齢30を越えるころ、童貞がクラスチェンジするようです…
「魔法使い」 とは、性的な女性経験の一切ない男性、いわゆる 童貞 が30歳の誕生日を越えた頃に到達するとされる、ひとつのステージです。
いつ頃からこう云われるようになったのか分かりませんが (ネット上での広がりは後述します)、少なくとも 「童貞」=「女性経験がない」=「一人前ではない(半人前)」 という認識は昔からありますし、「半人前」=「子供と同じ状態」 で、大人の年齢 (成年は20歳ですが、一昔前までは 30歳と云えば完全な大人、「中年」 の範疇でしたから、この年齢なんでしょう) にそのままなることが極めて稀だったので、同人 だ おたく だが出てくる前から、似たような概念 (しばしば嘲笑や侮蔑的なニュアンス) として存在していたのだと思います。
注目すべき点は、歴史上の 「魔法使い」、例えば 「魔女」 などが、中世ヨーロッパなどでは 「得体の知れない人間」「何をやってるかわからない、何をするかわからない、不気味な人間」 として 認知 され、しばしば部外者や嫌われ者などに行う差別的な扱いを正当化するための 「仕組み」 として使われていた点でしょうか。 実際に魔法が使える、使えないではなく、「気持ちの悪い、よく分からない余所者、部外者、除け者」 に対するレッテルだったって訳ですね。
ここらの使い方は 「童貞は 30歳になると魔法使いになる」 と、構造的にはまったく同じです。 すなわち、「いい年をして女と付き合ったこともない気持ち悪いやつら」「普通の人間とは違う」 と云う訳です。 女性に興味がないのではないかと疑われ、まだまだ社会から理解されない同性愛者、ホモ と見られたり、一般常識から見てアブノーマルと目される ロリコン のレッテルを貼られるようになるのも、この年代以降と云えるでしょう。
童貞の一般化と、自虐的な後付設定
しかしその後、状況は大きく変化しました。 10代の結婚が珍しくなかった昭和初期から高度経済成長までの時代ならともかく、今は晩婚化が進み、30歳で未婚が5割の時代となりました。 そもそも若い世代に異性との性的接触を避ける空気もありますし、男女ともに性的経験のない割合は39歳まででおよそ25%前後、4人に1人にもなっています。
30歳まで一度も恋愛経験のない人、風俗などにも一切行かない人もそれなりに存在するようになると、30歳で童貞ってのも、あまり 「世間の常識からあまりに乖離した不気味な存在」 とまでは云えなくなっていると云えるでしょう。
しかし一方で、そういった境遇にいる人、あるいは将来恐らくはそうした状態になるであろうと若い頃から覚悟する人の数が増えたことにより、自虐的、厭世的に 「どうせ 30歳になったら俺も魔法使いだ」 のような云いまわし、他人が貼るのではなく、自称するレッテルとしての意味も強くなってきました。
童貞のそもそもの語源は 処女 と同じものでしたし、それらが日本で概念として誕生したのはキリスト教などの影響だったこともあり、「清らかな体」「聖なる体」 という意味も根底には流れていて、「神に仕えるもの」 としての聖職者や、その対極としての魔法使いという 「設定」 にも、理屈としてストンと腑に落ちるものがあります。
結果、「30歳を超えたら魔法使い」 と云うのは単なる一般的な俗説 (もちろん完全な俗説ですが) から離れ、そうした境遇の人が比較的多い (であろう) 「おたく」 の世界では、ギャグとして、あるいは自虐として、この俗説が広まるようになっています。 なお 「30歳で魔法使いになる」 のではなく、「30歳になると無理やり魔法学校に収容される」 という言い方もあります。 その魔法学校が一体どこにあるのか、一条校 (学校教育法第1条に定められた公的な学校) なのか、はたまた怪しい隔離施設的な学校なのかは不明です。
ちなみにこの言葉が大きく広まった場所は主に ネット で、1999年4月に運営を開始した 「自動アンケート作成」(自アン/ 2002年5月14日に本家消滅) において、「高齢童貞=魔法使い」 との表現が、頻繁に使われる言い回しとなって定着していました。 その後 2ちゃんねる などその他の 掲示板 などにも伝播。 広く使われるようになっています。
使える魔法は、自分を守るための防御魔法が中心
ところで 「魔法使い」 と云っても、使える魔法には制限があると考えるのが普通です。
よく語られるものでは 「防御系魔法」 が使える魔法のメインのようです。 幸せそうなカップルを見て受ける悔しさ、嫉妬を浄化するとか、世間の冷たい目から身を守るために自分の殻を作って閉じこもるとか、「女などくだらない生き物で、関わるだけ時間の無駄だ」 と開き直ったり、スイーツ(笑) や 中古 などと女性を否定することで精神の平穏を保とうとする…などですね。 また 三次元 よりも 二次元 がリアリティを持ったり、はるかに素晴らしいもののように感じられるようにもなります。
さらにこれらの効果が、わざわざ呪文を唱えなくとも、その時必要だと感じたら自然に自分にかかる魔法というのが、他の多くの魔法と異なる点です。 「修行」 や 「自分の意思」 ではなく、「血」 と 「運命」 によって使えるようになる魔法です。
ただし年に数回 (バレンタインや自分の誕生日、クリスマスや年越しなど) だけ、どんなに呪文を詠唱しても MP が満タンでも魔法が効かない時があり (恐らく邪悪なエナジーが世界に満ち満ちているからでしょう…浄化しなければ)、その際にはむき出しの 「心」(Pure Heart) が、打ちのめされてしまうケースも多いようです。 また不倶戴天の敵である、卑劣な リア充 魔導師による毒攻撃魔法、キャッキャウフフ や ギシアン、さらに悪魔に魂を売った 素人童貞 の 「金で買えばいいじゃん、色々と捗るぞ」 攻撃が炸裂する場合もあります。
そういう時は、オナニー でもして、とっとと寝てしまいましょう。 出すものを出せば、最強結界 賢者タイム が発動してあらゆる煩悩から開放されますから…。
「妖精」「仙人」、さらなる高みに…
ちなみに 「魔法使い」 がさらに研鑽を積み修練することで、次は 「妖精」 へとクラスチェンジするようです。 一説には 「仙人」 って意見もあるようですが。 女性に強い不信感、あるいは嫌悪やトラウマを持つ セカンド童貞 は、黒魔術師となり (こちらは自らの意思で会得する魔法) 、妖怪となるようです。 さらに悪逆非道の限りを尽くす無窮の漆黒の邪神 非道童貞 の魔の手も…。
最終的にはみんな、そして伝説へ…。
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