同人用語の基礎知識

特定アジア/ 特ア

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「アジア各国が…」「いや、どうせいつもの3ヶ国だけでしょ!」「特定アジア」

特定アジア3ヶ国
中華人民共和国(中国)中華人民共和国
(中国)
大韓民国(韓国)大韓民国
(韓国)
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)朝鮮民主主義人民共和国
(北朝鮮)

 「特定アジア」 とは、中国 (中華人民共和国)、韓国 (大韓民国)、および北朝鮮 (朝鮮民主主義人民共和国) の3ヶ国 (もしくは2国1地域) を指して使う言葉です。

 ただし単に地理的な位置関係でまとめたものではなく、「その他のアジアの国々に比べ、日本に対して政府や国民に著しい悪感情、反日感情がある」 との意味を強く持っています。 略して 「特ア」(特亜)、あるいは 「中韓北」「いつもの3ヶ国」 とも呼びます。

 この3ヶ国を 「特定」 というくくりでまとめて呼ぶようになったのは、ネット 掲示板2ちゃんねる のニュース系の板からで、以降は保守的な ブログ など他のネットメディアやコミュニティにもこの考え方と言葉が用語として伝播。 「この3ヶ国だけは日本に対する感情が特殊で、他のアジア諸国とは別に考えるべきだ」 との意見が広く根付くきっかけともなっています。

 もっとも、数ある国の中からこの3ヶ国だけを別に考えたり、この3ヶ国のみを特別な呼び方でまとめる試みはずっと以前から行われていました。 ネットが登場する以前の保守系の雑誌などでも、昭和の時代から度々触れられています。 従って 概念 ごと全く新しく作られた ネットスラング2ちゃんねる用語) という訳ではありません。

 しかし 「特定アジア」 という言葉そのものの語感や文字列に、取り立てて差別的で ネガティブ、下品な揶揄の ニュアンス (それ以前からネットに存在した 「極東3馬鹿トリオ」 のような) がなく冷静な議論でも使いやすいこと、過去・現在の様々な外交的経緯から、多くのネット利用者らの共感を呼ぶ内容だったこともあり、2000年代中頃から広く使われるようになっています。

 一方で、差別的な負のレッテルである、民族差別・ヘイト的な表現だとして、こうしたくくりや表現を嫌う人も少なくありません。 可能であれば、使わないにこしたことはない表現の1つでしょう。

靖国参拝問題で 「アジア各国は反対している」 との主張に 「それホント?」

特定アジア地図
特定アジア地図 (国境は日本外務省分類による)
アジア/ 特定アジア

 単に 「アジア」 と一言でいっても、その範囲は実はとても広大なものです (右図)。

 日本を含め、これら3ヶ国が入る極東アジア (東アジア) はもちろん、東南アジアや北アジア、南アジア、西アジア、中央アジアもありますし、そこに位置しアジアの国とされる国や地域も、全体では50前後にも及びます (ただし西アジアなどは、中近東や中東とのくくりで一般的なアジアのイメージとは別に語られるケースが多くなっていますが)。

 その中で特に中国・韓国・北朝鮮の3ヶ国が分離して扱われているのは、これら3ヶ国の日本に対する厳しい国民感情、外交政策、歴史的な経緯、及び日本政府や日本マスコミの過剰な 「配慮」 が、一般的にいって他のアジア諸国と比べ著しくかけ離れた特殊な状態となっている点があります。

 またそれに伴い、いわゆる革新系・左翼とされている人達は、例えば過去の歴史認識、日本の外交政策などについて、もっぱら中国・韓国・北朝鮮の3ヶ国のみが主張している話を、「アジア諸国はこう言っている」「アジアの国々はこう考えている」 と 主語を大きく してオブラートに包み、多数派を装ってさも多くの国やアジア全体がそうだと言わんばかりの論調で語るケースが多く見られました。

 これらについて 「アジア諸国といったって、いつも中国・韓国・北朝鮮のたった3ヶ国だけではないか」「マスコミや文化人は二言目には 「アジアとの連帯」 を口にするが、アジアって中国・韓国・北朝鮮だけしかないのか?」 との意見が保守層を中心に反論として出ていたのでした。

あなたのおっしゃるアジアって、どこの国のことかしら?

