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ライフハック/ Life Hack

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パソコンだけでなく仕事や日常生活もハッキング 「ライフハック」

Life Hacks: Tech Secrets of Overprolific Alpha Geeks
Social Software/ Life Hacks:
Tech Secrets of Overprolific Alpha Geeks
(2004年2月11日)

 「ライフハック」(Life Hack) とは、コンピュータ技術者やプログラマーなどの情報処理関連の業務に就いている人たちの、より生産的で効率よく快適に業務を行うための仕事術、テクニック、ノウハウといった意味の言葉です。

 そのような考え方を信奉し実践している人、新しいライフハックを編み出す人は、ライフハッカー (Life Hacks) と呼びます。

 元々はコンピュータ技術に精通した、いわゆるハッカーの文化から生まれた考え方、言葉です。 コンピュータやプログラムを解析し、問題点を洗い出し、より優れた方法を見つけてシステムを最適化するように、自分の仕事への取り組み方や生活様式、ひいては人生や社会のありようをも積極的に改善、最適化しよう、ハックしようとの考え方になります。

 こうした 概念 が提唱されたのは比較的最近で、2004年にアメリカで著名なハッカー、ダニー・オブライエン氏 (Danny O'Brien) がライフハッカーやライフハックといった表現を使って概念を提唱、それ以降急速に使われるようになり定着したのが定説となっています。 SE や PG といった業務は、しばしば 修羅場、デスマーチを伴う過酷で膨大な情報処理と仕事に悩まされますが、それらを効率よく、しかも快適に片付けて余暇を楽しもう、仕事も人生もエンジョイしようという訳です。

仕事術から生活の知恵、セルフモチベーションアップ術、便利ツールまで

 本来のライフハックは、パソコンやソフトウェア、ネット を自在に使いこなすテクニックや業務改善、及びその心構えといったものでした。 驚異的なスピードと生産性を誇るハッカー (ウィザード (Wizard) 、グル (Guru) や、急成長する IT 関連ベンチャーのカリスマ創業者の仕事術や発想法、成功哲学に学び、そのエッセンスを抽出する形で様々なライフハック方法が集められるようになりました。

 日本では2005年になってこうした言葉と概念が知られるようになり、その後は意味も 拡散。 「生活の知恵」「生活の裏技、小ネタ」 と呼ばれているような日常生活における些細な便利知識も次々に ネタ として取り込み、情報処理技術者の世界からはるかに離れて使われるようになったり、自己啓発や ポジティブ シンキングの実践、ニューソート (New Thought/ 光明思想、新思考) 運動といった、もっと広い カテゴリ にまで概念が及ぼす範囲が広がってもいます。

 これだけ見ると、何でもアリのちょっとした宗教やカルトじみたものを感じてしまいますが、仕事を効率よく 集中作業 で片付けて行く上で、一番大切なのは何より 「ヤル気、意欲」「モチベーション」 でしょうし、これはパソコンやプログラムにはない人間だけが持つ心の問題とも云えますから、これを高めるのはライフハックする上では当然の帰結、ごく自然で当たり前の考え方なのでしょう (逆に、コンピュータを使った業務でもっとも問題となるのは人間なので、人の手が極力タッチしないシステムを作るなどの考えもあります)。

 なお元々がハッカー文化から生じた言葉ですから、ハッキングに使う便利な道具、ツール類などに対する貪欲なまでの取り組みも大きな特徴でしょう。 ガジェット (Gadget) と呼ばれる便利ツール (情報端末や IT化された家電、便利なアイデアグッズなどの道具) の最新情報のやり取りも、ライフハックの世界においてはとても重要な位置を占めます。

 こうした 「業務を効率化する」「考え方やものの見方を変えて取り組んでみる」 といった話題は、ネットの ブログ でまとめられたり、「スラッシュドットジャパン」(スラド/ slashdot) で紹介されたり、「はてなブックマーク」(はてブ) など ソーシャル系ブックマークサービス共有 されたり、その後は言葉として話題となる中で書籍類なども数多く発売されています。

あふれるライフハック情報、しかし実践となると…?

Advanced/ W-ZERO3 [es]
スマートフォンの Advanced/ W-ZERO3 [es]
「おたく」 は、この手のおもちゃが大好き

 ところで、アメリカで 「夢は願えば必ず叶う」「努力や能力が足りないのではなく、単にやり方が悪いだけ」「悪いやり方を改め、よいやり方を身につければ潜在能力が引き出され成功する、夢が叶う」「その方法を、知りたくはありませんか?」 といった主張を持つ、いわゆる自己啓発のブームが起こったのは1990年代です (それ以前にもカーネギーやらナポレオン・ヒルやらサミュエル・スマイルズやらありますが)。

 その後この流れは日本にやってきて、「成功者から成功哲学を学べ」「より良い人生を歩むための隠されたノウハウを知ろう」 のような形で様々に広がりブームを作ります。 手帳 (メモ) とノウハウ、成功例をセットにするタイプのものは思考や夢を視覚化 (見える化) し、仕事やコミュニケーション、財テク、人生といった大きなくくりだけなく、例えば日常のダイエットやささやかな願望の実現にもアレンジされて出ています。

