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メディア・リテラシー/ Media Literacy

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受信者・発信者、ともに持つべき 「メディア・リテラシー」

 「メディア・リテラシー」(Media Literacy) とは、情報メディア、媒体 (メディア/ Media) を自ら主体的、積極的に読み書きし、活用する能力 (リテラシー/ Literacy) のことです。

 具体的には様々なメディア (新聞や雑誌や書籍、テレビやラジオ、ネットニュースや ブログ掲示板、口コミなどの情報) を受け取り、その中の情報を取捨択一して正しく判断し、自分に必要で有益な情報として活用したり、それらの媒体を使って外部に情報を発信することができる能力、スキルとなります。

 日本の場合、既存の情報メディア (公的機関の発表や、新聞やテレビなどマスメディアの報道など) の規模や影響力、寡占が先進国と比べてもとても強く、またメディア相互の健全な監視能力も機能しているとは云えません。 さらに一般市民の側が情報を発信する仕組みや機会があまりに少なかったこともあり、もっぱら 「国民や一般市民が国家や大企業、既存情報メディアの発する情報を正しく判断し、真偽を見抜く能力」 といった文脈で語られるケースが多くなっています。

 インターネット が登場してからの 「メディアリテラシー」 の扱われ方も、「新聞やテレビの嘘を見抜く、暴く」 のような意味で語られるケースがとても多くなっています。 掲示板 2ちゃんねる 管理人ひろゆき氏の、2000年5月3日に発生した西鉄バスジャック事件の際のテレビ出演時のコメント、「うそはうそであると見抜ける人でないと (掲示板を使うのは) 難しい」、というのが、掲示板に限らず、メディアの情報に触れる時の心得、「メディア・リテラシー」 の必要性を分かりやすく表現した最たるものかも知れません。

「メディア・リテラシー」 概念の提唱と、その広がり

HOW TO WATCH TV NEWS
HOW TO WATCH TV NEWS
Neil Postman 著

 本来の 「メディア・リテラシー」 の考え方には 「読み書き」 が含まれますから、単にメディア情報に触れる一般人 (受信者) だけではなく、発信者 (公的機関の広報担当や新聞やテレビなどマスメディア側の人、組織) の 「メディア・リテラシー」 こそが問題となるはずです。

 しかし日本の場合、そうした立場の組織、人たちが、既得権や記者クラブ制度など不公平で不明朗な仕組みを持って譲らないことから、あまり取り上げられることがないようです。 「大本営発表」「報道管制」 などと揶揄されることもありますが、要するに 「国やマスコミに公平で客観的で正しい情報発信を期待するよりも、彼らの嘘に騙されない能力を個々人が身に着ける方が早いし現実的だ」 というわけですね。

 概念としては、「メディア論」 の1つの カテゴリ として、しばしば 「プロパガンダ」(情報操作や情報隠蔽) などに対して立ち向かう情報利用者の 「心構え」「マナー」「技術」 などの総称として、欧米のメディア論、メディア教育の ジャンル で識者らによって提唱されました。

 とりわけアメリカの学者、作家の ニール・ポストマン (Neil Postman/ 1931年〜2003年/ 「HOW TO WATCH TV NEWS」(「TVニュース 七つの大罪 -なぜ、見れば見るほど罠にはまるのか」、「The Disappearance of Childhood」(子どもはもういない) などが有名) の主張や、ハーバード大学教授で、いわゆる 「メディア・リテラシー教育」 を最初に提唱した ルネイ・ホッブズ (Renee Hobbs) らの著作や運動などによって、この考え方が系統的に整理され、またその考え方や意義が広まりました。

「メディア・リテラシー」 対義語は?

 なお対義語は、「メディア・イリテラシー」(Media Illiteracy/ メディアに対して習熟度が足りず無学、無教養、読み書きできない人 (文盲) などとなりますが、日本では識字率が高く、またその対義語である 「文盲」「識字障害」 に差別的ニュアンスがあるとしてあまり使われず、「メディア・イリテラシー」 という言葉もほとんど使われていません (筆者も日本のある程度公的な文書などでこの言葉を見たことが、ほとんどありません)。

 したがって、「メディア・イリテラシー」 ではなく、もっぱら 「メディア・リテラシーがない」「非メディア・リテラシー」 なんて面倒な呼び方をするケースが多く、あまり分かりやすい対義語は普及していないようです。

 また本来の意味とは離れて、「マスコミなどの情報にだまされやすい人」 といった意味としても使われるようになっている 情報弱者 あるいは スイーツ(笑) などが、しばしば 「対義語」 として使われたりします。 逆にメディアの側 (発信者) の場合は、「大本営発表」 とか 「歪曲、捏造報道」(を生み出す体質) などが、「メディア・リテラシーのない情報、あるいはその発信者」 の意味でしばしば使われます。