 この 「特定アジア」 という言葉がネット上で爆発的に広まったのは、NHK の視聴者参加型の討論番組、「日本の、これから」 第3回目、「アジアの中の日本」(2005年8月15日) の放映からしばらく経ってからでした。

 この番組では、日本の小泉純一郎首相の 「靖国参拝問題」 などを発端として悪化しているとされる日本とアジアとの関係を扱っていました。 しかしアジア各国の一般市民が集められてはいたものの、参加者の多くが中国人、韓国人などに偏っており、「日本が一方的に悪かった」 との前提の元、彼らの口を通じて 「日本人は歴史をきちんと学んで欲しい」「アジアの人達の心情に配慮して欲しい」 との、「いつもの論調」 が多く出ていました。

 その中で、ある中国人女性が 「日本はアジアの批判に対して」 と批判を自明の前提として述べた意見に対し、評論家の櫻井よしこ氏が、「アジア各国という時にですね、どの国とどの国を指しておられますか?」 と質問。 女性は 「えっと、特に中国とか韓国からそういう声がでているので」 と返答。 すると櫻井氏は 「私たちはここで言葉をきちんと定義した方がいいと思うんですね」「アジア各国というと、アジア全域のことという風につい考えてしまいますけれど、この問題について特に激しい批判をしているのは、まず中国ですね、そして韓国ですね」 と国名を 限定 した上で、台湾やマレーシアの政府要人などが積極的に靖国参拝をしている例を挙げながら、漠然としたアジアではなく、「中国と韓国ということをまず定義したい」 と提案。

 さらに、中韓が日本の首相の靖国参拝を批判する際に使う、いわゆるA級戦犯の合祀がされた年と批判が始まった年、その後の日本総理の参拝や中韓の批判の経緯などを振り返りながら、「靖国参拝によって感情が悪化しているのではなく、中韓の明確な国益に基づいた政治的意図に合わせ靖国をその 「入口」 として利用しているのだ」 と論評。 全体としては、「靖国で日本が譲歩しても、関係悪化の根本原因が靖国参拝にない以上、意味がない」 との意見となっていました。

 一方、この番組を、ある意味 「監視、チェック」 のような態度で見守っていた保守的なネット利用者は、「これを機に、アジアとかアジア各国というミスリードを誘うぼやかした呼び方はやめるべき」 との声と共に、番組の一連のやり取りでは触れられなかった北朝鮮も含めた3ヶ国にふさわしい呼び名を考えようとの機運が盛り上がっていました。 これまでこの言葉にとても近い使われ方をしていたのは 「極東アジア」 ですが、日本を含めない形であからさまな差別的ニュアンスを持たず、冷静な議論で使える3ヶ国 限定 の呼び名が求められたのですね。

 そこででてきたのが、すなわち 「特定アジア」 だったのでした。

「もう、中国と朝鮮を合わせて「特定アジア」って呼ぼうぜ」 書き込み

 なお 「初出」 としてよく触れられるのは、2ちゃんねるニュース速報+板の スレッド、「【アジア】今回の自民党圧勝の衆院選結果、タイ、フィリピン、台湾の反応は」(小泉自民党の圧勝に終わった日本の総選挙結果を、タイやフィリピン、台湾が歓迎しているとの毎日新聞のニュースを扱ったもの) に書きこまれた次の レス (2005年9月12日) となります。

 35 名前:名無しさん@6周年[] 投稿日:2005/09/12(月) 23:01:05 ID:dM6WNT780
 もう、中国と朝鮮を合わせて「特定アジア」って呼ぼうぜ。
 紛らわしくてしょうがない。

 それ以前から、似たような意味、あるいは負のレッテルとして同じ言い回しが存在したとの話もあります (「特定のアジア」 のような言い回しもかねてから存在)。 しかしこの言葉が登場した時のやり取りに、直接過去の言葉のあれこれが出てはいませんでしたし、こうした言葉がこれ以降急激に広まったのは、やはりこれが発端だったと言って良いでしょう。

 この 書き込み を受け、翌9月13日には 2ちゃんねるガイドライン板に 「特定アジアのガイドライン」 スレッドも立ち、定義が詰められる一方、他板や各コミュニティに言葉として伝播、広まることとなりました。

多数派を装い、ミスリードを誘う 「〜各国では」

 こうした、ほんの数ヶ国だけの主張を、さも全アジア、あるいは全世界がそうだと言っているかのようにミスリードする方法は革新系・左翼特有のものではありません。 冷戦時代はアメリカやソ連の主張を、それぞれの陣営が世界の代表的な声、多数派の声として報道・喧伝していましたし、それは現在でもあまり違いはないでしょう。

 こうしたムード優先の言い方は、物事の本質を見えなくし、過剰反応を招きかねない危険なものでしょう。 もちろん少数派の声をまるで無視して良いのだとの意見も誤りですが、どちらの声、意見を取り入れるにしても、きちんと全体を見て、バランスを取るのが大切なのかも知れません。 ノイジーマイノリティ (声が大きいだけの少数派) の声だけを考慮するのは、サイレントマジョリティ (声なき多数派) を無視し、裏切ることにもつながります。

