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紙装甲

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敵の攻撃がスパスパと紙のように貫通…「紙装甲」

 「紙装甲」(かみそうこう) とは、防御力がほとんど皆無に等しい装甲や防具を指します。 文字通り紙のように薄っぺらく役に立たない防御装甲だ、もしくは裸同然の状態だ、装甲がない状態だとの意味となります。 単に 「紙」 とも呼びます。

 またそれに伴い、ダメージ コントロール (ダメコン) が考慮されておらず、被害拡大阻止対策が不十分もしくは皆無で防御能力が著しく低かったり、ゲーム において体力 (ヒットポイント など) の パラメータ がやたらと低く打たれ弱い兵器や武器、そうした傾向を持つ キャラユニットザコ な敵などをやや批判的、侮蔑的に指す言葉としても使われます。

 敵の攻撃を防ぐための防御には、大きく分けて2種類あります。 耐久力 (持久・跳弾) と回避力です。 紙装甲の場合はもっぱら耐久力の欠如を指し、多くの場合、命中したら一撃で致命傷を負う状態となります。 ただし 「重装甲を施していない = 身動きが軽快」 として、そのぶん回避力が高いトレードオフの関係となっている場合もあります。 いわゆる 「速度の盾」「機動力の盾」 です。

 例えば実在兵器でいえば、旧日本軍のゼロ戦 (零式艦上戦闘機)、イギリス軍の木製爆撃機 デ・ハビランド モスキート (DH.98 Mosquito)、架空兵器なら STAR WARS のジェダイ用戦闘機、ジェダイ・スターファイター (イータ2 アクティス級ライト・インターセプターほか) などがその代表でしょう。 いずれもまともな防御や装甲を持っておらず、自衛のための機銃すらないものもありながら、高速で軽快な運動性能で 「被弾 しない」 ことを前提として作られています。 「当たらなければどうということはない」 というわけです。

 なお対義語は 「重装甲」 で、他にも 「神装甲」(神々しいまでの圧倒的な防御力の意) などがあります。

主役や主役級キャラは何発攻撃を受けてもギリギリ耐えるのに、ザコは一撃

 紙装甲がしばしば揶揄として使われるのは、アニメ などでのご都合主義的な攻撃ダメージの表現、演出でしょう。 例えば宇宙戦艦ヤマトの場合、ヤマトや重要キャラの乗った戦闘機などはいくら被弾して大ダメージを受けてもギリギリ持ちこたえるのに (神装甲)、ザコの乗った艦は敵の攻撃が紙のようにスパスパと貫通し、ビーム一発、ミサイル一発で大爆発します。 それどころか、被弾した僚艦の爆発に巻き込まれて誘爆で沈んだりもします。 そのあまりの打たれ弱さから、「どうやらザコ艦の装甲は紙でできているようだ」 との揶揄がよくなされます。

 とりわけ オタク だけでなく 腐女子 の世界でも高い人気を誇る作品 「銀河英雄伝説」 などは、帝国軍、自由惑星同盟軍の艦艇ともに、主砲射程内であれば主要キャラの座乗艦ですら2発〜3発も命中したらほぼ轟沈という装甲の頼りなさで (一撃死も多い)、紙装甲が登場する代表的な作品とも云えるでしょう。 また 「機動戦士ガンダム」 シリーズやその他の作品も、主人公とそのライバルたる 名のある 敵だけは別格で、ザコはひたすらヤラレ役として撃破される一方です。

 またこれらの作品は人気を受けて続編や劇場版、テレビスペシャル版なども作られました。 派手な戦闘シーンや爆発シーンは作品最大の見せどころの一つでもあり力が入りますが、尺のわりに作画のためのコストがとても高く、同じカットや左右反転したカットの使いまわしにも限度があるため本編では数が限られたり控えめなこともあります。 しかし比較的予算が豊富な続編や劇場版、スペシャル版などでは爆発シーンのバリエーションや数そのものも増え、結果的に後のザコ敵になるほどコテンパンにやられているように見えてザコっぽさが強調される状況もあります。

 余談ながら銀英伝で敵弾が命中すると、帝国軍艦は艦橋に立ち並ぶ柱が崩れ落ち、同盟軍艦ではちぎれたワイヤーロープが乱舞し、提督や指揮官を直撃して戦死させます。 いずれもその後さらに艦そのものが大爆発・四散するので助かりはしないのですが、それぞれ帝国軍名物、同盟軍名物とも云えるでしょう。

実在ミリタリーから、ゲーム、アニメにも使われる 「紙装甲」

 紙装甲という言葉が ネット などで盛んに使われるようになったきっかけは、もっぱらゲームの世界においてでした。 極端に打たれ弱く防御力のないキャラやユニットを、紙装甲キャラやユニットなどと言い表すようになり、その他のあらゆる ジャンル にも当てはめて使われるようになっています。

 中でも代表的なのは、実在の軍事兵器 (ミリタリー) の話題で、とくに旧日本陸軍の九七式中戦車、チハ (チハたん) は、そのあまりの装甲防御性能の低さから、紙装甲の代名詞ともなっています。

 なお紙装甲そのものの 元ネタ や語源については、「頼りなく薄っぺらいこと」「実質的に何もないのと同じこと」 を紙に喩えるのが昔からある普遍的な言い回しなので、具体的に何が初出なのかは議論の余地があります。 古くは紙ではなく和紙で、和風建築の 「障子」(しょうじ) や 「襖」(ふすま) に喩えているケースもあります。

 事実上装甲が存在しないような兵器を、装甲がない = 紙のようだ と表現するケースはずっと以前からありましたから、時期的にミリタリー ネタ が発祥だとは思うのですが、具体的に何を指して誰が最初の言いだしっぺなのかについては、まとまっていない印象です。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2007年11月4日)
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