同人用語の基礎知識

共感性羞恥

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他人の恥ずかしさが自分にも襲い掛かる… 「共感性羞恥」

 「共感性羞恥」(きょうかんせいしゅうち) とは、他人が 痛々しい 言動をしたり赤っ恥をかいている姿を見て自分のことのように恥ずかしく感じ、いたたまれなくなって、思わず 「うああああぁ」 と身もだえてしまうような状況のことです。

 例えば他人が叱られて恥をかいている、周りの歓心をかおうと無理にテンションを上げて滑っている、調子に乗って イキって たしなめられる姿とか、似合いもしない流行りの服を着て気取っているのを周囲からクスクスと笑われる姿とか、中二病意識高い系 を発症している人の姿などを見て、自分も恥ずかしく苦しく感じるなどが代表的な状況です。 単にその言動が痛々しいだけでなく、自分自身も過去に似たようなことをしたり、しようとしたことがあり、その時の自身の必死さや浅はかな打算、失敗した後の惨めな気分も蘇ってトラウマを刺激し、なんとも言えない心持ちとなってしまいます。

 他人の 「無様な姿」 を見て嗤ったり留飲を下げられる人もいるのでしょうが、誰だって年を重ねていくと誰にも言えない恥ずかしい失敗、他人が眉をひそめるようなずるいこと、みっともない思い込みを何度か経験していきますから、同じことをしている人を見ると、とても他人ごととは思えなくなってきます。 まるで過去の自分を見せつけられているような強烈な恥ずかしさを、場合によっては感じてしまうのでしょう。

 こうした感情は、友人知人といった周囲の他人に対してだけでなく アニメマンガ、ドラマや映画の登場人物の言動に対しても受けるものです。 自分のトラウマに クリティカル な言動をしている キャラ の姿は、見るのが本当に辛くなる場合もあります。 なおこうした状態が極端な形で感じられる場合は、「HSP」 の疑いがあるとの心理学的な説もあります(後述します)。

2016年のテレビ番組を発端に、大きな話題に

 この言葉自体が広がったのはテレビ番組 「マツコ&有吉の怒り新党」 中のエピソードの一つが、その発端ともされています。 この番組は架空の政治団体 「怒り新党」 をマツコ・デラックスさんが幹事長、有吉弘行さんが政調会長という役割で旗揚げし、視聴者から寄せられた日々の怒りを 「国民の声」 として紹介して怒るべきかそうでないかを決めるという内容のものです。

 2016年8月24日の放映では、20歳大学生からの 投稿 「もうすぐ恥をかきそうなドラマのシーンが見られない」 といった内容に対し、共感性羞恥という言葉を使って紹介。 様々なケースなどを挙げた上で、こうした感覚がある人とない人がいるとの紹介には、ネット などでも話題となり、ツイッター のトレンドに入るほど多くの意見が交わされることとなっています。 なおこの投稿に対し、マツコさんはわかる、有吉さんは理解できないとの回答を示しています。

 一見心理学的な専門用語、精神医学用語っぽい名前であること、「見ている方が辛い」「いたたまれない」 といった、それまで多くの人の身に覚えのある感覚をわかりやすく言語化したものだったこともあり、その後は様々なケースで広く使われるようになっています。 なお学術的には共感性羞恥ではなく観察者羞恥と呼ぶ方が望ましいとの意見もあります。

「共感性羞恥」 だと思ったら、実は 「嫉妬」 だった…?

 一方、「共感性羞恥」 だと思ったらそうではなく、なんだかモヤモヤしたものを感じるだけで、それを 「共感性羞恥」 だと思い込んで、あるいはそうだと思いたくて切って捨てようとする場合もあります。 この場合の本当の理由は、「嫉妬」 や 「焦り」 だったりします。

 例えば自分とは不釣り合いなほど素敵な異性への告白。 上ずった声で顔を真っ赤にして汗をかきながら必死の訴えをする姿を見て、過去に似たようなことをして失敗した、あるいはしようとしたけど勇気がなくてできなかった人が 「共感性羞恥」 を覚えるケースは多いものです。

 しかしその裏には 「自分はあと一歩が踏み出せなかったのに、こいつはそれを実行している」「もしかしたらうまくいってしまうのではないか」 という他人への嫉妬や焦り、それができなかった自分自身の後悔があり、それを認めたくないので 「共感性羞恥だわーw」 と笑い話にしようとしているだけかも知れません。

 誰からも無理だと云われながら粘り強く取り組んだビジネスが上手くいってちょっと舞い上がっている人、へたくそだけど頑張って描いた イラスト を好きだからと発表し続けて楽しそうにしている人、ニコ動や YouTube などで趣味の動画を配信してテンション上げている人を見て 「恥ずかしい」「こんなことまでしたくないわ」 と感じつつも、どこか 「勇気をもって前に出ている人」 を羨ましく感じることはあるものです。

 失敗を恐れるがあまり、「他人から見て恥ずかしいと思われがちな勇気ある行動」 ができなかった人の後日の 「言い訳」 にもなりかねないのが、「共感性羞恥」 なのでしょう。

単なる性格の問題や 「あるある話」 ではないケースも

 なお 「共感性・感受性が生まれつき鋭敏・繊細すぎて、心が疲れやすく、日々の生活や生きることにしばしば苦痛を伴う気質」 として 「HSP」(Highly Sensitive Person (ハイリー・センシティブ・パーソン) という 概念 もあります。

 アメリカの臨床研究心理学者のエレイン・アーロン(Elaine N. Aron)博士が1996年に提唱した説によれば、全人口の15〜20%程度にこの気質があるとされ、「刺激を受けやすい」「刺激に対する感受性が強い」「感情的な反応や共感を覚えやすい」「ものごとを深く考え過ぎる」 といった傾向がその特徴とされます。 その結果、例えば人の失敗を見て同じように苦しくなったり、人の顔色を見てしまって影響を受けやすい、すぐに動揺して気分が落ち込むなど、様々なストレスを受けるとされます。

 症状や気分の落ち込み方によっては鬱病などとの類似性もあり、近年ではメンタルヘルスの問題としても取り組まれるようになっています。 「あるあるそういうこと」 では済まないほどの強いストレスを心身に覚える場合は、「誰でも持っている共感性羞恥だ」 などと自己診断せず、信頼できる医療機関に相談して医師の診断や指示を受けるようにしましょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2017年2月3日/ ページを一部統合しました)
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