孤独に耐え切れず頭の中に友達が… 「イマジナリー」
「イマジナリー〇〇」 とは、妄想 や空想上、架空のものを指して使う言葉です。 語源はそのまんまですが英語の imaginary です。 例えばイマジナリー彼女なら、現実には存在しない、その人の 脳内 にしかいない架空の彼女といった意味になります。 似たような言葉に、実在しない空気のような存在をあらわす エア〇〇 (エアプ) があります。 エア友達、みたいな感じですね。
この言葉が広く使われるようになった 元ネタ というかきっかけは、心理学や精神医学の世界で使われる 「イマジナリーコンパニオン」(IC/ Imaginary companion) や 「イマジナリーフレンド」(IF/ Imaginary friend) といった学術的な用語です。 「想像上の仲間」 や 「空想上の遊び友達」 などと訳されますが、小さい子供が孤独感を募らせたり精神的に不安定になる中で、心の中に架空の仲間や友達を作って心の安定を図ろうとしたり、自分の心に閉じこもり一人遊びで気を紛らわせるような状態を指します。 完全に心の中だけの存在の場合もあれば、有体物である人形やぬいぐるみなどをそう見なして、意思が疎通できる遊び相手とすることもあります。
医学的・学術的な 概念 や意味はともかく、「友達や彼女がいないから想像で補う」「人形やぬいぐるみに話しかける」 といった行為は多かれ少なかれ身に覚えのある人も多いですし、その寂しげな行為は 自虐的 あるいは他者への 煽り として使い勝手も良いため、その後は ネット を中心にある種の若者言葉としても使われるようになっています。
友達や彼女だけでなく、体の部位とかその他のものにも
なお更に進んだ使い方では、イマジナリーする対象が性器などにもおよび、例えば男性が 百合 や レズ の 物語 に触れて 「イマジナリーまんこが濡れる」、逆に女性が BL や ホモ のそれに触れて 「イマジナリーちんこが勃つ」 みたいな表現をすることもあります。 この場合は エア性器 と呼びます。 ちなみに妄想が実態化・現実化することは リアルブート、仮想の場合は バーチャル と呼びます。 仮想の彼女ならバーチャル彼女、アイドルなら バーチャルアイドル になります。
「サードマン」 や 「守護天使」、はたまた 「守護霊」 といった存在も
精神や自我が未熟・不安定な小さい子供に限らず、十分に理知的な大人が存在するはずがない想像上の誰か、あるいは人以外の何かによって自分を救ってくれたという話は昔から老若男女問わず事例がたくさんあります。
登山で荒天に遭うなどで遭難し途方に暮れると知らない登山者が現れて励ましてくれたり道案内してくれたり知恵を授けてくれたとか、あるいは森林で迷っていると狼やら鳥やらの動物が出口まで導いてくれたとか、事故に遭って生死の境をさまよった時に亡くなった祖父母やご先祖様が現れて 「まだこっちに来るのは早い」 などと諭されて命拾いした、みたいな話です。 時代や地域によっては天使が導いてくれたとか、光る何かが助けてくれたみたいな話もあります。
救ってくれるわけではなく、逆に邪悪な存在として記憶されることもあります。 いるはずがない誰かに導かれて歩いていてふと気が付くと目の前が断崖の端で、そのままついて歩いていたら危なかった、あっちの世界に引き込まれていたかも知れないみたいな話ですね。 険しい山や深い森、海や川、砂漠など、命の危険がある場所は、しばしばこの世とあの世の境界という見方がされます。 ただしいずれも最終的には命拾いはしている訳で、同じ現象を異なる視点で見ているだけという気もします。 これらは世界中で昔から類似の話がたくさんあり、現代ではともするとオカルトとか精神世界・スピリチュアルな神秘体験のくくりで語られます。 ある種の臨死体験も同様でしょう。
いずれも 死 や大きな困難に直面した時、極度の孤独や絶望に囚われた時、心が折れそうになった時に、いるはずがない何ものかが寄り添う伴走者として現れ導かれるという点は同じです。 これらは精神分析の世界では、「サードマン症候群」 などと呼ばれています。 この言葉は 1916年に探検家のアーネスト・シャクルトンと仲間が南極横断中に遭難した際の不思議な体験などを紹介したジョン・ガイガーさんの著作 「サードマン 奇跡の生還へ導く人」 によって広く知られるようになっています。
心に重大な危機が迫った時にそれを回避するシステムが心の中にあって、子供だろうが大人だろうがそれによる幻影や幻覚が生じるのだとしたら、そしてそれが進化の過程で生じたものなのだとしたら、なんとも人の心は不思議なものです。 またある意味で創作物を描く人にとって心の中で育まれた人物や キャラ による救済は別に特別なことでもなかったりもするので、空想しがちな自分の体験も踏まえて納得できる部分もあります。
![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
関連する同人用語・オタ用語・ネット用語をチェック
