用語の定義がころころ変遷… 「擬似児童ポルノ」
「擬似児童ポルノ」 とは、本来は実在の児童による、ポルノに準じた性的表現がされた性表現を含む 画像、動画のことです。 例えば児童がセックスをしている 「演技」 や、一部のオーラルセックス、あるいはそれらの演技を行った様子を撮影した画像 (写真) や動画 (ムービー、ビデオ) 作品などとなります。 これらは 準児童ポルノ とも呼ばれます。
2007年から2009年にかけて盛り上がった 児童ポルノ を取り締まるための法律、児童ポルノ法 の 単純所持禁止 の議論の中で、一部マスコミが 「30歳の成年の演技者によるポルノ」 をも、「少女風に見える」 などの理由で 「擬似児童ポルノ」 として報道。 2008年に作られた みなしポルノ と同じような意味でも使われるようにもなっています。
「準児童ポルノ」 がそうであったように、日本では今後、規制推進派の手によって マンガ や アニメ などの創作物も、広く擬似児童ポルノと呼ばれるようになるでしょう。
欧米の 「擬似児童ポルノ」 と日本の 「擬似児童ポルノ」
ところで児童に対する人権侵害が深刻な欧米や多くの国の 「児童ポルノ」 の大半が、おおむね 12歳以下 (小学生まで) の児童よる画像や動画によるポルノを指します。 なぜなら児童 (Child) とは一般的に第二次性徴前の年齢を指し、また実際にこの年代までの被害が集中 (91%) しているからです。
先進国の中にも、オランダやドイツ、スイスのように16歳で合法的に売春ができる国があるので、第二次性徴を迎えた13歳〜17歳程度の年代に 「擬似児童ポルノ」 などが当てはまらないのは当たり前の話です。 多くの国で児童ポルノと云えば、前述のとおり12歳以下を指すからです。 また単なる 「ヌード」(裸体を扱ったもの) と 「ポルノ」(性行為を扱ったもの) では、内容が根本的に違います。
12歳未満と18歳以上とは、個人差があるとは云え一般的には見た目が明らかに違うので、「成年による擬似」 のしようもない欧米では 「擬似児童ポルノ」 はもっぱら児童による擬似のポルノの意味で使われているのですね。 その点、日本では18歳未満が児童ポルノ扱いですし、18歳以上は成年扱いとなっているので、「見た目の判別がほぼ不可能」 な状況となり事情が根本的に異なります。 12歳と18歳は映像に映った骨格や体つきで見分けられても、17歳と18歳を外見や身体特徴のみで正確に見分ける方法は医学的・科学的にも存在しません。
なお欧米にも未成年の記号としての服装 (チアリーディング の服装とか、アニメの 絵 が描かれたTシャツなど) があり、成人がそれらを着用したポルノ動画も無数にありますが、これを 「擬似児童ポルノ」 などとは、通常呼びません。 繰り返しになりますが、「擬似児童ポルノ」 とは現実の児童が擬似的な性行為を行うものを指すので、概念 がまったく違うものだからです。
30歳女優によるただのワイセツ事件なのに、なぜか児童ポルノ事件に…
擬似児童ポルノ」初摘発=ヌード写真家ら 逮捕−わいせつDVD頒布容疑・警視庁 時事ドットコム/ 2009年9月17日 |
擬似児童ポルノ」を全国初摘発 頒布容疑で写真家らを逮捕 産経ニュース/ 2009年9月17日 |
そんな中で2009年9月17日に、少女風に見えるだけ、学校の指定服 (セーラー服 や 体操着 など) を衣装として着ているだけのアダルト作品が摘発されました。
摘発内容は単なる 「無修正」 による一般的な わいせつ の容疑での検挙でしたが、マスコミはことさらに 「全国初の擬似児童ポルノ検挙」 と報じていました。 こういったマスコミの 「見出し」 でのイメージ操作、恣意的表現は、まことに悪質だと云えるでしょう。
制服やそれに近い服装をして撮影されたアダルト作品が禁止すべき 「擬似児童ポルノ」 なら、日本のアダルト動画や写真の多くが 「擬似児童ポルノ」 ということになってしまいます。 「単純所持禁止」 となれば、それを持っている人は全員、性犯罪者です。
マスコミ報道で触れられた、摘発された DVD に出演していた童顔の女性は30歳でした。 陰部が写った無修正だから 「わいせつだ」 として摘発されたのであって、第一報を報じた時事通信や産経ニュースが見出しや本文の一部で触れているように、「児童を装った成人が出演する 「擬似児童ポルノ」 だから摘発された訳ではありません。
この調子では、例えばこの女性が交通事故で摘発されても、「擬似児童ポルノモデルで初の逮捕者」 になってしまいます。 それは報道の形として、果たして妥当なのでしょうか?
また仮定の話として、そもそも30歳女性が制服を着ると 「擬似児童ポルノ」 で 「持ってるだけで逮捕」 になるのなら、30歳の男性が夜のプレイとして30歳の恋人に制服を着せた場合には、「擬似淫行」 になるのでしょうか? 写真を撮影したり売るだけではなく、隠し持っているだけで 「単純所持違反で違法」 なら、実際にエッチをするこのケースでも 「逮捕」 にしないと、法律としてバランスが取れません。 またマンガやアニメを違法とするなら、伝統的絵画やマネキンやフィギュアであっても違法にしないと整合性が取れません。 あまりにバカバカしくて頭が痛くなってきます。
ミスリードを誘う 「子どもポルノ」 というネーミング、類似名称があふれる規制問題
日本ユニセフ協会などが推進する 「児童ポルノ問題」 の運動では、正真正銘の児童ポルノ、すなわち現実の児童が悲惨な被害者となる児童ポルノはもとより、この 「擬似児童ポルノ」 や 「みなしポルノ」「準児童ポルノ」 までの全てを含む 子どもポルノ という、あやふやな名称を使っています。 しかもこの 「準児童ポルノ」 に、アニメや漫画、ゲーム など創作物も含めるという状態となっています。似たような言葉を次から次へと作り、それぞれをその場その場で自分たちに都合よく定義を変えながら使う。 この複雑怪奇さはどこから来るのでしょうか。 「子供を守ろう」 というのは、すなわち 「現実の子供が悲惨な性犯罪被害者となった結果作られた、本物の児童ポルノを禁止しよう」 ということだと思うのですが、なぜこのシンプルな話を、これほど混乱するような複雑な言葉をたくさん作って主張しなければならないのでしょうか (他にもたくさんの似たような言葉があります)。
本来の目的とは違う目的、表向きのスローガンや建前とは違う目的がある、それを隠し ポリシーロンダリング するための方便ではないかと思われても仕方がない状況でしょう。 「嘘、大げさ、紛らわしい」 という誇大広告的な表現は、普通は人を騙そうとする人、詐欺師やペテン師が使うものです。