法令で定められた事故と、何となくそう呼ばれる事故 「放送事故」
「放送事故」 とは、テレビやラジオの 放送 において、放送設備の故障やスタッフらの人為的なミス、自然災害や 事故 といった要因によって、予定していた正常な放送ができなくなってしまうことです。
放送事業者は放送法に基づき事業を行っており、本来的には放送事業者や電波行政を所管・監督する総務省などへ報告を行うことが法的に義務付けられた事故や トラブル を指します。 とくに一定時間以上の放送中断は、もっとも深刻な放送事故です。 とはいえテレビやラジオを通じてこの言葉がカジュアル化する中で本来の意味を離れ、ちょっとしたハプニングやトラブル、場合によっては 出演者 らの コメント やギャグがスベってスタジオの 雰囲気 が悪くなる、場の空気が凍り付くといった場合に、まるで放送事故みたいだといった揶揄として用いることもあります。
またバラエティ番組などで過激な発言や芸を披露するお笑い芸人、爆弾発言をしがちなお騒がせ芸能人やタレントなどを 「歩く放送事故」 のように揶揄して形容する場合もあります。
国民共有の財産である電波 (周波数) を預かるからには…
もっともシンプルな放送事故は、放送機器や送信設備の故障、通信回線や状況の不具合による中継の中断、停電や、スタッフによる操作ミスによって生じるものです。 すなわち映像が乱れる、停止 (フリーズ) する、画面 が真っ黒になったり砂嵐 (スノーノイズ) になる、音声が途切れる、最悪の場合として電波そのものが止まるなどがあります。
これらは 視聴者・リスナー ら受け取り側にも直接影響が及ぶもので、とくに映像や音声が途切れること (無映像・無音・放送中断) は重大な放送事故であり、仮に機器類や操作に問題がなくとも、一定時間の無映像・無音声の状態が続くと事故の可能性が疑われるため、たとえ演出であっても紛らわしい状態は避けるようガイドラインなどで定められています。 放送局側もそれだけは避けられるよう、何らかの事故や障害が生じた際は緊急用のカラーバー 画像 や 「しばらくお待ちください」「準備中です」 などの映像と、無音防止のためのちょっとしたクラシック音楽などが中断中に表示・送出されることになります。
一方、機器類や電波の送出は正常でも、番組の内容に関して進行が乱れる、尺 (放送時間) が 余る・足りなくなる、進行台本の読み間違いや手違い、意図しない映像や音声が割り込んだり誤ったテロップが表示される、出演者による予期せぬ不適切発言 (放送禁止用語 の使用) なども、それに準じた扱いがされることもあります。 とくに映像や音声の乱れや不適切発言は批判を招きやすいものであり、番組中にアナウンサーらが謝罪と訂正を行うことが一般的です。
これに類するもので、公序良俗に反していて画面に映ってはいけないもの (例えば性器などの わいせつ なものとか、人の死体といった センシティブ なもの) が偶然に写り込んでしまった場合も、同様の処置がされることが多いでしょう。 また放送の内容そのものに直接影響はなくとも、番組の収録中にスタッフや出演者らに身体的な危害が生じる (労災)、器物損壊が起こる、何らかの不法行為や犯罪が行われる、あるいはその徴候や強い恐れが生じたなどの一般企業でも生じるインシデント (incident) も、状況によっては広義の放送事故と呼ばれることがあります。
日本には 表現の自由 がありますし、国民の知る権利もあります。 放送事業者はそれに基づいて報道などを行っており、総務省ら国による 「事故」 の扱いも、あくまで技術的な事故やトラブルに限定して行われ、番組の内容にまで踏み込んだ指導や処分を行うことは極めて稀です。 しかし有限である国民 共有 の財産である電波を実質的に独占状態で利用でき、社会に対する影響力も大きな存在でもあるため、公序良俗に反せずまた政治的にも公平中立の立場が求められる立場でもあります。