「憎しみの連鎖」 ではなく、マスコミによる 「憎しみの創造」

 これらの靖国批判問題は、筆者 の考えも上記の考え方とだいたい同じです。 靖国問題があるから関係が悪くなっているのではなく、関係が悪いから靖国問題が出てくるのです。 仮に靖国問題で日本が全面的に譲歩したとしても、次は別の何かが (尖閣諸島だの竹島だのが) 改めて出てくるだけのことでしょう。

 例えばアメリカでことさらに真珠湾攻撃を批判する声が出るのは、ことの是非はともかく、貿易摩擦などで日米関係が悪化した時です。 真珠湾攻撃があったから貿易摩擦が起こったり日米関係が悪くなるわけではなく、関係が悪化したから昔の話が蒸し返されるのです。 これらは常識の話でしょう。

 日本側で彼らの意見を肯定し靖国に反対の声を上げている知識人やジャーナリストは多いですが、「A級戦犯の遺骨があって拝んでいる」(鳥越俊太郎氏) をはじめ、もう云ってることがめちゃくちゃで、無知なのか故意の マッチポンプ なのかわかりませんが、もういらん波風立てるなと思ってしまいます。 本気で友好善隣を目指すつもりがあるのでしょうか?

 そもそも靖国問題が政治・外交問題化した発端にメディアによるセンセーショナルな報道があったとの検証もされていますが、「憎しみの連鎖」「再生産」 ですらない、歴史的事実を全く無視したデタラメの流布による 「憎しみの創造」 は、いい加減にもうやめて欲しいものです。 日本人だけでなく、善良な中国人・韓国人にとっても迷惑な話です。

2011年〜2012年、日韓関係は最悪のレベルに

 2011年から激化した、いわゆる 「慰安婦」 に対する韓国側の官民挙げた反日運動によって、日韓関係は最悪の状態になりつつあります。 韓国国民の対日感情が悪いのはいつもの通りですが、日本国民の対韓感情も悪化し続け、日本政府や日本マスコミがいくら 「友好善隣」 を唱えても、逆に反発を招く結果となっています (中国に対する感情悪化も過去最悪を毎年更新)。

 日本側は、小泉首相の2006年8月15日の靖国参拝以降は靖国への首相の参拝はなくなり、さらに2009年8月には、中国や韓国に対して融和的とされる民主党が選挙で大勝して政権を奪取。 また日韓基本条約で終わっている以前に、日本側になんの落ち度もない朝鮮半島由来の図書 「朝鮮王室儀軌」 の返還など、韓国側の歓心をかうような政策を次々に実施したにもかかわらずです。

 結果的にこれらはことごとく逆効果となっており、こちらが一歩引いたところに一歩どころか二歩三歩と相手が踏み込んで来る状況に至り、在韓日本大使館前やアメリカに慰安婦の像や記念碑が建てられる、官民の交流事業が次々に頓挫するなど、日韓関係が深刻な レベル となっています。

 この民主党政権時代、総理はもちろん、閣僚の参拝もほとんどありませんでしたが、結果的に日中・日韓ともに関係は最悪になっており、「靖国が原因で関係が悪化する」 という論がいかに空疎で現実を見ない掛け声なのか、あるいは日本側の一部の人達が、自分たちの主義主張を通すために自ら炊きつけた中韓の反発とやらを外圧に利用しているだけなのかを、しっかり肝に銘じる必要があるでしょう。

 それと同時に、「こちらが一方的に配慮する」「筋目を曲げてまで譲歩する」「可能な限り相手を立て援助や協力を惜しまない」 という融和的な外交政策が、ここに来てはっきりと 「破綻した」 というのは、きちんと総括して欲しいものです。 過去数十年やってきたことが 「逆効果だった」「失敗した」 ときちんと認識しなければ、また同じ失敗を繰り返すことになるでしょう。 わかっててなお意図的に悪手を打つのは 「犯罪」 です。

 また外国の国民感情に配慮するのは、自国民、日本の政治家や官僚が守るべき日本人の感情や名誉、利益に最大限の配慮をした後にするべきなのは、常識以前の当たり前の話でしょう。 外国の感情に配慮する前に、「日本国民にだって感情もある」 というのを理解してもらいたいものです。

 このまま日本国民の感情が悪化し続け、それを利用する形でさらに憎しみを煽り強硬論を唱える政治家や煽動家が現れたら、それこそ 「いつか来た道」 に逆戻りするのではないでしょうか。 筆者は、それをこそ恐れます。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年10月17日)
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