同人用語の基礎知識

リアリティ

トップ 同人用語 項目一覧 リアリティ

人は何をもって 「現実」 を理解するか… 「リアリティ」

本物と本物っぽさって やっぱ違うよね (寐津菟かき子)
本物と本物っぽさって やっぱ違うよね (寐津菟かき子

 「リアリティ」 とは、本物っぽさ、臨場感があってリアルな感じ、生々しくて現実っぽい 「らしさ」 といった意味の言葉です。 架空・人工的な何かが本物っぽい、自然だといった意味もあれば、本物の一部を 切り抜い たリアルの一部、あるいは人が認識する世界の本質や性質を指して使われることもあります。

 通常リアリティは、視覚的、あるいは物理的なリアル (現実) といった人が五感を通じて知覚・体験する情報や、より広い意味では個々人が持つ意識とか社会的な文脈や合意事項、それに伴う 認知 などにも深く関わっています。

 それらの内容や人の感情に作用する機序によっては、フィクションレベル が高い荒唐無稽な作り物に迫真の本物っぽさが宿ったり、逆に正真正銘の本物に作り物や偽物のような非現実的・非リアリティさを覚えることもあります。

客観的リアリティと主観的リアリティ

 一般にリアリティは、客観的リアリティと主観的リアリティに分けることができると考えられています。 客観的リアリティは、普遍的な法則や物理的な存在に基づいていて、数値化もしやすく、おおむね誰が観察してもだいたい同じ結果が得られるものです。 例えば実物を自然な形に 撮影 した写真とか、実物と寸分違わず造形した彫像などですね。

 一方の主観的リアリティは、個々人の経験や知識、受け取った際の感情や順番などによって変わるものです。 場合によっては同じ人のその時々の状況や気分によって同じものでもリアリティを感じたり感じなかったりもします。 その結果、異なる 解釈 や理解がされることもあります。 例えば同じ料理を見てもプロの料理人が見るのと台所に立ったことすらない人が見るのとでは見え方が変わってしまうでしょうし、車を運転したことがある人とそうでない人とでは、レーシングゲームのリアリティに対する要求レベルも変わるでしょう。

 客観的リアリティは、全体の一部が非現実的でも、一部にリアリティがあれば、全体のリアリティも生じることがあります。 例えば マンガ のようなデフォルメがされた イラスト に描かれた キャラクター は実写や実写風・フォトリアルなキャラと比べるといかにも といった見た目ですが、いかにもそのキャラが口にしそうなセリフをしゃべったり、服装などが精緻に描かれたり、人の動きをトレースする技法 (ロトスコープ) で ぬるぬる とした細かい動きを与えると、急に生々しく本物っぽく見えてきます。

 主観的なものならば、いかにも安っぽい偽物をいくつも見せられた後に、それよりほんのちょっと本物っぽい偽物を見たら本物に見えてしまうこともあります。 あるいはリアリティの精度がバラバラでチープなものから正真正銘の本物も混ざっている状態よりは、ある程度同じようなリアリティ精度で揃えられた偽物だけの方が全体のバランスが取れて、違和感がなく全てが本物っぽく見えることもあるでしょう。 長時間に渡ってひたすらその世界に没頭させることで、その人にとってのリアリティの認知ごと変化させることすらできます。 ずっとその場にいたら、いずれはそれがその人にとってのリアルになるからです。

 また見る人の経験に依存する部分では、現実の戦争とか大災害の被害を 現場 で目の当たりにしたことない人にとっては、作り物の映像にせよその現場にいるにせよあまりに非日常的過ぎて現実味が感じられませんが、ドキュメンタリー映像のように画面が揺れたり不鮮明な映像で見せられると、途端にリアリティが感じられることもあります。 これは報道番組などで戦場カメラマンの撮影した映像を何度も見ていて、「実際の戦争や災害はこう見える」 という感覚が潜在意識として備わっているからでしょう。

創作物でどうリアリティを実現するか

 前述した通り、リアリティは極めて流動的かつ相対的なものです。 マンガや アニメ といった創作物におけるリアリティは、それを描く 作者 のフィルターによってまず 世界観設定 に基づく各種の ディテール が描写され、それがリアリティの元になります。 しかしそれが 「本物っぽい」 と感じられるか、あるいは 「薄っぺらい作り物」「偽物」 に感じられるかは、それ自体の完成度だけでなく 読者視聴者 それぞれの受け取り方にも左右されます。 単に本物に寄せればリアリティが増す訳ではなく、誇張や不要な要素の切り捨てなど、上手に嘘をつく必要があるのですね。

 本物志向になりすぎてあまりに専門的にすぎる描写をすると 素人 は理解できなくなりますし、がんじがらめの現実設定で ダイナミック物語 の変化もさせづらいでしょう。 かといってあまりに分かりやすさ重視にしても、いかにも嘘くさくなって違和感を生じ、作品への 感情移入 を妨げてしまったり、作者が無知でデタラメを描いているように ネガティブ に受け取られてしまうこともあります。

 創作物におけるリアリティは、究極的には 作品 を面白くするための要素の一つに過ぎませんが、読書・視聴体験を非常に強く左右するものでもあるので、「どこまでリアリティを追及するか」「どこから分かりやすく省略したり改変するか」 に、頭を悩ませることとなります。 こうした グラデーション になって線が引きづらい境界線は、リアリティライン と呼ぶこともあります。 完全な空想上の世界 (例えば異世界などの ファンタジー の要素がある場合) は、架空世界における設定バランス と呼ぶこともあります。 創作におけるこのあたりのより詳しい解説は、これらの項目をご覧ください。

コンピュータ時代のリアリティ

 コンピュータ時代の現代においては、技術の発展により バーチャル なリアリティ (VR/ Virtual Reality/ 仮想現実) やオーグメンテッドリアリティ (AR/ Augmented Reality/ 拡張現実)、さらにはミクスト・リアリティ (MR/ Mixed Reality/ 複合現実)」 といった新しい形のリアリティ (エクステンデッド・リアリティ/ XR/ extended reality/ ) も出現しています。 これらはデジタル技術を用いて新しい体験を生み出すと同時に、一部はリアルとの境界線が曖昧になったり、リアルと見分けがつかないものも登場しています。

 デジタル世界におけるリアリティは、当初はおおむね客観的リアリティに重きが置かれ、 の数とか 解像度フレームレート の高さなど、視覚的な情報の制度や密度を高めることで実現されてきました。 本物らしく見えるとか動くが重視されてきたわけです。 その後は主観的な領域、さらには機能的なリアリティにも技術的な革新が及び、現実世界と融合したり、現実の世界を拡張して使いやすくしたり、絵や音だけでなく触角といったその他の人間の五感に包括するようになってきています。

Twitterこのエントリーをはてなブックマークに追加FacebookLINEGoogle+

関連する同人用語・オタ用語・ネット用語をチェック

(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2004年9月12日/ 項目の再構成です)
破線
トップページへページの先頭へ

トップ
 旧同人用語メイン
 同人用語辞典 収録語 項目一覧表
 同人おたく年表
 同人関連リンク
 付録・資料
サイトについて
書籍版について
リンク・引用・転載について
閲覧環境
サイトマップ
のんびりやってます
フッター