行ってることが常に矛盾…何も信じられなくなる 「ダブルバインド」
「ダブルバインド」(double bind) とは、相反する矛盾したメッセージを同時に発することで、相手に強い心理的負担をかけたり、メッセージを受けた側が相手の望む返答や行動ができないことで悩んだり混乱したり、動けなくなってしまうことです。 アメリカの精神科医、グレゴリー・ベイトソンさんによって提唱された 概念 で、日本語では 「二重拘束」 と訳されます。
代表的な例として、先生や上司などから 「分からないことがあればすぐに質問して」 と指示され、その通りに質問をしたら 「そんなこともわからないのか、自分で考えろ」 と叱責されるとか、恋人から 「もう二度と会わない」 と拒絶されながらすぐに会いに来られるといった 言行が一致しない 態度などがあります。 こうした言動を何度も突き付けられると、何をどう行動しても選択しても相手の指示や言葉に反してしまうし、相手が発するメッセージを信頼することも出来なくなってしまい、常に恐怖や不安、緊張を感じ続け、何もできなくなってしまいます。
これがたいして親しくない相手からのものだったり、無視 をしても許される対等か格下の相手であれば、不快ではあっても最終的には 「こんな奴の話など聞くだけ無駄だ」 と切り捨てられます。 しかし相手が家族や親しい友人、学校の先生やら職場の上司やら無視することが難しい場合は、何度も繰り返される理不尽な言動に板挟みになり、精神も疲弊し無気力になっていきます。 とくに精神的に未熟な子供が親や先生からこうした扱いを何度も受けた場合は、どのように行動すれば良いのか分からなくなり、何もしないことが最適だと思い込まされてしまいます。 精神を傷つけられたり トラウマ を植え付けられたり、場合によっては深刻な メンヘラ を招く結果となることもあります。
このあたりは、子供を持つ親や教師向けの教育・しつけ論とか、部下を持つ管理職向けのマネジメント論の中で度々触れられることもあり、一般での 認知 も比較的高まっています。 しかしそうした立場にない人、人との接し方に無頓着な人の間ではさほど知られても意識されてもおらず、そうと気付かないまま行っているケースも少なくありません。
悪意によるダブルバインドとそうでないダブルバインド
こうした言動が悪意による意図的なものなら、まだマシかも知れません。 ダブルバインドの 痛み を与えてくる相手が、自分に悪意を向けてくる存在だと 割り切る ことだって可能だからです。 より深刻なのは、ダブルバインドを与えてくる人が無意識にそれを行っている場合です。 世の中には知的な能力に制限があったり、精神的に何らかの困難を抱えていて、自分の発言や考え方が無自覚に変わり続けたり、その時の感情や自分の お気持ち だけでものを云うような人が結構います。 また無意識に相手の全てを否定し、不機嫌な態度で人をコントロールしようとする人もいます (察してちゃん)。
こうした人は自分が矛盾に満ちた言動をしてもそれを自覚しておらず、相手が自分の行ったダブルバインドに疲弊したり混乱するのを見て、さらに怒りや苛立ちを増幅させます。 どうして自分の話が理解できないのか、なぜ気持ちを分かってくれないのかと悲しみ、強い被害者意識を覚えて傷つきさえします。 こうなるとダブルバインドを受けた相手も無下に無視もできず、お互いに傷つけあってどんどん 不幸 のスパイラルに落ち込んでいきます。
ダブルバインドを受ける側、行う側、どちらの場合でも、自分の言動に問題はないのかを、一度きちんと検証してみることも有意義かもしれません。 例えばいつも口論となる相手との会話を録音して残して検証したり、ネット で論争になったらそのやり取りを一人で冷静にじっくり振り返ってみるなどは、かなり有効な方法のひとつです。 会話や レス のやり取りをしていると、相手との話の流れの中で感情が大きく揺れ動き、売り言葉に買い言葉で思ってもいないことをつい口走ったり、言い負かされそうになって 詭弁 が出るなどして、後で振り返ると辻褄の合わないことを口にしていたなんてことはよくあることです。
文章などを書く場合は推敲することができますが、会話や リアルタイム でのやり取りでは 脊髄反射 的な言葉がつい出てくることがあります。 それを自覚するだけでも、相手を追い詰めたり自分が悲しくなるような不毛な言葉のやりとりをいくらかは減らすことができるようになるかも知れません。 そして後でちゃんと確認してみても、やっぱり相手の云ってることがおかしいと思えるならば、距離を置くのが大切です。 「相手がおかしいのだ」 と明確に思えるだけでも精神的な負担は大きく軽減しますし、自分に問題があって改めることが難しいならば、適切な医療機関にかかるきっかけにもできるでしょう。
人の心は身体同様に傷つけられると損傷を負い壊されてしまうものです。 自己修復できないほどの壊され方をすると治すのも大変ですし、その後の人生に暗い影を落としかねません。 悪意によるものであれ無自覚なものであれ、ダブルバインドで追い詰めてくるような相手とは距離を置くようにしましょう。 また自分が矛盾したメッセージを発して相手に ダメージ を与えてないかに注意することは、相手のためばかりでなく自分の精神衛生的にもとても重要なことです。
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