あんたの音楽はリスペクトできねえ… 「ディスる」
「ディスる」「DISる」 とは、「否定する」「軽蔑する」「侮辱」 といった意味の言葉です。
元々は英語の否定形 「Dis」(否定する、「非」「不」 といった意味) とか、あるいは 「リスペクト」(Respect/ 敬意、尊敬) に接頭して反意となる 「Dis Respect」(リスペクトできない、軽蔑する) などから来た言葉で、アメリカの工業技術系の人たちや音楽産業の人たちが、他人や他人の 作品 などを批判する時に使う言葉が元となっています。 ちなみに 「Discussion」(ディスカッション/ 議論) との関係はありません。
ヒップホップの世界から日本のネットスラングへ… 「ディスる」
こうした言葉が2007年頃から日本で、とりわけ ネット である種の流行語のように広まったのは、Hip-Hop (ヒップホップ) 系で良く使われる音楽用語の転用としてでした。 自分以外のヒップホップアーティストの作品や音楽性などを批判、攻撃する際に使うようになったのですね。
こうした批判は健全なものであればその ジャンル が進歩し活性化するためには必要なものですが、しばしばその批判が的外れだったり、使う人が単なる自意識過剰のビッグマウス、大言壮語だったりして、「ディス」 による 「ケンカ」 を外野で面白おかしく見守ったり、それぞれのアーティストの ファン がそれをきっかけに論争や バトル を繰り広げる場合もあります。
こうした言葉を日本のヒップホップアーティストやラッパーが真似する形で 「ディスる」「ディスられた」 などと盛んに使うようになり、テレビ番組や音楽雑誌やインタビュー、それらを扱った マンガ などで触れられるようになり広まりました。
中でも2005年10月18日からTBS系列で放映されているバラエティ番組、「リンカーン」 の番組企画に2007年に登場し、その独特の存在感から大きな人気となった東京練馬のヒップホップ企画 「練マザファッカー」(練MOTHA FUCKERZ/ 当初は練馬のマザーファッカー (母親との近親相姦、転じて愚か者、クソ ッタレといった意味のアメリカのスラング)の意、後に事実上の グループ 化) らの影響が流行語となる直接的なきっかけ、元ネタ ともなっています。
ちなみに番組内では 「練マザファッカー」 の ボス として登場した個性的な D.O氏 (デンジャラス・オリジナル) の言葉として、他にも 「メーン」 などの言葉も流行しています。
なんか俺の顔みて通りすがりの女子高生がディスるんだけど
ネットの一部などでは、こうした人たち、あるいはそうした人たちから影響を受け真似る人たちを 「アメリカや他人の物まねをしているだけの 痛い やつらだ」 と批判的に見て揶揄する風潮があります。 また DQN、リア充 とも思える彼らの使う軽薄でおかしな和洋混交用語の 「ディスる」 をことさらに 掲示板 などで使うようになり、2007年以降はむしろ音楽などとは無関係なジャンルで頻繁に目にする言葉、ネットスラング の一種ともなっています。
ただし2007年頃は同人音楽なども大きく盛り上がっていた時期ですし、「DQN」 や 「リア充」 と敵対すると思われる おたく や 非モテ と呼ばれるような人にも、マニアというよりはオタクと呼べるような音楽フリークが大勢います。
「ニコニコ動画」 など、音楽を手軽にネットで楽しめる 動画共有サイト が現れ、様々なアレンジ楽曲や 歌ってみた などの音楽動画が一般にも急激に広まっていた時期でもありますし、そこでの人の交流や、そこから生じた単なる揶揄ではなく、本来の意味での言葉の混ざり合いはあったのかなとも思います。
実際、リア充街 のクラブで人気DJやってるような人も、結構アキバ系に興味を持っているケースが多いんですよね。 同人 の世界での 二次創作 の 概念 に強く共感したり、「パクり」 に強い否定的感情を持っていたり…ジャンルは違えども、そこは創作物を 趣味 としている人の共通点もあるのでしょう。 まぁそうでない人も結構いますがw
なお特定の キャラクター、および場合によってはそのファンなども積極的にディスる、ことさらに悪し様に扱うことを、とくに キャラヘイト、ヘイト表現 などと呼ぶ場合もあります。 また 「DISる」 に近い使われ方をして、否定することや否定する人を指す言葉に、アンチ などという言葉もあります。