 IT (Information Technology) が声高に叫ばれ情報の量も早さも加速度的に膨張している中、より客観的で正しい情報を数多くのノイズと分離して集積、判断するのは、現代人にとって生活を左右する、大切な能力と云えるかも知れません。

 またマスコミや ネット などの誤った報道、情報によって生活が破壊される人 (恣意的な食品会社へのバッシング、「メディアスクラム」(多数のマスコミメディアがタッグを組んだかのように同じ論調で激しくバッシングする) やネット上の誹謗中傷に対抗し、ネットなどを通じて正しい情報、マスコミへの反論を発信する技術、能力なども近年注目が集まっています (それ以前には、せいぜい裁判でくらいしか闘えなかったのが、ネット社会となり、メディアとして言論で反論することも可能になってきています)。

正しい情報、その 「正しさ」 とは? 教育の難しさ

メディア・リテラシーって何!?
メディア・リテラシーって何!?

 情報の 「正しさ」 は、とても難しい問題です。 それは 「正しさ」 といったものは物の見方、立場によって変わってきてしまうからです。 全く同じものが Aにとっては正しくても、Bにとってはそうではないかも知れません。

 そこで 「正しい」 かどうか以前の大前提として、「それを判断するための情報、ありのままの情報を、客観的に公平な立場で伝える」「受け取る」 必要があります。

 その上で自分が自分の立場を踏まえて 「これは正しい」「これは間違っている」 と判断すること、それこそが 「メディア・リテラシー」 の根本といって良いでしょう。

 ただしこの 「客観的で公平な情報」「過不足のない情報」 を得るのが、とても難しかったりします。 白を黒と伝えるような 「まるっきりのデタラメ」 なら、あるいは簡単に 「嘘」 を見抜けるかも知れません。 しかし実際は、一方の側だけ、片方だけの情報をひたすら流している場合もあります。 伝わってこない情報は能動的に探さないと見つけられませんから、うっかりしていると 「逆の立場がある」 ことすら、見失うかも知れません。

 また99%が真実なのに、わずか1%だけ、嘘が混ざっているような場合もあります。

不偏不党・公正中立を標榜しながら、片方だけの意見を垂れ流す

読売ウイークリー「いったいどうなっているのか」
読売ウイークリーサイト 2005年11月12日
「いったいどうなっているのか」
宮崎勤事件の際、彼の部屋の取材で、
記者が現場に手をいれ意図的にオタクの
部屋のような 「演出」 をしたと告白、
その後この記事はすぐに削除された

 本来テレビや新聞などの許認可を得て情報配信しているマスコミなどは、AとB、両方の立場で情報を公平に伝えなくてはなりません (質、量、ともにです)。 テレビは放送法でそう定められていますし、新聞は新聞特例法 (日刊新聞紙法) や独禁法の特殊指定や再販制度維持、軽減税率指定の理由に、社会的な意義や公器の性格を持つものだからとして自ら説明しています。

 それができないなら免許や特殊指定を返上するか、「私はAの立場です」「私はBを支持しています」 と、自分の立ち位置を明確にきちんと表明しなくてはなりません。 ついでに云えば、イベントやアミューズメント施設を持つ自社ビルや関連企業施設の建っている地域をニュース報道などで好意的に伝える時は、広告であるとの告知は当たり前でしょう。

 ところが日本のマスコミなどは、口では 「不偏不党」「公平客観」 をうたっていながら、いざ情報やニュースを伝える時になると、偏った情報のみを流す傾向もあります。 それは政治や外交、国家観や歴史認識のようなイデオロギーの関係するものだけでなく、マンガアニメゲーム などに対するバッシングでも同様です。 事件が起こるたび、本来何の関係もない被疑者がたまたま所有していたゲームやマンガ、見ていたアニメなどを事細かにおどろおどろしい音楽を付けて報じる必要があるのでしょうか。

 より客観的で正確な情報を得るためには、複数のニュース (複数の新聞やテレビ、雑誌、書籍などを複合して視聴する) に当たってなるべく多くの立場からの情報を得る努力をする必要がありますが、必要性は感じていても、なかなか時間的に難しいのかも知れません。 その場合、「新聞やテレビなどのマスコミは、公平なフリをしているが実際は公平でもなんでもない」 と強く認識し、懐疑的な目でその情報を見る必要があるでしょう。 情報をただ受け取って、それに振り回されるだけでは、そのニュースや情報の本当の姿、事実が見えないかも知れません。

