前向きで積極的、気分高まる… 「ノリ」
「ノリ」 とは、外部からの刺激や情報に対して ポジティブ な反応を返すこと、能動的に楽しむような好意的で積極的な姿勢を指す言葉です。 元々は 普通 の日本語の 「乗る」 であり、「話に乗る」「相談に乗る」「流行に乗っかる」 というように、何かに賛同したり参加したり、あるいは 「気分が乗る」 のように関心や意欲が高まる、やる気になるといった肯定的な反応を意味する言葉でした。
その後音楽の世界などでも、コンサートやライブで音楽に陶酔して気分が高まり、思わず体が動き出してしまうような高揚感、一体感、盛り上がりを 「乗る」 と呼ぶようになります。 さらに 現場 で聴衆が乗っている状態を指す言葉から、そうした高揚感を与えるような音楽そのものを指す言葉として 「乗れる」 という表現が登場。 さらに1980年代になると当時の流行としてカタカナ化され、「ノる」「ノレる」 などになって、それらを総称した表現として 「ノリ」 という言い回しとなって定着したようです。
反対にノリが感じられない場合は 「ノリが悪い」 と呼びますが、対の 概念 としては 「内容」 とか 「中身」「意味」 が使われることが多いでしょう。 通常 「ノリだけの 作品 や音楽」 は、内容や中身、意味がない空っぽの作品や音楽であり、しばしばそれが悪いのだという ニュアンス で使われる言葉になります (後述します)。
非常に使い勝手の良い多元的な言葉として、ノリがすっかり定着
ノリが若者言葉として一般化すると、音楽の世界から元々の日本語としての使い方にまでニュアンスが拡張し、人の話に前のめりになって賛同する、面白そうな出来事にすぐに参加する、テンションが上がるといった本来の乗る・乗れるにもノリが使われるようになります。 その後音楽の世界では、気分が高揚してノってくる感覚を 「グルーヴ感」(グルーヴする人はグルーピー) などと表現するようになり、さらに 「アゲ・アゲアゲ」(気分が上がる) も登場しますが、ノリも廃れることはなく、非常に使い勝手の良い多元的な言葉としてすっかり定着した感じになっています。
なおノリがあまりに凄い場合は言葉を重ねて 「ノリノリ」、度が過ぎてやり過ぎな場合は 「悪ノリ」、仲間同士でしか通用しないノリを外部に持ち出して反感を与えることは 「身内ノリ」、ある種の 属性 に基づく定まった行動様式や お約束 を指す使い方 (例えば若者のノリとか昭和ノリなど) もあります。
音楽の現場では、ノリが悪くただ聴いているだけの人は 「地蔵」(身動き一つしないでボッ立ちしているから) と呼びます。 コンサートやライブの楽しみ方は人それぞれですから、別に地蔵でも構わないとは思いますが、会場 の最前列に地蔵がずらりと並ぶと嫌でも視界に入りますし、気になるものなのでしょう (とくに多数のアーティストが登場するフェスで、自分の 推し 以外は地蔵で無視するような場合は目障りだと感じるのはわかります)。
ノリが良いと盛り上がるけど、つい暴走することも…?
ちなみにノリ関連で比較的新しい言い回しとしては、他人の話や意見に単に賛同するだけでなく、すぐさま行動に移すような人をフットワークが軽いとの意味で フッ軽 と呼んだりします。 ノリが良くてフッ軽な人がいると話が速いですし、遊びや飲み会にこうした人がいると場も盛り上がり明るく楽しいものになるでしょう。 陽キャ や ウェイ系 とも親和性が高く、一般にノリが良い人は好ましい性格だと考えられています。
一方で慎重論や反論をする人は 「ノリが悪い」 となりますが、遊びでも何でもやり過ぎて暴走するとそれはそれで困った事態に陥ることもあります。 ノリの良さは好まれる性格ですが、全体のバランスを見て判断すべき話題の時もあるでしょう。 また自分がノる立場の場合は、最初に話を振ってきた相手をうまく立ててノルのがいいのかもしれません。 ノリノリすぎて自分が話をリードするような形になると、主導権を奪われたと感じて腹を立てる人も少なくなかったりしますし。 このあたりはコミュニケーションの核心部分でもあるので、相手が大切な人だと思うなら、ちょっと立ち止まる勇気は必要かもしれません。
ノリだけの作品や音楽と、そうでない作品や音楽
一般に 「ノリだけの作品や音楽」 は、内容や中身、意味がない、薄っぺらく空っぽな、表面的でつまらない作品や音楽だと云われがちです。 ただし内容や意味を込めすぎると重い作品や音楽になってしまいますし、そうしたものに 「ノリ」 を載せるのは、ごく一部の例外的な作品や音楽を除けば難しいと判断される場合が多いでしょう。
従って日本の、とくに大衆に向けた J-POP のような軽い音楽の場合、こうした点を強く意識し、あえて重苦しい内容や意味、テーマ を加えない、削ぎ落すといった加工が行われているものです。 内容や意味があって深い心理描写や深刻ぶった憂鬱さ、難解さを持つ作品は何やら明るくて中身がない軽い作品より優れたもの、知的で高級・高尚 な表現のように思われがちですが、実際は削ぎ落す方が技術的にはずっと難しく、またある種の覚悟や決断、受け取り側に対する揺るぎない信頼が求められる苦しいものになりがちです。 作品を描いたことがある人ならわかると思いますが、意味や要素を詰め込む方がたいして頭も使わないし簡単なんですよね (そしてあれこれ詰め込むことが、作品の 質 を上げることだと信じたいという気分もあります)。
もちろん歌には人生の苦悩や無常観、生と 死、そこからの救済や解放といった重いテーマを聴くものに伝える力や役割もありますから、どちらが優れている劣っているという訳ではなく、それぞれの作品の目的や用途によって使い分けたり選び分ければよいだけの話です。
「軽いノリの作品です」 といった説明が、場合によっては悪口としての 「中身のないスカスカな作品です」 と受け取る人も少なくありませんが、ノリの良さに 全振り したような良く練られた内容のない作品は、要素が詰め込まれ説明しすぎる音楽より聴き手の想像力を刺激し楽しませる エンタメ として、かけがえのない人生の伴侶となってくれることもあるでしょう。
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