名わき役属性から主人公属性へ 「無気力・クール」
「無気力・クール」 とは、マンガ や アニメ、ゲーム や ライトノベル に登場する キャラクター、とりわけ 「主人公」 となるキャラの持つ代表的な特性、特徴、性格などを表わした言葉です。 「無気力クールタイプ」 とか、「無口無気力クール」 などと呼んだり、二枚目 や イケメン、キザ あるいは ルーズ が複合する場合もあります。 対義語は一般に 「熱血」 で、「熱血 ヒーロー」 や 「熱血痛快」「熱血根性」 などとも呼ばれます。
少年漫画、青年漫画の男性主人公として1990年代以降、非常によく見かけるタイプで、いわゆる 萌え を扱った美少女が多数登場するラブコメ作品 (ラブコメディー) にも頻出し、中でも美少女ゲームなどのパソコンゲームの主人公= プレイヤー が操作するキャラとしてお馴染みの 設定 と云えます。 あまり自分を強く主張せず、ある意味で他のキャラクターの傍観者としてふるまう 「無気力クール」 は、プレイヤーが操作する上で無色透明な扱いができて便利なのでしょう。
こうしたキャラ特性の類型化は昔から行われていましたし、中でもゲーム攻略の必要性から パソコン通信 など ネット のコミュニティで生み出された 萌え要素 とか 萌え属性 が確立し広まる中で様々なキャラの類型化とそのネーミングがされていますが、「無気力・クール」 はそのひとつとなります。
ちなみにこうしたキャラの口癖は、「やれやれ」「…ったく」「しょうがねえなぁ…」 と、ため息です。
ガッチャマンやゴレンジャーから、「青キャラ属性」 とも
「無気力」 とは気力がない、やる気や意欲がない、覇気や情熱がなく醒めていることです。 またクールとは英語の俗語表現で 「いかしてる」「かっこいい」 なんて意味ですが、日本では努力や根性、熱意を良いものとするという文化が根強く、「冷たい」 という意味でもある 「Cool」 は冷静沈着という意味も持ちながらも、どちらかというと 「冷酷なやつだ」「スカしたやつだ」「利己的で協調性がない」「シラケたやつだ」「腹に何か隠し持っている」 なんて ネガティブ な意味で使われることが多い言葉です。
本来こうした性格は、ひと癖ある変わり者の 「脇役」 に向いた設定で、いわゆる 「熱血ヒーロータイプ」 の主人公が全盛期の頃は、主人公と対立する嫌われ者のサブキャラの代表のような存在でした。 天真爛漫、無邪気で太陽のように輝く主人公と、月のような無気力クールキャラ (実はまるっきりの無気力ではなく、熱いものを内に秘めてはいる)。 この日頃何かと衝突する両者の和解が、物語全体のひとつのクライマックスになったりもします。
こうした性格のパターン分けは、変身ヒーローものや巨大ロボットもので特に顕著で、戦隊ものの 「科学忍者隊ガッチャマン」(1972年10月1日〜1974年9月29日/ フジテレビ) や 「秘密戦隊ゴレンジャー」(1975年4月5日〜1977年3月26日/ NETテレビ) の登場キャラクターの色分けに倣って、赤キャラ属性 (赤要素/ 熱血ヒーロー) に対し青キャラ属性 (青要素/ 無気力クール) などと呼ばれていました。
一概には云えませんが、こうしたキャラの姿は子供から成長し思春期となった 読者 や視聴者の 「不機嫌さ」「憂鬱さ」 と相性が良く、時として主人公である熱血ヒーローよりむしろ人気が出るパターンが少なくないものでしたが、さらに時代が 「努力や根性をダサいもの」 とするような風潮に傾いたり、「みんなが目指すべき絶対的正義や目標などないのだ」 との空気とも合うこともあり、一部の作品で 「むしろ青い方を主人公にしちゃえ」 との流れになったのでした。
またもう一つ大きな要因としては、おたく が好むマンガやゲーム、ライトノベルなどでは、いわゆる ボーイ・ミーツ・ガール (男の子が女の子に出会うことによって事件や物語が始まる) のストーリーが多いのですが、個性的で魅力的な美少女キャラ (それが最大の商売の ネタ でもある) に振り回されるだけの存在 (ただし最後には、出会った女の子が持ってきた トラブル なり事件なりを協力して解決する) に、「熱血」 は邪魔なのでしょう。
以降はある種の 「王道」「主人公属性の代表格」 としての立場を持つようになっていますが、語り部として 露出 が多く名目上主人公となっているだけで、実際はトラブルを引き連れてくる美少女なりが実質的な主人公だったりもするのが切ないです。
人づきあいの苦手なオタクが憧れる 「無気力クール」 な生き方
こうした 「無気力クール」 が持てはやされる創作物が受ける風潮は、明るく誰とでも協調することを苦手とする 「おたく」 とされる人たちの一部と相性がとても良いようです。 またある種の 中二病 や 邪気眼 の要素をもしばしば強く持ち親和性が極めて高いので、物語の作中設定をという枠を超えて、実生活の行動指針になったりもしますね。
例えば学校の教室で、リア充 のグループが キャッキャウフフ と盛り上がっているのを横目で見ながら机に突っ伏して寝た振りをしつつ、「今は無理だがいつか俺だって理解されて受け入れられる」「そのうち大ピンチが来て、俺の力を必要とする時がくるかも」 などと、夢想する邪気眼は多いでしょう。
人の輪に入らず (入れず) 孤独であることや、人を避けたり人に避けられることに正当性や後の救済を与えてくれるものでもあり、「無気力クール」 は都合が良いのですね。 ここらは、何の努力もしていない平凡な主人公が、ある日突然に異世界へ飛ばされるなど運命の大事件によって力に目覚め、世界を救う勇者になって異性に惚れられまくるといったような、ご都合主義物語の設定や主人公と一緒で、自分が変わることなく周りが変わって逆転ができる居心地の良い 妄想 のゆりかごとなりうるからなんでしょうね。
まぁ 筆者 の経験では、その機会は来ないんですが… (´;ω;`)。
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