同人用語の基礎知識

おたく/ オタク/ Otaku

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「おたく」 の語源、由来はわりとあっけなく、
しかもかなり救いのない蔑称だったんですけど…

 「おたく」 とは、アニメやマンガ、ゲームなどに強い興味と関心と、しばしば深い知識と造詣を持つ、独特な 「趣味人」 に対する俗称のひとつです。

 アニメファンなどが人と話をする際、相手を名前でなく 「おたくさぁ」 などと呼んでいたことから、1983年、ロリコンマンガ誌 「漫画ぶりっこ」(大塚英志編集長) 6月〜8月号のコラムで評論家の中森明夫氏がそうした人々を 「おたく」 と名付け、活字化したのが最初とされています (「『おたく』 研究 街には 『おたく』 がいっぱい」 がそのコラムのタイトル)。

 その後 「オタク」 や 「お宅」、「オタッキー」、「おたく族」 など、他の雑誌、メディアによってどんどん呼び名のバリエーションが膨らんで行きましたが、最初は 「おたく」 でした (最近では 「アキバ系」 や 「A BOY (エーボーイ)」 などとも)。

「おたく」(オタク) 名称誕生

 ところで当時、そうした人たちが話相手を 「おたく」 と呼んでいたのには訳があり、雑誌に採り上げられる前年より放映された人気アニメ 「超時空要塞マクロス」 (1982年10月3日〜83年6月26日放映/ スタジオぬえ) 内にて、主人公一条輝が他人を指す際に使っていた言葉がまさしく 「おたく」 であり、これをまねるファンが多かったとの事実があります。 転じて、純粋なSFファンなどからはやや敬遠されていた、これらSFチックアニメの熱烈なファンに対する、一種の侮蔑的な呼称 (蔑称、卑称) でもありました。

 「おたく」 には、二人称として相手の家・家庭・所属する会社・組織などを敬っていう語としての本来的な意味があります。 同人イベント会場などに集う人は、「同人サークル」 関係者であるケースが非常に多く (とくに当時は)、相手そのものと同時に所属サークルをも包括的に、しかも丁寧な云いまわしで指し示せる言葉として、流行りとしての面白みがあると共に実用的で便利だったのでしょう。

 と同時に、交わされる趣味の話の情報そのものが第一義的な目的で、話をしている相手自体の私生活には踏み込まない、こちらも踏み込まれたくない (したがって名前すら知らず、また知ろうともしない意味で) 「おたく」 という言葉は便利だったのだと思います。 まぁ 「お前」 だの 「あんた」、「君」 だのでも代用可能ですが、年齢もバラバラで相手が上か下かもわからない状態では、ちょっとしっくりこなかったのだと思います。

 しかしこうした推移やバックボーンを知らない人から見たら、お上品な女性言葉としてのイメージの強い 「おたく」 を、若い女性 (当時は現在とは比べ物にならない程、同人の世界は女性のものでした) や、さらに男性までが使っているのを見て、非常に奇異に感じ、印象的であったのだと思います。 旧来のSFファンらの印象もあり、それらが合致してイメージとなったのでしょう。 「おたく」 誕生の語源、ルーツは、こんなところにありそうですね。

 元々は蔑称であったのですが、こうしたレッテルを面白がって使うのは若者の習性ですし、また一部マスコミが 「マニア」 と同義語として扱ったことから、慣用句として一般にも広く普及しました (ただしここまで広く一般化した直接の原因は、1989年のある不快な連続殺人事件の犯人逮捕がキッカケとなっていますが…)。

 本来的な意味、定義では、アニメ・マンガやゲーム、特撮などの熱心なファン、及び2次元ロリ・「ロリコン」 ファンで、やや対人関係に難がある人々を指した言葉です。 なお 「お宅」 と書かれた事があったせいか、「インドアな趣味の人」 と捉える人もたまにいますが、語源や定義の点では全くの誤りです。

そして 「おたく」 は時代を読み解くキーワードに…

 ところで 「おたく」 に関しては、ある共通した見た目の特徴、行動パターン、好みや性格などのイメージがあります。 アニメ絵のTシャツを着た小太り (「横おたく」、「おたく横」 などとも)、もしくは痩せぎす色白の長髪メガネ (同じく 「縦おたく」、「おたく縦」 とも) と云った容姿を持ち、アニメ絵の紙袋などを手に持ち、アニメキャラが好きで性格は根暗、興味のないことにはまるで関心を示さず、すぐ感情的になる…ってなところが、その代表でしょうか。

 いわゆる対義語として 「イケメン」 ってのが当てはまるらしいので、もっぱら見た目、容姿にその特徴を見ることが出来るのかも知れません。 また 「アキバ系」 とも別称されるようになると、「アキバ体型」 として、その身なりや体型を揶揄する論調もマスコミを中心によく見かけるようになっています。

