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パラサイトシングル

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「若者叩き」 として流行した 「パラサイトシングル」

パラサイト・シングルの時代
パラサイト・シングルの時代
筑摩書房/ 山田昌弘

 「パラサイトシングル」 とは、親元で生活する独身の若者のことです。 「Parasite」(親元・実家に寄生する)「Single」(未婚者) となります。 「無職」 の場合もありますが、多くの場合は就業している社会人を指します。

 1999年10月20日に発売された書籍 「パラサイト・シングルの時代」(筑摩書房/ 山田昌弘氏) で提唱され、マスコミが 「衣食住の大半を親に頼り、将来をまるで考えず遊びほうけている若者」「親元に寄生する無職もしくは低賃金の非正規雇用で甘ったれた若者」「それを許す子離れできないダメ親」 への批判の形でこぞって使うようになり定着しました。

 なお 「パラサイト」(寄生) と云う言葉は、SF・ホラー作家、瀬名秀明の1995年のSFホラー小説、「パラサイト・イヴ」 で使われ、1997年2月に東宝系で映画化され大ヒットしたことなどもあり、この書籍が刊行された頃にはある種の流行語のような扱いになっていました (「パラサイト○○の実態」 のような雑誌やテレビの特集が多数出ていました)。

 「パラサイト・イヴ」 は、「細胞内のミトコンドリアが反乱をおこす」 という内容のお話ですが、これが転じて、「宿主に寄生して反乱を起こし、人や社会を脅かす」 という文脈で、罵倒語として流布。 例えば 「パラサイト妻」 とか 「パラサイト彼氏」 などと転用され、「他人に頼りきりの情けないヤツ」「迷惑なマザコン男」「ダメなヒモ人間」 などを嘲笑し揶揄する用語としても使われていました。

一時期、盛んに使われたものの、徹底した批判を受けて死語化

 「パラサイト・シングルの時代」 で提唱された 「パラサイトシングル」 は、一時期マスコミの 「甘ったれた若者批判」 にこぞって使われ大きな話題となりました。 とりわけ おたく な若者への当てこすりは、相当なものがありました。 一人前の大人や社会人なら当然担うべき責任や苦労から逃げ回り、一人住まいもろくにできず、アニメゲーム にうつつを抜かし、稼いだお金を自分の刹那的な趣味にばかり使う若者は良くないと云う訳です。

 その主な内容は、「親元にいつまでも居座って一人立ちできない未熟な若者」「不動産、耐久消費財 (冷蔵庫や洗濯機、テレビなど) の需要が低迷し、景気を悪化させる原因のひとつ」「親離れできない子供、子離れできない親がどんどん増え、社会が停滞する」「その数は増え続け、いまや 1,000万人にも達し、社会が彼らに侵食されている」「晩婚化・少子高齢化の原因」 といったものでした。

 しかしあまりの時代錯誤と所得格差問題などへの現状誤認が定義の中に満載で、しかも差別的なニュアンスもあるとして徹底した批判にさらされ、2000年代に入ってしばらくすると、徐々にマスコミなどでも表立って使える言葉ではなくなっていきました。

 「昔のように子沢山で、跡継ぎ問題などで必要に迫られ子供は出稼ぎ・独立の時代ならともかく、少子高齢化で一人っ子が多い現代に当てはめるのは無理だ」「原因と結果が反対になっている」「バブル崩壊後の不景気に、子供を独立させて家賃を2重に払うメリットがあるのか」「親一人子一人の家庭で介護などで親元に住まざるを得ない人も大勢いる」 との声は、常識的に考えれば当然の批判でしょう。

 一人っ子が増え、またバブル崩壊後の就職氷河期に派遣などの非正規雇用に就かざるを得なかった年収 100万円〜200万円程度の若者 (女性がたいへん多かった) を、戦後から高度経済成長期の正社員の若者、それも兄弟が多く実家を継げず、世帯課税問題への対応もあり、自分で食い扶持を開拓する必要に迫られた次男三男の多かった世代と同一に見て 「独立しろ」「一人住まいしろ」「物をたくさん買って景気を支えろ」 と叫ぶのは、さすがに無理があります。

 「衣食住の全てを親に頼り、海外旅行や娯楽に興じブランド品を買いあさる、リッチで甘ったれた寄生者」 など、1,000万人全体からみたら、それこそごくごくわずかの特例的な人物像でしょう。

 ベビーブーム世代が親となった時、第二次ベビーブームが生まれましたが、その第二次ベビーブーム世代が親となった時、第三次ベビーブームは起こりませんでした。 結婚し子供を産み育てるには安定した経済力が必要です。 若者が甘ったれているからではなく、若者や個々人が自力でどうにもできない企業や国の政策と、その結果による世の中の仕組みが誤っていたのが原因でしょう。 国民や人間は社会を構成し成り立たせる基礎・参加者であり、子供が生まれるというのは、その参加者が増えることです。 このままでは日本の人口は急速に減り続け、社会全体が縮小し逼迫し、そのしわ寄せは弱者に向かうようになるでしょう。 高齢化がますます進む中、氷河期世代への無為無策を正当化したいわゆる 「自己責任論」 は、取り返しのつかない愚かな判断だと思います。

大手メディアの想定顧客層が高齢化する中、若者批判が横行

 この 「パラサイト・シングルの時代」 が出された 1999年に 「氷河期」 は底を打ち、新卒の有効求人倍率は 0.39 となっていました。 極論すれば大学を出ても 10人のうち3人分か4人分しか新しい社員の枠がない時代だった訳です (翌2000年の内定率は 91.1%)。

 人生一度の 「新卒カード」 をみすみす失い、食べるためにやむにやまれず自立が不可能な低賃金のフリーターや派遣になったのを、自己責任だ、仕事は選ばなければいくらでもあると原因の全てを若者に押し付け、「しっかりしろ」「甘ったれるな」「お前は負け組だ」 と云われても困ってしまうでしょう。

 その後、ニート という、「働けないのではなく、働かないのだ」 とする若年層叩きのためのレッテルが新たに生まれ使われるようになったことから、「パラサイトシングル」 なる 「珍語」 は、現在はほとんど死語の扱いともなっています。 しかし大手マスコミ、テレビや新聞などの大手メディアの中心顧客が高齢化する中、「今時の若い者は」 という高齢者の 「気分」 に迎合する若者叩きの言葉は、「凶悪化する若者」(実際は若者の犯罪率は下がり続けている) の乱発とか 「嫌消費」「若者の○○離れ」 など、新しいものも次々に作られています。

 なお 「パラサイト・シングル」 を提唱した山田昌弘氏はその後、「近年、若者の雇用が不安定化し、また、かつてのパラサイト・シングルも30歳代になり、将来に不安を感じる人が増えている」 とした上で、「親同居未婚者が必ずしも経済的に恵まれているわけではなく、パラサイト・シングル現象にも陰りが見えている」 と軌道修正を行いつつ、表現を和らげています。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2004年8月10日)
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