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マッチポンプ

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自作自演で利益誘導? 「マッチポンプ」

 「マッチポンプ」 とは、片手でマッチを使って火をつけ、もう片方の手で消火ポンプを使って火を消すこと、転じて 自作自演 で善意を装いながら自らの利益を図る様子を指す言葉です。 マッチ (Match) やポンプ (Pomp) といった横文字が使われていますが、こうした使い方は英語にある表現ではなく、いわゆる和製英語の一つとなります。

 言葉の発祥の経緯や耳にした時の雰囲気が、いかにも戦後日本で無数に作られた和製英語の一つといった趣がありますが、使われるようになったのは1960年代とされ、中でも 1961年4月11日に国会で、日本社会党の松井誠衆議院議員が政権与党である自由民主党・池田総理並びに関係各大臣への質問で使った 「マッチ・ポンプ方式」 が、公式文書に残るその最初ともされます。

 ただしその中で、「世にマッチ・ポンプ方式というものがあります」 との既知であるかのような言い回しがわざわざされていますので (後述します)、類似の使い方がそれ以前に既にあったのではと思われます。

第38回国会衆議院本会議にて 「マッチ・ポンプ方式」 発言

 この発言が登場した第38回国会衆議院本会議では、右翼少年による刃物を使った日本社会党委員長・浅沼稲次郎暗殺事件 (1960年10月12日) や嶋中事件 (1961年2月1日) を受け、「銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案」 を審議していました。

 この単純に刃物の規制を目的とした内閣提出の改正案について松井議員は、「刃物が悪いのではなく、ややもすると右翼少年によるテロを容認しかねないムードを政府与党が作っているのが問題なのであって、この法案は物事の本質を見えなくするものだ」 と強く批判。

 さらに左翼によるデモ (社会党が支持している) と右翼によるテロを同一視し、右翼テロを発端に平和的な市民デモを規制し、破防法の改正まで行おうとしていると指摘した上で、「世に、いわゆるマッチ・ポンプ方式といわれるものがあります。 右手のマッチで、公共料金を上げて、もって物価値上げに火をつけながら、左手のポンプでは、物価値上げを抑制するがごとき矛盾したゼスチュアを示すのをいうのでございましょう」 と喩え話をし、「この右翼テロ対策が、このマッチ・ポンプ方式に堕するのでなければ幸いであると思うものであります」 と皮肉を込めて締めくくっています。

 この松井議員の質問が的を射ているものかどうかはともかく、前後の文脈なども含めて発言を判断すると、それ以前から新聞や政治の ネタ を扱う週刊誌などの紙面で、あるいは学生デモのスローガンや政治結社の機関紙などで、政府のチグハグな経済対策を 「マッチ・ポンプ方式」 とネーミングして批判していたのであろうことが読み取れます。 ただしその当時の資料にそうした言葉がどのように使われているのか、元ネタ とも云うべき使用例、あるいは造語主が誰なのかは未確認です。

ミスターマッチポンプ? 黒い霧事件 田中彰治議員

 その後1966年になり、ミスターマッチポンプとも呼ばれる政治家が現れました。 いわゆる黒い霧事件の第一号 (旧虎ノ門公園の払い下げにまつわる恐喝事件) で特捜部に逮捕された自民党・田中彰治議員です。 国有地の払い下げなどに関連した土地取引で脅迫による利益を得ていた田中議員は、かねてから不可解な国会での活動などから、利権がらみのマッチポンプの噂が絶えず立っていた、 に描いたような悪徳政治家でした。

 手法としては、政権与党の政治家の地位を利用し、国有地の払い下げや大規模土地開発にまつわる事業について、粗探しや国会で追求するぞとの圧力を実施。 わずかでも手続きなどに間違いやその疑いがあると、国会で正義の味方となって不正を正すスタイルをとっていました。 しかしその裏では、当事者に対し追求をやめるのと引き換えに借金の返済猶予や金品を強く要求。 最終的にはこれら一連の恐喝事件の他、脱税その他で本人は元より、実弟、三男までが逮捕されるという顛末を迎え、政治不信を著しく高める結果となりました。

 またこれら一連の土地取引を巡る恐喝事件をモチーフとした小説 「金環蝕」(1966年/ 石川達三/ サンデー毎日) は1975年に映画化され大ヒット (田中議員をモデルとし作品に登場する政界のマッチポンプは神谷直吉)。 マッチポンプという言葉も10年を経て再び流行語となったのでした。

まさにマッチポンプ? 消防団員の不祥事などから言葉がひとり歩き

 その後、文字通りのマッチポンプ事件 (消防団員が自らが活躍するところを人に見せたい、あるいは日頃の消防操法訓練などに嫌気が差したなどの理由から、放火→自分で119番通報→出動して自分で消火) が続発。 こうした事件自体はそれ以前にもあったのでしょうが、ニュース・報道ネタとして 「まさにマッチポンプ」 として半ば面白おかしく扱われることもあり、この言葉が政治や経済から離れ、一般にも自作自演などの意味で使われるようになりました。

 なお ネット掲示板 などでも、自分で書き込みをした発言に対し、自分自身で賛同したり評価する レス をつけることを、自作自演の他、マッチポンプと呼ぶことがあります。 また ネトゲ や ネット上のコミュニティにおける、いわゆる 囲い行為 でのそれや、クチコミサイトに ネガキャン をしかけ、そのコメントを消しますとネガキャン対象に持ちかけて金品を要求する 逆ステマ なども、まさにマッチポンプそのものとも云えるでしょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2007年8月20日)
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