同人用語の基礎知識

ネットアイドル/ ネトア

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ネットの世界で人気の普通の女の子 「ネットアイドル」

 「ネットアイドル」 とは、ネット の世界で自主的にアイドル活動をしている人、具体的には自分で開設したウェブサイト (ホームページ) や ブログ などに自分のスナップ写真や日記、自作の イラスト や詩などを、あくまで自分のプライベート・パーソナル部分を核として 投稿・公開している人のことです。 別の言い方をすると、自分自身を エンタメコンテンツ として公開している人だと考えても良いでしょう。 略して 「ネトア」 と呼ぶこともあります。

 活動内容は様々で、ネットアイドルであると同時に コスプレイヤー として活動しているケースや、レースクイーンやコンパニオンとして活動している人、同人活動 などを行っているケースもあります。 いずれの活動に重点が置かれているかによって細かい分類もできそうですが、コスプレイヤーによっては 「わたしはネットアイドルではありません」 と明確に主張する人も結構いますから、厳密な定義もない中、結局は 「自称しているかどうか」 がネットアイドルかそうでないかの分岐点のような感じもします。

 2000年前後には、ネトア人気に注目したネットアイドル専門のサイトやサービスも次々に登場し、代表的なものとして登録型の検索サイトやランキングサイトといったネトアサイト支援系サービスがありますが、こうしたサイトへの自主的な登録を持ってネトア宣言とみなす場合もあります。 また当時ネットの世界では珍しかった 「顔出し」 を行っていたかどうかも、大きなポイントかもしれません (顔を出さないネトアもいましたが)。

 また純粋なネットアイドルではありませんが、萌えキャライラスト によるネットアイドルも存在します。 これらは 「バーチャル ネットアイドル」 と呼ばれます。

ネットアイドルの原型と、ネット普及による人気の高まり

 こうした存在は パソコン通信 の時代にその原型を見ることができます。 多くの場合、本人がネットアイドルだと主張する形ではなく、大勢の人が集まるフォーラムやシグ (特定の ジャンル に沿って 掲示板チャット といったサービスが集まって一元管理されたもので、主催者 が運営や管理を行っていた) といったパソ通ホスト局の中のコミュニケーションの場に参加していた人気者 (若い女性が多い) に ファン がつき、勝手連的に FC (ファンクラブ) などが作られて、そうしたファンの間から 「〇〇のアイドル」 と呼ばれて本人も否定しないような状況が、ある意味でネットアイドルの嚆矢と云えるでしょう。

 当時のパソ通は利用するのに比較的高いハードルが必要で (少なくとも高額のパソコンや月々の通信費がかかる)、また不特定多数が閲覧できる状態の場に個人的な写真を気軽に投稿するなども技術的・システム的にほとんど不可能な状態でしたが、噂が噂を呼び、フォーラム外にまで名前が知られる人や、その後パソコンの話題などを取り扱う雑誌に寄稿したり連載記事を持つなど、有名人のような人も現れていました。

 こうした人が現れると、ファンの側は 「他にもネットアイドルはいないか」 と探しますし、それ以外の利用者の間からも 「うちのフォーラムにもネットアイドルを作ろう」 といった動きも起こります。 ネットアイドルとして扱われやすい若い女性の側にも 「わたしもネットアイドルになって人気者になれるかも」 といった意識だって芽生えるでしょう。

 パソコン通信への敷居が下がったり、ある種の社会現象にまでなった Microsoft Windows 95 の発売とパソコンブーム、その後のホームページブーム、IT ブーム、そして気軽に写真撮影や投稿ができる携帯電話の普及と登場、その携帯を使って気軽に更新できるブログやプロフサイトと呼ばれる プロフィール を紹介するネットサービスのブームなどによって、数限りないネットアイドルが登場することになりました。

ネットアイドル第一号は?

