関節をどこまで動かすか… 「可動域」
「可動域」 とは、ものが動くことができる範囲のこと、おおむね使われるのは人や動物の四肢などが関節によって動かせる範囲のことです。 これは医学的には関節可動域 (ROM/ Range of MotionM) と呼び、関節が動かせる範囲や角度を示します。
可動域が大きいほど関節の柔軟性が高いとされますし、柔軟性が高ければ低い関節よりもより多様な働き方ができ、また身体を使った作業やスポーツなどでもそれぞれで高いパフォーマンスを発揮できるだけでなく、怪我の予防や肩こりや筋肉痛・腰痛といった日々の不調を招く誤った姿勢の矯正にも役立ちます。
関節はちゃんと使ってほぐせば可動域も広がりますし、そうでなければ固くなってどんどん狭まります。 おたく や 腐女子、とくに部屋に 引きこも って お絵描き や 字書き ばかりしている創作系のそれは運動不足になりがちだったり、椅子に座りっぱなしで身体や関節が固くなり腰痛にも悩まされがちです。 運動しましょう!
おたく的な可動域のあれこれ
当たり前の話ですが、創作物に描かれる架空の キャラクター も、それが人間や人間と同じような形をしていれば人間同様の関節を持ち、それぞれが 「人間らしい可動域」 を持つことが予想されるし期待もされるでしょう。 もちろん想像上の架空の存在なのでひじの関節が逆方向に動いたり人間とは思えない角度で動かせても構わないのですが (現実の人間でも極端に身体が柔らかく、信じられないような角度まで曲げられる人がいます)、しかし人体の構造や標準的な可動域を無視した動きをすると見た人に違和感を与えたり、「身体の構造を理解していない」「デッサンが狂っている」 などと思われてしまします。 身体や関節がありえない形に歪むことは蔑称として 骨折絵 と呼ばれたりもします。
またロボットものなどで、描かれた身体パーツ類の形状や構造的に 「そうはならんやろ」 という手足の動きをして、そこを 「おかしい」 と 突っ込まれる こともあります。 単に突っ込まれるだけでなく、ロボットものの マンガ や アニメ を模型やフィギュアなどといった立体造形物にする際に、「アニメみたいにちゃんと腕が曲がらない」「アッガイが体育座りしてくれない」 という事態にもなりがちです。 これは揶揄を込めて 二次元の嘘・二次元マジック みたいに呼ぶこともあります。
ネタ としては前述したアッガイをはじめアニメ 「機動戦士ガンダム」 のそれ (ガンダムのプラモ、ガンプラ) が長らく指摘されていますし、「じゃあ実際にアニメみたいに動くように改造しよう」 という熱心なモデラーを多数生み出す原動力のひとつにもなっていました。 それ以前だと、ポピーの超合金によるスーパーロボット系の 作品 で同じようなネタがありました。 まぁこれはこれで、合体変形が実際にできたりもするので、当時の技術者スゲーではあるのですが。
その後は技術的な進歩やアクションフィギュア的な技法の採用などにより、古い世代のガンプラオタが驚愕するようなガンプラやフィギュアが 公式 に発売されるようになり (その分値段も高いですが)、このあたりは長生きして良かったなとか、その超絶技術を実際のロボットにも活かしてもう少しロボット技術を発展して欲しいと思ったりもします (いや、まったく別物なのは理解してますし、機械類の構造がどうのというより動作制御が クリア すべき課題の 本命 なのも分かってますが、そこはほれ、ひとつの ロマン として…)。
3D や 2D のモデリングで、可動域はいよいよ切実な問題に
一方、コンピュータグラフィックス (CG) における人体モデルでの可動域が問題になることもあります。 現実の人体など実際に物理的な身体のパーツを持つもの (有体物) ならば、そのパーツの形である程度可動域を制御 (パーツとパーツがぶつかってそれ以上動かない) できますが、3D CG の場合、あくまで 疑似・仮想 の空間に 色 をつけているだけなので、形状を用いての制御が原則として利きません。 パーツ (オブジェクト) 同士の接触や交差もそのままでは存在せず、細かく判定のための 設定 (衝突判定とかぶつかり判定とか当たり判定と呼ぶもの) を施さなければ身体に手足がめり込んだり通り抜けてしまったりします。
ゲームを作ったり 3DCG を描いたり、そのための人体モデルを作成する際は、この衝突判定と可動域をどうするかがもっとも頭を悩ませる問題のひとつでしょう。 手足が洋服にめり込んだり突き抜ける程度ならともかく、髪の毛 が顔を貫通したり別のキャラと身体が融合したりすると、それはそれでグロいし何よりリアリティも何もなくなってしまいます。 とくに髪の毛や服 (あるいは女性の胸) といった 「揺れもの」 は、その揺れ方をおおむね物理演算によって処理しますから、こだわりだすときりがなくなってしまいますし、実装にかかる手間やそれを動かすコンピュータの スペック、予算なども含め、およそ現実的でもなくなってしまいます。
例えば髪の毛などは、髪型 の全体を幾つかの髪の房ごとに分けたパーツとして扱うのがせいぜいで、現実のように毛の1本1本を分割してモデリングしていません。 なのでそのまま衝突判定をすると、判定があった一部の房だけがまとめて飛び出すみたいな不自然なことになりがちです。 他のパーツと干渉 (交差) しにくい ショートヘア ならそれでごまかせても、腰まであるような ロングヘア だとそうはいきません。 ちょっと動くと腕やお尻に当たって不自然に房の一部が跳ね上がってしまったりします。 またパーツ分けや衝突判定を細かく設定すればするほどコンピュータに大きな負荷がかかり、処理が重くてまともに動かないなどといった事態にもなります。
もっともシンプルなのは、動く範囲を制限する、すなわち可動域を狭めることでしょう。 しかしゲームにせよ 3DCG にせよ、それらを作る目的は衝突判定を構築することではなくキャラが 「かっこよく、あるいはかわいく動くこと」 であり、どのあたりで折り合いをつけるかの葛藤が常に生じているといってよいでしょう。
パーツのめり込みや貫通を恐れるあまり、アクションゲームなのに動きがこじんまりとした 地味 なものになったり、女の子がロボットのように カクカク 動いたり スカート が 鉄板 のように固く見えると興ざめもいいところです。 服の重なりなどはマスキング (一部を非表示にする) でごまかすこともできますが、こちらもやりすぎると服や身体に透明部分ができ、身体の中が空洞があることがバレバレになってしまいます。 これはさすがに避けたいところです。
こうしたモデリングの苦労は 3D 特有でもありましたが、2D の 立ち絵 を動かせる Live2D の登場と普及や、とくに2016年から2017年にかけて空前の盛り上がりをみせた バーチャル ユーチューバー (VTuber) の存在によって、より広範囲にその苦労や悩みが 共有 されることにもなっています。 実際やってみると、それ以前のツール類に比べて テンプレート なども豊富ではるかに楽になってはいるものの、多少なりとも突き詰めようとするとやっぱりかなり難しいです。
なお Live2D による 2D アバター でありながら、まるで 3Dアバターのように ぐりぐり動く モデルは、高可動域モデルなどと呼びます。 超絶技巧を持つモデラーの高品質な高可動域モデルなどを見ていると、趣味 でモデリングツールを使っている 筆者 などはその素晴らしさにため息が出てしまいます。
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