健全な懐疑心と冷静な分析力…情報に流されおぼれる人も多数…

 多くのマスコミでは、やたらとセンセーショナルな文言や扇情的な言葉を散りばめたり、テレビなどでは 「おどろおどろしい音楽」「ショッキングな効果音」「繰り返し繰り返し単純化した同じ主張を伝える」 などの方法で、受信者に一定の 「イメージ」 を植えつけるような報道をしています (この種のイメージ操作に繋がりかねない報道手法は、多くの先進国では禁止されています)。

 またマスコミ関係者の不祥事などは、他のマスコミも身内意識で庇ったり、触れないケースも多く、「マスコミの発信する情報にはごくごく一部の事実の断片しかない」 ってのは、強く意識する必要があるでしょう。 A新聞とB新聞で、云ってることがまるで正反対なんてことは、良くあることです。 それが社説やコラムならともかく、事実関係を客観的に伝えるニュースですら、そうなのですから。

 同じことは、マスコミではないネットの情報、あるいは 「口コミ」 や 「噂話」 などでも同様です。 たった一人の意見を、全てとは思わないこと、その意見なり噂なりの背後に、どういう意図があるのか想像してみる、実際に自分が見ていないことを、ごく一部の伝聞だけで見たような気になって判断すると危険。 ここらを意識するだけで、世の中の見方や印象は、だいぶ違ったものになるかも知れません。 口でいうほど楽ではない、難しい話なんですけどね。

 個人的には、正邪の判断を押し付けてくるような報道、ニュースは、多少割り引いてみるのが正しい見方だと思います。 ここらは、ある程度の年齢になると、自然と誰でも経験則で身につく能力だと思いますが、子供時代からの教育がとても大事なのかも知れません。

賢い受信者、誠実な発信者…難しい 「メディアリテラシー」

メディア報道を検証する団体も登場 「GoHoo」 マスコミ誤報検証・報道被害救済サイト
メディア報道を検証する団体も登場
「GoHoo」 マスコミ誤報検証・報道被害救済サイト

 筆者の場合、子供の頃に海外のラジオ番組を聴く 「BCL」 という趣味をやっていて、冷戦たけなわの頃でしたので、西側の国の放送局 (アメリカやイギリス、台湾や韓国など) と、東側の国の放送局 (ソ連や中国、北朝鮮など) と、同じニュースを伝える時のあまりの立場の違い、報道内容の違いに、ものすごく大きな示唆を受けました。

 アフガニスタン侵攻や、それをきっかけにしたモスクワオリンピックのボイコット、天安門、大韓航空機撃墜事件…いずれも両陣営で、まるで正反対の報道内容になっていました。 そしてそれらの国の報道内容と、日本の大手メディアの報道内容との、類似点と相違点、不自然な差異。 子供ながらに、「大人には大人の事情がある」 だから 「新聞やテレビ、ラジオを一方的に信用するわけにはいかない」 などと思っていたものでした。

 当時は身の回りの大人でも、新聞を複数紙読むとか、定期的に見ているニュース番組を切り替えるとか、「なるべく数多くの情報ソースからまんべんなく情報を入手する」 ことを励行している人が多くいました。 今はネットもありますから、こうした努力はきちんとした意識を持っていれば、実現するのは昔よりずっと敷居が低くなっているといってよいでしょう。 また人間は誰だって自分にとって都合の良い意見、耳触りのよい意見だけが耳に入りやすいものだ…との強い自戒も必要でしょう。 たくさんの情報を主体的に選べるネット時代だからこそ、自分が偏っていれば偏った情報ばかり集めまくることになるかも知れません。

 マスコミの情報にもネットの情報にも、嘘や捏造 (悪意のない単なる無知やミスもある) がたくさんあります。 この用語集にも間違いや、「価値観の違い」 による一方的な記述がおそらくたくさんあるはずです。 また筆者自身がそれに気づいていなかったりする場合はともかく、逆に気づいていて過剰に公平・中立への配慮をしすぎて 「反対論者のために書く」 といった状況になり、むしろ筆者自身の意見とは内容が反対になっている場合もあるかも知れません (自分と同じ意見の方から記述内容について強い反論を受けて気づいたりします…)。

 また感情の高まるまま、脊髄反応的に強い調子で文章を書くことは意識して避けるようにしているつもりですが、感情的になればなるほどそれを隠すために屁理屈を並べて論理的に破綻してしまったり、逆に極めて冷静に見ることができているからこそ、ちょっとお遊び的に感情的な言い回しをしてみたり (さらに冷静に見ることができているという自分の思い込みが、実は誤りだったり…)。 賢い受信者、誠実な発信者としてよりよい 「メディアリテラシー」 を身に着けたいものです。

 筆者も流されやすいタイプなんで、ものすごく自戒を込めてこの項目を書いてます…。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2002年11月8日)
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