 ネットアイドル第一号は誰なのかについては諸説ありまとまっていないでしょう。 一般的にネットアイドルという言葉を爆発的に広めたケースとして、1998年に活動を開始し既存メディアなどでも活躍した MICHIKO さんが知られています。 一方、それ以前や同じ時期にも、1996年にウェブサイト 「17才のお部屋」 で人気を集めた tkaori さん、1997年に 「リエのヘヤ」 を開設したコガリエさん、1999年より 「エリス・イン・ワンダーランド」 で活動したエリス (田中エリス) さんなど、その後メディアで活躍したような有名な人だけでもかなりの人数がいます。

 ただし 「ネット〇〇」 といった云いまわしは簡単に思いつきますし、実際に ネット弁慶ネットおかま (ネカマ)・ネット番長といった言葉はネットが登場してすぐに使われるようになっています。 ネットアイドルはこうした言葉の延長線上にあると云え、「ネットアイドルの定義」 によって簡単に前提が変わってしまいますので、誰が第一号かという問いは無意味なのかもしれません。

ネットアイドル活動の様々な形

「ネットアイドルをさがせ!」
「ネットアイドルをさがせ!」
ネットアイドルが盛り上がる中、検索サイ
トや交流・ランキングサイトも次々に登場
「Rabbity」
「Rabbity」

 前述した通りネットアイドルの活動内容は人によって様々ですが、おおよそ3つくらいに分けられるかもしれません。 まず1つ目は、自他ともに認めるネットアイドルで、その活動がメインとなっている人です。 2つ目は、前述したコスプレイヤーや同人作家、イラストレーターといった別の活動もしつつ、ネットアイドルもやっているという人です。

 最後の3つ目は、ネットアイドルと呼べるかどうか疑問なラインで、ネトアを自称しつつも活動らしい活動はあまりせず、別の目的がある人です。 その目的は、友人や異性との出会いなり アフィリエイト による小遣い稼ぎなりといったものとなります (場合によっては他人の写真を勝手に流用しているケースすらあります)。

 こうした出会いやアフィリエイト目的の自称は、コスプレイヤーを自称する人にも少なくないのですが、ネットアイドルがブームとなる中、「若い女性が顔出しして自称したら即ネットアイドル扱い」 といった時期もあったので、「ネットアイドルのフリをして出会いを求めてる、金儲けしようとしている」 と批判的に見るのは、本人にそのつもりがない場合はちょっと気の毒な感じもします。 一部のコスプレイヤーなどがネットアイドルと呼ばれることをとても嫌う原因の一つでもあります。

 なおネットアイドルを本業 (ビジネス) としてやっているか、趣味でやっているかとの区別もできそうですが、ネットアイドルブームの頃は個人がネットでマネタイズ (お金儲け) する方法がほとんどなく、本業としてやっている人などごくごく一部の人だけ、それも短期間での話でしょう。 人気ネットアイドルとなった人の中には、商業 の世界で活躍する人、著作物を出す人などもいましたが、ネットアイドル全体から見たら例外中の例外のような存在でした。

 なおネットアイドルブーム自体は、筆者 の感覚では1998年頃から徐々に盛り上がり、多少の浮き沈みをしつつも2002年、ついで2004年頃に大きなピークがあったような感じがします。 それぞれの発端は、その時期のネトアを代表するような人物が大手メディアでクローズアップされて話題となったり、関連する イベント が開催されたなどですが、あまり根拠はありません。 筆者は当時、ネットアイドル関連の webサービスの末端に多少関わっていてそれなりの肌感覚ではあるのですが、いうほど大きな市場でも大きなムーブメントでもなかったため、別の視点からは印象が一変する可能性が高いかとも思います。

若者向け雑誌や個人情報誌のペーパーアイドルとコスプレ

 ネットアイドルはネットで活動するアイドルですが、もっと根本的な部分、「芸能界などに籍を置かない 一般人 が、アイドルのような活動を自主的に行う」 という行動様式で見ると、そのルーツはもっとさかのぼります。 一般人が偶然テレビなどに出て注目を集めるといった特殊なケースは別として、パソ通以前にも、一般人が一般人として不特定多数に広く情報発信する場が少ないながらもいくつかあったのですね。

 もっとも広く利用されたのは若者向け雑誌の投稿欄で、「ガールコン」「ボーイコン」(読者が自分の写真を投稿してコンテスト形式で人気を競う企画) とか 「恋人募集」 などの投稿欄は人気がありました。 一部の若者向け雑誌や趣味・音楽・ファッション系雑誌では、これらのコーナーに掲載された読者に手紙などが殺到すると、その後誌面にコーナーを持たせたり雑誌の表紙の一部に取り上げるなど、読者代表のアイドルのような扱いを行っていました。