 もとよりこうした紋切り型のイメージで全てを語ることは出来ませんし、この手の多くのネーミングの例に漏れず出自が雑誌のコラムであったことから、読み物としてよりコミカルな面を最初から強調しすぎているきらいもあります。 ただこうした、現在ではサブカルチャーの中心に位置するような大きな人のカテゴリを、「昭和一桁」 とか 「団塊の世代」 とかのように一言で定義した点には、「画一的で差別的な負の記号として流通・定着する」 と云った危険も伴いますが、大きな意義もあったと思います。

20年を経てなお人々の会話を彩る 「おたく」

 「おたく」 と云う言葉が誕生してから 20数年、未だ死語になる事なく、依然として特定の人達に対して使われる用語として定着しています。 将来的にも、昭和から平成にかけて、あるいは20世紀から21世紀にかけて、我が国を読み解く重要なキーワードの1つとして、良くも悪くもずっと残って行く言葉だと云えるでしょう。

 ちなみにこの 「おたく」、米欧などでは 「Fan Boy」 なんて長らく呼ばれていましたが、最近ではそのままの 「Otaku」、中国でも 「御宅」(「誤打区」 とも) として通じるようですね。 しかもちょっと格好良いイメージで捉われることすらある、一定の条件を備えた若者の集団を示す言葉として近年定着しているようです。

 もちろんそこでの 「おたく」 の意味は、単なる消費者としての 「おたく」 に対する憧れではなく、自分の好きな分野で創造的な活躍をしている…事に対してなんですけどね。 この辺は、ちょっと美化されている気がするです… (大半のおたくは、単なる 「趣味に対しては限度を設けない消費者」 だものなぁ…)。

海外で人気が過熱する中で、拒否反応としての 「Wapanese」 などという言葉も

 また日本製のアニメやゲームなどが大人気になるにつれ、反発や拒否反応の形で、それに異常にはまり込んでいる人を、「Wapanese」(ワパニーズ/ White + Japanese/ 日本製アニメやマンガ、ゲームに熱中するあまり、日本人になりたい、あるいは本当の自分は日本人なのだ…などと思い込んだりする白人を揶揄するスラング) などと否定的に呼ぶケースもアメリカなどでは起こっているようです。 → 「アニヲタ」 → 「痛い」 → 「大きなお友達」

「電車男」、「萌えブーム」、変わり行く 「おたく」

 秋葉原の帰り、ある 「オタク」 が電車の中で酔っ払いから女性を救い、掲示板の住人らの励ましや叱咤激励を受けながら、その女性と結ばれてゆく逆シンデレラストーリー、あるいは美女と野獣現代版ともいえる 「電車男」。 実際は恋愛劇ではなく、名無しのネット住人同士の友情劇なんですが、巨大掲示板 「2ちゃんねる」 において、2004年3月14日から5月9日までにスレッドに書き込まれたレスを再構成したこのドラマは、書籍化され映画化 (2005年6月4日/ 東宝系)され、さらにフジテレビ系列でドラマ放映され、コミック化され舞台化もされる大ヒットとなりました。

電車男/ 中野独人
電車男/ 中野独人
 清涼飲料水のおまけにフィギュアが当たり前のようについたり、2003年11月に発売された 「萌える英単語 もえたん」 がベストセラーとなり、さらに一般に本格的に普及したネット上では、おたく的なテキストサイトが人気を得ていたなど、長年迫害されてきた 「おたく」 は、近年一挙に市民権を得た感があります。

 極めて日本的なサブカルの当事者である おたく は海外でも注目を浴び、海外へ留学した一般の大学生がやたらゲームやアニメの話を振られて歓心を買うべくおたくのフリをして 「なんちゃっておたく」 などと呼ばれたり、ちょっと一昔前には考えられない状況になっている感じです。

 その一方で、エロゲーなどは相変わらずマスコミなどでも叩かれていますし、幼女を狙った犯罪などが起これば、真っ先におたくらしき人物像が槍玉に挙げられ、「フィギュア萌え族(仮)」などという噴飯もののネーミングが生まれたのも2004年の11月の話です。 現在の自称他称おたくが、本来の意味の 「おたく」 かどうかはともかく、大きな存在となった 「おたく」 をただ一方的に叩くのではなく、何とか利用しよう、自分たちの社会に組み込もう、でもやっぱり叩きたい (叩きやすい)…という二律背反が際立ってきているような気もします。

 個人的には…おたくはおたく同士、閉じた世界でひっそりやってるので、無理に陽のあたる場所に引き出したり、必要以上に敵視して叩いたりしないで欲しいと思っているんですが…そのうち世間も飽きてくれますかね?

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 1999年4月6日)
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