同人用語の基礎知識

博物館/ 珍宝館

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コレクター、マニアが最後の最後に目指すもの…「博物館」

 「博物館」(ミュージアム) とは、物品の収集を 趣味 とする人たち、コレクターや おたく が、最終的に人生の目的、目標とする夢の施設、夢の城のことです。 ただし実現するケースは極めて少なく、またしばしば 「無駄な買い物をする自分を自己正当化するための言い訳、手段のための目標」「自虐表現 (いつかは博物館でも作るさ…的な)」 ともなっています。

 子供の頃からコツコツと趣味のものを買い集めるコレクションは、とても楽しいものです。 最初は切手が好きだ、鉄道模型が好きだ…なんて純粋な理由で、好きな切手、模型を買い集めることから始まりますが、そのうち 「集めること、それ自体が目的化」 し、別に好きでも欲しくもないけど、ここまで揃ったらシリーズは全部集めないと気が済まない…なんて状況になり、加速度的に物品が集まるようになります。 いわゆる 「」 と呼ばれる状態です。

 コレクターとは、その魅力にどっぷりと取り付かれた人となりますが、マニア買い保護お迎え と称して同じものをいくつも手に入れたり、非売品の店頭ポップなどを手に入れたり、集めた物品のリストをエクセルでまとめるようになると、興味のない人、一般人 にとっては 「ごみを集めている」「ごみ屋敷だ」「頭がおかしい」「変質狂なんじゃないか」 とも思われる過度の収集状態となります。

ある年代になって、はたと気がつく…「これ、俺が死んだ後どうなるの?」

 若いうち、独身時代ならともかく、所帯を持ち30歳、40歳、さらに50歳60歳を超えてくると、家族の目、世間体、そして何より 「自分が年老いて死んだ後のコレクションの行方」 が、とても気になってきます。 死後に近親者に見られたくないものがある場合、趣味仲間と 死後の盟約 を結んで処分を頼む場合もありますが、貴重なコレクションなどは、所有者たる自分の一存でこの世から消してしまっていいのかという葛藤もあります。

 息子や娘、あるいは後継者と目する趣味仲間が後を引き継いでくれれば安心ですが、そう上手く事が運ばないのも人生。 人によっては、「息子に引き継いで欲しいが、俺が死んだ後に興味がなくて捨てるのなら、それは仕方ない」「だが生きている間だけは見逃してくれ、やめられないんだ…」 などと、切実な思いで集めているマニアさんもいます。

 そんな彼らにとって、「博物館」「○○ミュージアム」 の建設は、「自慢のコレクションを見せびらかすことができる」「博物館がある限り、コレクションを保存しておくことができる」 という、一挙両得の存在です。 またその博物館の 「初代館長」 になる喜び。 コレクター気質のある人は、博物館とか図書館とか、物品情報蓄積系のモニュメントが大好きですし、「単なる品物の集積」 が、「博物館」 という 「ひとつの大きな作品」 に成長することもあり、もうこれ以上ないくらいの充実感、達成感を与えてくれます。

 さらに 「いずれは博物館」 という目標を自分の中で掲げた瞬間から、グッズや アイテム を買うことに対して、いちいち理由を考えたり、後ろめたさを覚えなくて済むようになります。 気絶 するにせよ IYH するにせよ 心の中の財務大臣 を更迭するにせよ、最終的には 「博物館を充実させるためにはこれが必要」 で全てOK、リミッター解除完了 です。

一定の評価を得たジャンルならともかく…

 この種の 「コレクター気質」 の存在は、何もごく最近の話ではありません。 そもそも世界中の立派な博物館も、今でこそ民主的な 運営 を行い誰でも入館できる観光の目玉のようになっていますが、その成り立ちは時の権力者、実力者のコレクション自慢から発展したものが多くなっています。 自宅の城や屋敷に訪れた客を驚かせる 「驚異の部屋」(Wunderkammer/ 不思議の部屋などとも) というコレクションルームを作り、珍品を集めていた貴族や富豪は中世の時代には一般的でした。

 また権力者まで行かずとも、市井の民間人にも好事家、珍品コレクターは数多く存在し、日本にも 「オタグッズ」 とはやや カテゴリ が違うものの、妙なもの、ちょっとアダルティな物品を集めた 「珍宝館」「秘宝館」「珍品館」 なんてのが、そこら中にあります。 …それらの初代館長の家族はたまったもんじゃなかったと思いますが

 ただしそこで集められる物品が、骨董品や 絵画、焼き物、スポーツカーやレコード、映画資料、郷土歴史資料などなら、まぁある程度の評価もされますが (お金持ちの道楽から生まれた ○○コレクション、と称されるようなものには、重要なものも数多い)、いわゆる 「おたく」 と称される人たちの場合、集めるものがまた独特ですから、悩みも大きいものです。

 ミニカーやレトロ玩具、鉄道模型 (情景展示も含む) あたりは、近年評価も高まり、またコレクターがある程度の年代になってからの立ち上げなら、「子供好きなおじいちゃんの趣味」 で微笑ましくも見てもらえるでしょう。 またそういう人たちの多くが、地方の名士や元公務員だったりして、あらゆる面で 「余裕」 のあるのもポイントでしょうか。

 しかしそれがアイドルグッズや美少女フィギュアだったりした場合は…いろんな面で苦労も絶えなさそうです。 しかもいったんこの手の博物館を運営すると、似た境遇のコレクターが 「あんたになら、俺のコレクションを託せる」 とばかりに寄贈してきてコレクションの集まり方が桁違いになるので、運営も楽しい一方、かなりプレッシャーを感じることになるかも知れません。

「プチ博物館」…? 定年後に趣味の店を作るケースも

寂れたシャッター商店街も活用次第では…?
寂れたシャッター商店街も
活用次第では…?

 「博物館」 のような大仰なものではないけど、自分の趣味の品はまとめて 展示 したい、可能ならば仲間と交流したりその輪を広げたり、若い世代にその魅力を伝えたい…。 そんな熟年コレクターの間で、趣味の店を作るケースも増えています。

 良くある例では、客がほとんどこないような辺鄙な場所、住宅地の中などで、ひっそりと営む模型店などがおなじみです。 ショーケースには、店主が作ったであろう美麗な模型、それも貴重なものが並んでいます。 コレクションの品そのものを売り物にするケースもあります。

 それまで何十年もやってきた 「自分の手元に全てを集めること」 から一定の距離を置き、コレクションの品を媒介とした、同じ趣味の人とのふれあいに重点を置いた生き方になりますか。 経営は赤字でしょうが、節税、税金対策になるならそれもヨシ…なんて資産持ちのコレクターは思っていたりします。

 1990年代後半になり、地方の商店街などはシャッター街などと呼ばれる状況ですし、荒れ放題の空き店舗にするよりはと、こうした 「趣味の店」 のために安価に物件を貸し出すアーケードなども地方に出始めています。 経済的に余裕があれば、こういう余生の過ごし方も良いかも知れません。

 また趣味の品として歴史のある模型の世界などでは、仲間とお金を出し合って巨大な戦艦の模型を共同で作ったり、展示場兼倉庫として、共同所有の納屋を土地所有的に恵まれていて中心となる人物の庭に建てるケースもあります。 この場合は 「博物館」 とか 「趣味の店」 というよりは、「趣味の工場」「仲間とのプチテーマパーク」 とでも呼べる存在なのかも知れません。

 こういった活動は、筆者 にとっても、人生の最終目標の一つだったりしますw

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2002年10月4日)
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