 いわゆる読者モデル (読モ) の走りのような存在となりますが、素人参加型のテレビ番組などから雑誌編集に出演者のオファーが来ることもあり (とくに音楽バンド、ダンサー、ヤンキーやギャル、おたく など、ユニークな特徴を持つ若者が番組構成上必要なケースが多かった)、その後番組内で人気が上がりそのまま芸能界デビューする人などもいました。 当時はオーディションや街頭スカウトに加え、こうしたルートからの芸能界入りもあり、逆に街頭や雑誌の人気者が芸能界デビューといった話題性を持たせるため、事務所所属のタレントを一般人の枠で雑誌に先に登場させるようなプロモーションもありました。

 パソコン通信が広まる1995年に前後して、読者投稿をメインコンテンツとする、いわゆる個人情報誌も相次いで登場します。 もっとも有名なのは1995年11月に創刊された 「じゃマール」 ですが、核となる個人間の物品売買・交換のための情報の他、顔写真やプロフィールを記載した恋人や友達、趣味仲間を集う 投稿 も盛り上がり、一部はアイドル的な人気を得ることに。 こうした人は当時、「ペーパーアイドル」 などと呼ばれることもありました。 東京や大阪といった大都市圏を中心にペーパーアイドルには様々な人たちがいましたが、音楽やバンド活動、劇団をやっている人も少なくなく、それらの活動拠点を中心にペーパーアイドル同士の交流や、ファン同士の横のつながりなども生まれています。

 雑誌などの媒体を伴わない形でアイドル的存在が生まれることもあります。 同人に近いところで云えば、コミケ (コミックマーケット) が1975年12月に開催され、しばらくして コスプレ も注目を集めるようになります。 コスプレとアイドルとは似て非なるものですが、「おたくのアイドル」「コミケのアイドル」 といった括りで注目を集めることはありました。

 また1980年代はじめ頃からは、東京原宿の代々木公園横の歩行者天国で奇抜なファッションや派手な踊りで注目を集めた竹の子族といったムーブメントもありました。 コスプレイヤーや竹の子族として活動する人たちの中には、自分の写真や写真をまとめたアルバムをブロマイドや写真集的に販売してコスチューム代を捻出したり、広い意味でのアイドル活動といってよい動きをしている人もいました。 当然ながら熱心なファンを大勢持つ人や、芸能人ばりに親衛隊がいるような人もいましたし、なかでも飛びぬけた存在感を持つ人は、既存メディアの側でも好意的に取り上げ芸能界へつながるケースがあったものです。

ライブアイドルや地下アイドル、そしてニコ生主・YouTuber へ

 こうした動きは、後に登場したライブアイドルや地下アイドル、ローカルアイドルといった個人もしくはごく小規模な芸能事務所に所属したマイナーなアイドル活動と区別がつけにくいものです。 芸能事務所に所属しているかどうかというのは大きな区分になりますが、そもそもこのクラスのアイドルを中心に扱う芸能事務所は規模も小さく、本業が他にあって片手間でマネージメントしている企業や、なかには管理もほとんど本人任せのような形ばかりの有名無実なものもあります。

 逆に芸能事務所ではないけれど、管理やプロモーションなどで中小芸能事務所顔負けの規模と レベル で活動する個人的なプロジェクトや メイド喫茶 の経営者、貸しスタジオやモデル事務所、イベントの主催団体などもあります。 とりわけアイドルブームと重なる形でアニメなどの舞台となった場所が 聖地 として注目を集めるようになったり、それに関連した地域活性化のための 萌えおこし が注目を集めると、芸能界やイベントなどとは無関係の企業や自治体などの公的機関までもアイドル活動に携わるようになり、その規模は年々拡大することとなっています。

 2006年12月に実験用のプレオープンでサービスが開始された 動画サイト 「ニコニコ動画」、および翌年12月のニコニコ生放送 (ニコ生) 開始による、素人配信者のいわゆるニコ生主 (生主) や、同じく動画サイトの 「YouTube」 で2011年4月にパートナープログラムが個人にも開放されるようになって激増した YouTuber (ユーチューバー) などにもつながっていくのでしょうが、時代時代の場や道具を使って自分をアピールするという活動の基本は同じです。

 ネットアイドルの定義にも関係しますが、ネットアイドルブーム当時、こうした人たちの目の前にあったのがたまたまパソコンやパソ通や初期の インターネット やカメラ付きの携帯端末であり、それを利用したからネットアイドルと呼ばれ、自らもそう名乗ったのだと思います。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年2月11日)
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