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バイブル商法

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マルチ商法や霊感商法、ねずみ講で行われる 「バイブル商法」

 「バイブル商法」 とは、販売と宣伝・PR方法を巧みに分離し、違法販売を禁じる様々な法規制をすり抜けるために行われている悪徳商法特有の販売スタイル、仕組みのことです。

 よくあるケースはこうです。 まず 「○○成分が驚くほどガンに効く」「天然の○○成分でアトピーが治った」 などという書籍を著者や監修の形で中小の出版社から自費で出版します (ブランディング出版の一種 (後述します)、場合によってはその書籍の広告を 「たちまち重版」 などとうたって大手新聞社などに出稿する)。 次に成分○○の入った製品◇◇を別会社から販売します。 その後、その書籍を参考書として 「健康セミナー」 などを開き、成分○○の説明を行った後に、その○○が入った製品◇◇を参考出品の形で提示し、別の場所、もしくは後日に販売するような仕組みとなります。

 こうした書籍は 「バイブル本」 と呼ばれ、それを使うことからバイブル商法と呼ばれていますが、書籍そのものを自分たちで用意しない場合もあります。 その場合は、自分たちに都合のよい内容の書かれた書籍をピックアップしたり、新聞記事 (○○成分が体に良いとの調査結果が発表された…といった記事) などを恣意的に集めて抜粋し、それらの信頼性を製品の信頼性とすり替え、錯誤させて販売します。

法の網をかいくぐる悪質なバイブル商法

 なぜこのような周りくどい販売方法をするのかというと、健康食品や代替療法 (民間療法) の食品などは医薬品の認可を得ずに効能を宣伝して販売すると、薬事法に触れて違法となってしまうからです。 また製品が健康に効かなかった場合にも、「その書籍ではそう書いてあったから紹介しただけだ」 と言い逃れができるようになります。

 こうした方法は健康食品や天然化粧品などのマルチ商法や、新しく有利な投資法だとの触れ込みで行う ねずみ講 (無限連鎖講)、壺や掛け軸、仏壇などを高額で販売する悪徳新興宗教や霊感商法などでも法規制逃れ、責任逃れのためにしばしば使われています。 実態はほとんど違法なのに取り締まる法律が不十分で、かつ違法なのに 「書籍」 を通じて信頼される大手出版社やメディアをフル活用できてしまう点が、バイブル商法の持つ難しさです。

 どんなにめちゃくちゃな内容の書籍であっても、それを法律で規制するのは 表現の自由 によって極めて困難ですし、どれほど支離滅裂な話でも、それを信じて人に紹介するのも集まるのも、思想信条の自由や集会の自由で守られています。 騙し て製品を売れば詐欺ですが、製品それ自体の宣伝や販売はせず、その本を信じた人が勝手に製品を買っただけだとの建前を取ってしまうと、法律による規制は極めて難しくなるのですね。 もちろん実質的に両者が同一の会社や人間でしたら警察も取り締まりが可能になりますが、全くの別団体や会社だった場合には、追求も極めて難しくなるでしょう。

出版不況が続く中、バイブル本刊行に積極的な出版社も

 ネット の登場と普及により出版不況が訪れると、売り上げ低迷にあえぐ一部の出版社が、「ブランディング出版」 と称して怪しげな出版物の刊行に力を入れているケースもあります。 「中身のある本」 ではなく、企業や社団法人、その経営者や 運営者 らに、書籍を自らの箔づけや広告宣伝ツールとして利用するよう持ちかける出版形態です。 文字通り 「ブランディングのためだけの出版物」 という訳で、お金で買える偽学位と同じだとして、ディプロマミル出版と揶揄されることもあります。

 業界内には、かねてより書籍出版流通用の ISBNコードを付与した自費出版本を 「あなたの本が書店に並びます」「本屋にある普通の本と同じです」 などとうたって、高額な出版費用を貰って自費出版の代行を行うような、モラルの低いグレーゾーンの出版社などが多く存在していました (なお出版した本はその出版社が運営したり提携している書店に数日間のみ形式的に並ぶだけで、全国の一般書店には当然並びません)。 ブランディング出版は、これを悪い意味で発展させた出版ビジネスだとも云えるでしょう。

 自費出版代行業は 自己顕示欲 の強い著者の 「本屋に並ぶ本を出したい」 という願望や 承認欲求 に沿うものでもあり、それが 「本を出すと云う夢」 を満たすだけなら、錯誤狙いのあざとい商売だとは思いますがさほど目くじらを立てるほどのものでもないでしょう。 しかしブランディング出版の場合は、出版社がこれまで築き上げてきた 「書籍の権威性」 や一般社会に根強い 「書籍への信頼性」 を詐欺やそれに近い行為のために悪用し、他でもない出版社が自ら棄損するものだとも云えます。 とくにそれが健康被害や偏った思想、カルトや反社会的活動を賞賛し擁護する内容だった場合、「言論の自由はあるけども、被害の責任は負えますか」 という当たり前の疑問が生じるものでしょう。

ネットを利用したバイブル商法 (サクラ商法) も増加

 一方ネットの方でも、ブログ とECサイト (ネットショッピングサイト) が連携した 通販 などの形で行わるバイブル商法もあります。 善意の第三者が作ったかのような 「○○でガンが治った」 などの解説ブログや体験談サイトをたくさん作り、そこから別サイトのECサイトに飛ばして販売する方法です。

 どちらも同じ業者が作っている 自作自演 の場合もあれば、高額の報酬をつけ、一部のモラルのないアフィリエイター (アフィリエイト を使って広告収入を得ている人) がやらせのブログをたくさん作って集客している場合もあります。

 こうした広告は ステルス・マーケティング (ステマ)バイラル・マーケティング (隠れて行う広告、感染力の高い広告) とも呼ばれています。 2000年代中頃からは、さらに mixi や Twitter、Facebook などといった ソーシャル系 (SNS) のサービスとも緊密に連携して、販売を行うケースも増えています。

家族や信頼できる友人に相談して、騙されないようにしましょう

 どれほど魅力的な情報があっても鵜呑みにせず、反対意見にもきちんと目を通すなり、家族や信頼できる友人に相談するなり、情報をしっかり見極めるための努力をし、騙されて大切なお金を無駄にしないようにしましょう。 相手は騙しのプロです。 「私は用心深いから大丈夫だ」「意識が高い から騙されない」 などと思っている人ほど危険です。 とくに健康に関することや金銭問題、精神的なストレスに関することは、そうした悩みを持っている時点で、自分自身の判断力が著しく落ちているとの認識が大切です。

 また 病気 を治す、健康になるなどの健康食品・代替治療には、身体に極めて有害な危険性を持つものもあります。 あるいは商品そのものに有害性がなくとも、それに頼ることでまともな治療を放棄することになったりして、治るはずだった病気が手遅れになってしまったり、医者や家族との信頼関係を損ね、人生を狂わせてしまう場合もあります。 こうなると、騙されて取られたお金だけの問題ではなくなってしまいます。

 少数の人の意見を絶対だと思わないこと、耳に痛い意見にも汲むべき点はないか落ち着いて考えてみること、なるべく多くの意見を聴き、それらをきちんと整理して、時間をかけて検討すること。 こういった健全な懐疑心が、自分や家族、友人の健康や財産を守るためには大切なのでしょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2006年11月9日)
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