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テレビやラジオ、館内での案内まで… 「放送」

 「放送」(Broadcasting) とは、映像や音声、あるいは文字といった情報を電波や 通信ネットワーク (有線・ケーブル) を用いて遠隔地にある不特定多数の端末や 視聴者リスナー らに向けて送信・送出する伝達手段のことです。 テレビの場合は放映と呼ぶこともあります。 一般的には 1対多、あるいは1対不特定多数への伝達手段を指し、1対1の場合は通信と呼ぶことが多いでしょう (ただし厳密な言葉の使い分けが必ずしもされる訳ではありません)。

 単に放送といった場合、主にテレビやラジオのそれを指して使うことが多いのですが、近年では インターネット を用いたネットでの 配信 も含めて使われるようになっています。 その他、連絡事項の伝達・告知 のために 学校 の放送室から行われるものは校内放送、何らかの施設や 会場 で行われるものは館内放送といった使い方もします。 いずれも1対多といった本来の意味はそのままです。

 一方、手持ちの拡声器 (メガホン) やそれに近いワイヤレスの拡声器を用いて目の前の聴衆に声を届けるといったケースでは、一般的にまず放送とは呼びません。 しかし固定式の屋外スピーカーを使った場合 (例えば防災無線とか前述した館内でのアナウンス) は、仮に電波を使わずマイクから目の前の人々に直に呼びかけても一般に放送と呼ぶことが多いでしょう。 慣用的に使われる言葉でもあり、電気機器や通信技術の多様化によって一般用語としての ニュアンス も結構変わってきています。 また送り手が特定の受け手を間に挟んで最終的に放送を行う場合は、とくに中継放送と呼ぶこともあります。

 放送方式ではなく番組の送出 スタイル については、 で放送されるものは 生放送、収録済みのものは収録放送、とくに緊急性を帯びたものは緊急放送、番組の本編を正式に放送したものは 本放送、同じ番組を再度流すことは 再放送 と呼びます。 なおネット上で生放送と呼ぶ場合は、動画サイト ニコニコ動画のニコニコ生放送を指すこともあります。 区別するためニコ生と呼ぶこともあります。

放送の歴史はおよそ100年ほど…今ではなくてはならないものに

 世界で初めての放送はラジオで、1906年のクリスマス・イブ (12月24日) にアメリカで行われた音声送信実験がそれとされます。 大衆に向けた世界初の公共放送は1920年に同じくアメリカで、ピッツバーグに開局した KDKA局が開始したものとされます。 テレビ放送については1926年に日本で世界初の電子式受像が行われ、公共放送としては1936年にイギリスで、BBCが定期的な放送を開始したのが世界最初とされます。

 電波を用いた放送の場合、電波資源 (周波数) は有限であり、いずれの場合も国際的な取り決めに基づきそれぞれの国が管理する許認可制となっています。 また国民の知る権利を守るため、民主主義国家では放送主体の官民を問わず、おおむね他の業種にはない何らかの法的な優遇が図られていることが多いでしょう。

 一方独裁・権威主義国家の場合は、情報統制とプロパガンダのための重要な手段のひとつとして、官による一方的な放送しかないことが多いでしょう。 場合によっては諜報活動のために海外にいるスパイに向けて暗号を放送するものもあります。 通常の番組に暗号を混ぜることもあれば、暗号を伝達・復号するための乱数表の数値をひたすら流すものもあり、後者は乱数放送と呼ぶこともあります。 これらは冷戦時代を中心に世界中で行われていますが、日本においてはとくに北朝鮮のものが有名で、短波ラジオがあれば誰でも聴くことができます。

 放送主体は官民問わず放送局と呼ばれ、それぞれ固有のコールサイン (呼出符号/ 例えば NHKラジオ第1放送 (東京) はJOAK) を持ち、定期的に放送内でアナウンスしています。 これらとは全く違う個人やそれに近い規模で、狭い地域のみを受信対象とした小規模な放送もあります。 一般的に知られているのはラジオにおける独立系の FM放送で、カラオケ などで使うワイヤレスマイクに近いような小出力の送信器を使い、地域ごと (観光地とかが多い) に ローカル な放送を短い期間・時間のみ (例えば週末や夏季休暇中の昼間だけとか) に行うといったブームもありました。

