同人用語の基礎知識

メンヘラ

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罵倒語、レッテルとして使われる 「メンヘラ」

 「メンヘラ」 とは、精神疾病、精神障害や、そうしたものを持っている 雰囲気 のある言動を行う人物、あるいは ネット 上の 書き込み などに対して使われる差別的・罵倒的なレッテルのことです。 いわゆる 2ちゃんねる用語 のひとつとなります。

2ちゃんねるの 「メンタルヘルス@2ch掲示板」
2ちゃんねるの 「メンタルヘルス@2ch掲示板」

 言葉としての直接の 元ネタ、流行した発端は、掲示板 2ちゃんねる の心と身体 カテゴリ に属する専門板、「メンタルヘルス@2ch掲示板」(メンヘル板) の名称に由来します。

 このメンタルヘルス板の利用者や、そこで語られる話題 (心の健康) に関係があると思われる人たちを、「メンヘル板の利用者」、すなわち 「メンヘラー」(接尾辞 -er 形 をつけた、○○する人、○○を持つ人、出身者の意) と呼ぶように。 その後末尾の長音符 (ー) が省略され、現在はメンヘラが一般的でしょう。

 なお対象となる人物が女性の場合、とくにメンヘラ女と呼ぶことがあります。 またあまり一般的ではありませんが、メンヘル、もしくはメンタルと呼ぶ場合もあります。 さらにそうした状態に至ることを 「メンタルがヘラる」「ヘラった」 などと呼ぶこともあります。

メンタルヘルス板 の名称からメンヘラとの呼び名が

 メンタルヘルス板自体は、深刻な精神疾患や精神障害の話題を医学的な見地から生真面目に扱う スレッド などが利用される一方、単なる目立ちたがり屋の変人、構ってちゃん、電波 な人などの 妄想 なども入り乱れています。

 精神科医や病院、治療法についての情報交換も盛んですが、しばしばある種の名物男、女と呼ばれるような コテハン (固定した ハンドル を持っている利用者) も現れ、その特異な言動や、犯罪行為を行って新聞沙汰となったケースなどから、他の掲示板などで話題になることもありました。

 ネットの一部では、差別的な言葉をわざと使い、不謹慎な言動を面白がってことさらに行うコミュニティもあります。 また専門医による治療を必要とする統合失調症や双極性障害 (躁鬱病) をはじめ、軽微な欝や神経症、不安障害、パニック障害、強迫性障害や日常生活のストレス、悩みなど、心の健康が社会的に重大な関心事となる時代となっていることもあり、使い勝手のよい言葉として伝播。 言葉としての是非はともかく、2ちゃんねるを飛び越え、現在ではネット上の様々な場で使われる言葉ともなっています。

1998年〜1999年、メンヘラ系ネットアイドル 「南条あや」 さんが人気に

現役女子高生あやちゃんのお部屋
現役女子高生あやちゃんのお部屋 (1998年)

 中でもメンヘルの名称を一般にも強く訴求したのは、1998年5月28日〜1999年3月17日までの10ヶ月ほどにわたり、ウェブサイト 「町田あかねのおクスリ研究所」(薬事ライターの町田あかね氏が開設) に日記を公開していた現役女子高生 ネットアイドル、南条あやさん (ハンドル) の存在があります。

 薬を中心とした医療の ネタ がメインのこのサイトにおいて、精神病や向精神薬に関する体験談を募集したところ、女子高生のあやさんがこれに応募。 明るく知識も豊富で興味深く、また筆も立つ文章だったことから、その後日記を継続してサイト内企画として公開することに。

 過去のリストカットを始めとする自傷行為の話や悩みの話、通院や入退院の記録、自作の詩などが、同様の悩みを持つ若い人達の共感を得て大きな話題に。 時期的にネットアイドル (ネトア) が注目を集めていた頃だったこともあり、その後この日記は独立し、公式サイト 「南条あやの保護室」 も作られ、また公開された セーラー服 を着用した愛らしい姿もあって、大きな興味を惹くものとなっていました。

卒業式まで死にません 女子高生南条あやの日記
卒業式まで死にません
女子高生南条あやの日記

 その後この女性はメンヘラ系ネットアイドルと呼ばれて人気を得、ファンクラブが結成されたり 商業 雑誌への記事 投稿 が行われたり、テレビ出演なども行われました。 しかし1999年3月30日に、好きだった カラオケ に一人ででかけ、カラオケボックスの中で大量の向精神薬を服用。 救急車で病院に緊急搬送されたものの、その後亡くなってしまいました。

 当初は大量の向精神薬を服用したことから OD (オーバードース) による自殺だとも云われましたが、その後、死亡するほどの量ではなかったことが司法解剖などにより判明。 薬マニアでもあった彼女が致死量を知らないはずがなく、過去のストレスや自傷行為などにより心臓に障害が生じており、それが死に結びついた事故だったとされています (推定自殺)。 まだ18歳、高校を卒業して20日後の出来事でした。

 ネットでは ファン がこれを悼み、葬儀に多くの人が訪れた他、葬儀に参加できなかったファンらによる 「ネット葬」 なども行われました。 また彼女の日記をまとめた書籍、「卒業式まで死にません 女子高生南条あやの日記」(新潮社) は、その後も悩みや心に傷を持つ人達の間で読み継がれ (内容には賛否両論あります)、大きな影響を与え続けています。

差別的なニュアンスがあり、忌避される傾向があるメンヘラ

 言葉としては差別的・侮蔑的・嘲笑的な ニュアンス があり、ネット上で使う場合も罵倒目的である場合が多いので、当然ながら 「メンヘラ」 という言葉自体に強い嫌悪感、拒否感を覚える人は多いようです。 他の差別的な言葉もそうですが、他人を傷つけているつもりで使っている自分自身が傷つく、良くない言葉の代表的なものの1つですし、あまりお行儀のよい言葉でもありません。 使わないで済むなら使わないに越したことはないでしょう。

 しかしその一方で、深刻な精神疾患に 限定 せず、「ちょっと性格的に問題がある」 程度の人にまで罵倒目的で広く使われる言葉でもあるので、「精神疾病」(精神病) や 「精神障害」 などの固い言葉に比べたら、当事者にとってもまだ救いがある、相談事として使う場合に深刻にならず気軽に使えて便利だと、肯定的に考える人も中にはいるようです。

 またメンヘラとされる人物から日常生活を脅かされ、さらには身の危険までも生じる可能性のある迷惑行為を受けている人の相談などでは、他の表現ではきつすぎて話が大きくなりすぎたり、かえって書き込みによって差別を助長しかねず、困っている人も躊躇し参加しづらいとの状況もあります。

 人に相談することによってストレスが軽減するケースもありますし、疾病の場合でも、お医者さんに早く相談したことにより、症状が悪化するのを遅らせたり防いだり、あるいは治す可能性が高まることもあるでしょう。 また気軽に使える言葉の存在によって相談行為の敷居が下がり、それによって迷惑行為を止める方法が見つかる場合もあります。

 似たような意味で使われる言葉にはこの他、例えば プリントアウト案件 とか まさかとは思いますが などもあり、いずれにせよ罵倒目的で安易に他人に貼るレッテルとして使うのは慎むべきですが、言葉を狩れば差別や事象が消えてなくなるわけでもありませんし、それによって救われる人が少しでもいるのなら、この言葉や関連する言葉にもきちんとした意味があるということにもなるのでしょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2004年12月19日)
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