同人用語の基礎知識

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「販売」 ではなく 「頒布」、独特の言い回し

 「頒布」(はんぷ) とは、同人 の世界においては、有償・無償問わず、不特定多数 (ただし イベント会場 という限られた空間で、限定的 に) 物品を配る (譲り渡す) ことです。 対義語は 「展示」(譲渡せず見てもらうだけ) となります。

 似た言葉に 「配布」 がありますが、厳密に云えば配布は決まった人に配ることを指し、不特定多数 (誰にでも) に配る頒布とは、異なった意味の言葉になります。 とはいえ、「駅前で通行人に チラシ を配布する」 …などといった使い方もしますし、日常生活の中では、ほとんど同じような意味で使われる言葉といって良いでしょう。

 なお 「販売」 ではないのは、販売が商売や営利目的で使われる言葉なので、同好の士と非営利で 同人誌 をやり取りする 同人イベント などでは、言葉としてふさわしくないとの認識があります。 また同人イベントでは無料で配られる本もありますから、販売という言葉でくくることが難しいですし、コミケ をはじめ多くの同人イベントが、「本を作る人とそれを手にして読む人、どちらもが同じ立場で集う参加者」 との理念を持ち、「一方的におもてなしされるだけの 「客」 などいない」 との考えや立場を持つので、商売で使う 「販売」 はなじまないのでしょう。

 頒布は同人の世界では頻繁に目にするものの、日常生活ではあまり使わない言葉です。 比較的よく見るのは、あまり営利を目的としていない農産物やお酒などの頒布会、神社や寺のお守りや御朱印帳などの頒布でしょうか。 こうしたこともあり、頒布はある種の 同人用語 として認識されることも多い言葉ですが、法律の条文などでは無償の不特定多数もしくは多数への譲渡を指して使う言葉ともなっていますね。

 有償 (代金としてのお金) を対価として得て譲渡する場合は、それが実費であれ営利活動であれ非営利活動であれ、法的には 「販売」 となります (ただし原価に対してかけ離れた安価の場合は、全部もしくは一部が贈与 (プレゼント) の扱いとなります)。 また販売を目的としない自費出版 (非売品書籍) として、私家版と呼ばれる形態もあります (戦前 に見られたもので、主に検閲や発禁、表現規制を逃れるためのもの)。

イベントに集うのは全て参加者、「客」 などいないという考え方

 同人の イベント に参加するため会場にやってくる人の参加方法は、大きく分けて3つか4つに分類できます。 まずイベントを 主催 している関係者やスタッフとしての スタッフ参加、同人誌を作り 同人サークル として参加する サークル参加、そして本を買うために参加する 一般参加 です (この他にも、企業の ブース があれば企業参加、コスプレ ができるなら コスプレ参加 などがあります)。

 理念上はこれらの人たちはひとつの目的、あるいは目標のために、平等な立場でイベントが成功するよう協力し合い、お互いに助け合いながら参加することになっています。 どちらが上とか下とかはなく、イベントのルールに則ってひとつのイベントを 「一緒に作ってゆく存在」 という訳です。

同人の世界が大きくなるにつれ、理想と現実のギャップも…

 とはいえ実際は、こうした理念を知らずにお客様気分で参加する人もいますし (ちゃんとイベントの趣旨を知ってから参加しましょう)、一方の同人サークルの側でも、オフセット印刷 により大量の 部数 を持ち込み、実費とかけ離れた 「値段」 をつけて利益を上げ、お金儲けのために参加している人もいます。 法的には代金を受け取ったら 「販売」 ですし、またそもそも 「本を売りに行く」「買いにいく」 なども、多くの参加者が無意識に使っている表現でしょう。 同人イベントも同人誌即売会と呼ぶ方が、同人誌頒布会と呼ぶケースより多いでしょう。

 こうした傾向は同人の世界が大きくなり、関わる人と動くお金が増えるにつれ大きくなっています。 その結果、人によっては 「頒布などといっているが、実態は販売だ」「頒布という言い回しは 二次創作 による 著作権 の問題などから目をそらすためのキレイ事」「利益をあげ業として販売しておきながら、「客対応」 や 「納税」 をサボるための方便だ」 などと、否定的な言い方をするケースもあります。

 代金が発生しない 無料本 や、利益などでようもない安価で少部数の コピー誌 ならともかく、頒布数商業出版 なみに多かったり、書店委託 までやるなど、「商売」「ビジネス」 だと見られてもしかたない規模となっている 大手サークル などもあります。 その境界線は、とても難しくなっているのもひとつの現実です。

 また言葉として分かりやすいので、例えば スペース で頒布する人を 売り子、郵便などで本のやりとりを行うことを 通信販売 などと同人の世界でも使っていますし、それに引っ張られる形で、一般的に同人の関係者が抱く常識や理念が、建前化、形骸化している部分もあるのでしょう。

理念や理想を現実にするかどうかは、参加者次第

 「頒布」 という言葉と 「平等にみんなで参加してイベントを楽しむ」 という理念。 これが単なるキレイ事、言葉遊びのごまかしなのか、あるいはそうではなく理念として実を結ぶのか。 イベントに集まる参加者一人ひとりのこれからの心構えと姿勢、努力によって、きっと決まるのでしょうね。

イベントで頒布するためにはサークル参加が必要です

 ちなみに同人イベントおいて同人誌やグッズ類などを頒布、もしくは配布できるのは、原則として同人サークルとしてイベント側に事前申し込み・登録した人だけとなります。 一般参加で会場に訪れていながら、勝手に自分の同人誌やグッズを頒布したり配布することはできません。

 まぁたまたまそのイベントにはサークル参加してないだけで、別のイベント用に作った同人誌を知り合いや顔見知りにちょっと配りたい…なんてケースは、誰しも経験があることなのかもしれませんが、参加者の多くがそれを行ってしまっては、イベントの存続ができなくなってしまいます。 参加ルールに明文化して禁止しているイベントもありますし、どうしても知り合いに配りたい、少しだけ有償で譲りたいといった場合は、イベントが終了した後、廻りにきちんと配慮した上で、会場の外で行うなどの対応が必要でしょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2000年6月20日)
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