 一方、国際条約や国の法令の外で行う放送もあります。 こちらは一般に海賊放送と呼ばれ、反政府勢力や無政府主義者らが寄付金を募るなどして 運営 し、違法に電波を飛ばして行う非合法の放送となります。 コールサインは持たず、「自由〇〇の声」 みたいな名前を自称して敵対する政治勢力に対する批判や告発を行ったり、あるいは 著作権 などを無視した アングラ な内容の放送を行ったりします。 こうした放送や敵対する国々の放送の受信を妨げるために、より大出力で妨害のためのノイズだけを流す局もあります。 これらはジャミング放送と呼びます。

一度に膨大な受け手に情報を伝達できる

 電波を使った放送の最大の特徴は、送出する側にとって圧倒的な 費用対効果 の高さにあります。 受像機や受信機は受け取り側が用意するためコストがかからないのはネット配信などと同じですが、送り手は一度電波の送出設備を備えれば、原則として電力さえあれば一気に数百万人や数千万人といった規模で情報を同時に散布することが可能となります。 またラジオの短波放送の場合は、小さい設備でも条件によっては世界中に電波を届かせることも可能です。

 これは受け取り側にとっても同様で、ネットのように通信キャリアとの契約などをせずとも、受像機や受信機とそれを動かす電気さえあれば、原則として誰でも無料で自由に受け取ることができます (ラジオの場合、受信する電波そのものが持っているエネルギーを動力とするゲルマニウムラジオなら電源すら不要です)。

 ただし情報のやり取りは一方的な送出のみで、ネットのような双方向性は持っていません。 とはいえネットが普及し、またテレビやラジオとパソコンや情報端末との境界線があやふやとなると、電波とネットとを組み合わせたハイブリッドな放送とすることで、両者のメリットをある程度両立させることも可能です。 ネットのない時代も電話回線を用いた同様の取り組みもありましたが、せいぜい番組の中で視聴者らのアンケートを取るといった程度で、あまり実用性はありませんでした。

オンタイムで放送を楽しむことに、特別な意味が生じることも

 もう一つの違いはネット配信がユーザーの要求に応じて個別にデータを送信する仕組みである点と異なり、放送は送り手側の放送タイミングに視聴・聴取のタイミングを合わせる必要がある点でしょう。 これらは受け手側が ビデオ や音声レコーダーを用意して録画・録音して都合の良いタイミングに合わせて再生するか、ネットと連携した オンデマンド での扱いとすることである程度は利便性を確保することができますが不便であり、ネット配信に対して放送が持つ弱みと考えられることが多いでしょう。

 とはいえこれは、逆に云えば 「膨大な人間が同じタイミングで同じ コンテンツ を楽しめる」 という極めて大きなメリットと見なすこともできます。 とくに リアルタイム (リアタイ) 性が求められる報道とかスポーツの 実況、アーティストの ライブ などは、オンタイム・リアタイで視聴・聴取することで同時代人や同じ嗜好・趣味 を持つ仲間との一体感を得る行為でもあります。 テレビやラジオ (とくに若者向けの深夜放送) が絶大な存在感を持っていた時代、「明日の世間話の お題 をあまねく提供する」 という役割とメリットは、とても大きなものでした。

 時代を下ると娯楽や好みの多様性・細分化、あるいは生活サイクルの違いなどによって 「みんなが同じ番組を同時に見る・聴く」 といった状況は希薄となり、共通の話題が持ちづらいといった 環境 となっています。 一家揃ってお茶の間で同じ番組を見るという習慣も遠いものとなりました。 面白い番組が減ったとか NHK の受信料の問題もあり、若者の間ではテレビを見ない、そもそも持たないという選択肢も当たり前になっています。 テレビ自体も多チャンネルであり、さらにネットまであると、ますます見るもの・聴くものが人によってバラバラになるでしょう。

 それでも時代を代表するような アニメ やドラマ、大事件や大規模災害といった報道はありますし、放送を通じて強い時代性を帯び、また大勢の共通の過去の記憶を形成し、それが日本国内であれば日本人としてのアイデンティティのいち要素として無視できないものになることもあるでしょう。 近年はますますテレビ離れ・ラジオ離れが叫ばれて久しいですし、これらが過去のような輝きを取り戻すことはもうないのかもしれませんが、テレビっ子・ラジオっ子 (とくにラジオっ子だった) 筆者 としては、ちょっと寂しくもあります。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年2月6日)
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