道は存在感を示せず、元立憲民主党の大物議員らの苦戦が報じられることに。 それに伴い ネット を中心にジャイアントキリングという表現が頻繁に使われるようになります。
同月8日の選挙結果は歴史的な自民大勝・中道大敗となり、自民党は単独で全議席の 2/3 を超え、史上最多となる 316議席を獲得しています (比例名簿の候補者数が足りず14議席を他党に譲ったので実際は 330議席)。 中道は元立憲民主党議員らが戦った小選挙区では7名当選のみのほぼ全滅に近い状態で、当落線上にあると報じられ話題となっていた大物議員はその大半が落選しています。 なかでも中道改革連合の設立に奔走したとされる安住淳 共同幹事長、自民党幹事長や民主党代表を務めた小沢一郎さん、立憲民主党幹事長や外務大臣を務めた岡田克也さん、衆議院副議長を務めた玄葉光一郎さん、立憲民主党を結党し代表を務めた枝野幸男さん、元ニセコ町長で選挙対策委員会事務局長の逢坂誠二らの落選は、ある種の衝撃を持って見られることとなっています。
元より選挙において大物議員を新人議員などが打ち破ることをジャイアントキリングと呼ぶ傾向はありましたが、同選挙が大きな話題となっていたこと、ネットメディアだけでなく大手メディアでも同様の表現が用いられたことにより、大番狂わせや大金星といった旧来の言葉に代わるある種の政治用語のひとつとして一般にも広がるようになっています。





