同じものをたくさん作れる 「印刷」
「印刷」(いんさつ) とは、インキをつけた印刷版を紙や布、金属などに当て、版面の文字や 絵 や写真などを転写、複製する事です。 「プリント」(Print) あるいは 「プリントアウト」、単に 「プリ」 とも呼びます。
版式 (凸版、凹版、平版、孔版) や製版 (機械、化学、電子) などにより様々な種類に分類出来ますが、同人 の世界、同人誌 などの制作で一般的なのは、平板印刷のひとつである オフセット印刷 でしょう。 この印刷方式で作られた本 (しばしば 印刷業者 に印刷と製本を頼んだ本と同じ意味になります) は、オフセット本 と呼びます。
またパソコンなどが普及する前に、自宅で簡単にできる孔版印刷用 アイテム として普及した、プリントゴッコ (プリゴ/ 理想科学工業/ 1977年〜2008年) による印刷もあります。 手作りの 同人便箋 や 同人封筒 作りに活用していた同人関係者も大勢いるでしょう。
「印刷」 と 「複写」 の違いって…?
印刷と複写 (いわゆるコピー) との違いですが、印刷は基本的に 「印刷版」 によって 新規 に、かつ大量に印刷物を作ることであるのに対し、複写は印刷版を持たず、またすでに存在する印刷物のみを文字通りコピーする方法と云えます。
ただしパソコンの普及で印刷版を持たず新規の印刷を行えるようになりましたし、業務用印刷でも、オンデマンド印刷 のように、版を持たないものがあります。 また複写のルーツでもあるカーボン紙を使ったビジネス文書の複写なども、青焼きなどの工学的な複写や、スキャナー (画像 の読み取り機) と一体化したトナー式コピー機の普及で、かなりその境界線があやふやになってきました。 近年ではコピー機も、デジタルデータから新規に直接プリントするサービスがコンビニなどでも当たり前になってきています。
オフセット印刷の他にもいろいろな印刷方法があります
ちなみに業務用の主な印刷方法には、この他に 「凸版印刷 (活版・ゴム版)」 や 「グラビア印刷」 があります。 「グラビア印刷」 は 「凹版印刷」 の一種で、スクリーン処理される為に更に高品位で美しい印刷が行えます。 ただし手間やコストが掛かるため、同人の世界ではほとんど使われていませんね。
シルク印刷 (シルクスクリーン) は孔版印刷の一種で、名称の通り、印刷版に空いた孔 (穴) から、インキを通して印刷します。 凸版や凹版のように 「転写」 するのではなく、インキを直接、版を通して印刷することから、耐久性に劣り、大部数を印刷するような使い方には不向きです。
また 「シルク」(絹) という名称がついているのは、かつて印刷にシルクの布を使い、布地の網目を利用してインキを通していたからです (現在は、ポリエステルの一種のテトロンや、金属製の メッシュ などを使うケースもあります)。 耐久性上、小部数の印刷で使われるケースが大半ですが、版自体も非常に安価なので、多品種の少量印刷に適している印刷となります。
なおガリ版印刷 (謄写版印刷) とか、前述したプリントゴッコなども、これと原理的には同じ印刷方法となります。
印刷のざっくり歴史
一般に 「印刷の発明」 と云うと、ドイツの金細工師ヨハネス・グーテンベルクが1450年頃に金属製の活字とそれを用いた印刷機とともに、活版印刷の 開発 に成功したことを指します。 1455年には世界初の活字印刷本となる 「42行聖書」(グーテンベルク聖書) を出版しました。 活字の組み合わせにより様々な文書を安価に大量印刷することができる印刷技術の登場は、それまで高価だった本を比較的身近な存在とし、知識や情報の大量・高速な伝達を促し、学問の発展に寄与したばかりでなく、ルネサンスといった文化へも多大な貢献をしたと考えられています。
ただし印刷自体はそれ以前から存在し、木版によるもの、「印」 すなわち判子のような印刷版で印刷する技術はもっと時代を遡ります。 書物の印刷に関しては、東アジアで2世紀頃に中国で紙の発明と製造が始まり、7世紀頃には木版による印刷が行われるようになっています。 印刷されたのは主に経典といった宗教関連の書物で、中国文明の黄金期とも呼ばれる唐代 (618年〜907年) に木版印刷された大乗仏教の経典 「金剛般若波羅蜜経」(868年) が現存しています。 完成度が極めて高く高品質な印刷がされており、この経典が制作されたはるか以前から優れた木版印刷技術が確立していたことが伺えます。
日本においては奈良時代となる764年から770年に作られた 「百万塔陀羅尼」 があります。 仏教の宝塔に収めるための経典の巻物で、百万の塔とともに100万枚が刷られたとされ、制作年代が明確で現存する印刷物としては日本はもちろん世界最古のものとされています。 また100万枚という刷り数も空前で、ネタ として日本初のミリオンセラーなどと呼ばれることもあります。 木版でこれほどの枚数を印刷することは困難で、大量の同型木版を使ったか、もしかしたら金属製の活版を用いたものではないかとの説もあります。
また日本においては 多色刷り (木版画の多色摺り) で特筆すべき存在があります。 それは浮世絵や錦絵などで、一般の多色摺りが2つか3つ程度の 色 (と同じ数だけの木版) を使って印刷するのに対し、4色以上、時には十数色もの色を使って摺るもので、こんにちの目で見ても贅沢すぎる存在だと云えます。 またこうした技術を使って宗教関連の高価な書物を摺るのではなく、庶民向けの安価な娯楽用の 作品 を創るのも歴史的に見て非常に珍しいケースと云えます。
その美麗な浮世絵や錦絵は、斬新な構図や優れたデッサン力、光だけでなく時間も描写する表現力や扱う テーマ の豊かさなどから欧米に伝わると大きなセンセーションを巻き起こし、ジャポニズムと呼ばれる流行が起こることとなりました。
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○ 本の部位の名称 ○ 減色時の色数サンプル ○ ダブルトーンによる色調サンプル