 「仕事術」 のようなものは、ライフハックという言葉が生まれる前からありましたし、情報や資料の整理術の指南書などは、日本ではビジネス書の枠を超えるほどのブームを時として起こし、昔からベストセラーランキングの常連となってもいます。 ツール類も、システム手帳が流行ったり、電子手帳が流行ったり、その他様々なガジェットが日本では大人気だったりもします。

 「ノウハウ」 と 「道具」 と 「成功事例」。 この組み合わせで 「今までと違う生き方」 を提示するやり方は、名前は様々に変わりながらも、「現状に満足できない人間」 にとって、いつの時代も、とても魅力的なものなのでしょう。

「ノウハウ」 と 「道具」 と 「成功事例」 の3点セットで夢を叶えろ!

 こうした3点セットを活用した自己啓発の最たるもの、究極の姿は、極論すれば 「宗教」 なのでしょうが (天は自ら助くる者を助く)、ライフハックや自己啓発の中には、一見科学的・医学的根拠があるかのように装い、実際は擬似科学、エセ科学なものであったり、場合によってはあからさまなオカルト、スピリチュアルの臭いがするカルトっぽいもの、マルチ商法などと直結しているようなものまであります。

 とくにマルチ商法と自己啓発はそもそもが切っても切れない関係なので (マルチ商法の前提が 「上を目指す下っ端」 が大勢いればいるほど上が儲かる仕組み)、考え方や関わってる人間などがほとんど同じだったりもします (後の 意識高い系 などもほとんど同じ系統でしょう)。 「より良く生きるにはどうしたらいいのか」「より良い社会とはどうあるべきか」 などの問いとその答えを求める姿は、良くも悪くも欲に根差し、これら 「いかがわしいもの」 に利用されやすいもの、あるいは根っこが同じものになるのでしょう。

 当たり前の話ですが、どれだけ素晴らしいライフハック情報があっても、どれだけ最新の優れたガジェットやお手本となる成功した偉人がいても、それが本当に正しいものなのか、正しいとしても自分に合うものを見つけそれを実践し、使いこなさなければ意味がありません。 また意味があったとして、それが他人の金儲けに利用されるだけでは虚しいでしょう。 さらにそれを自分だけが実践するのか、他人にまで半ば強引に勧めるべきものなのか。

陳腐化する 「◯◯のための◯◯の方法」 は揶揄の対象にも

 それはともかく、単なる生活の知恵的な湯飲み茶碗の茶渋を取る方法と、人生を幸せに生きていく、社会をより良くしていくという考え方が、同じ 「ライフハック」 にくくられることに、違和感を覚える人も少なくないでしょう。 また情報が溢れかえっては、ありがたみも薄れるものでしょう。

 2000年代も後半になると、あまりにありふれて陳腐な 「自分を変える30の方法」「仕事がうまくいく4つの要素」「今すぐやるべき10つのルール」 といった、「◯◯のための◯◯の方法」 的なタイトル勝負・既知情報の単なる寄せ集め、焼き直しのようなお手軽ライフハックノウハウは時として揶揄、嘲笑・侮蔑の対象ともなっています。 また自己啓発やマルチ商法などとの類似性や関係から、毛嫌いしている人も少なくない状況です。

 結果、アンチライフハック的な考え方が広がったり、ライフハック術の論者やライフハック情報を発信しているブロガーなどへの冷ややかな評価が盛り上がったり、時としてバッシングなども起こるようになっています。 こうしたタイトルの記事はネットで人気になりやすく目につくものの、何番煎じかわからないような テンプレート 的な内容の薄いエントリーで終わっているものも少なくないので、それがアクセス稼ぎ、アフィリエイト (さらには情報商材の販売、いかがわしいオンラインサロンへの勧誘) のためという目的も含め、余計に目障りに感じるのでしょう。

ライフハック、それは娯楽としての大人のファンタジーなのかも…

 かように変形し様々な要素と合成されているライフハックですが、数多くの優れたライフハック情報は、思わず目からウロコが落ちて膝をポンと叩きたくなるようなエッセンスに溢れ、人にもつい教えたくなる魅力に満ちています。

 長い目で見ると、過去の仕事術やライフハック情報、ノウハウの装いを変えただけだったり、その繰り返しや模倣だったりもするのですが、この種の情報をネットで配信する人たちは筆が立ち文章が面白い場合も少なくないため、「ライフハックするために情報を仕入れる」 のではなく、前述した 「いかがわしさ」 を含め、「ライフハックという、ちょっと知的でノンフィクションな ジャンル の読み物作品を楽しんでいる」 といった部分も、かなりあります。

 また読んだだけで満足してしまうというのは、大学受験などの時に参考書をズラリと本棚に並べると勉強した気になる、高揚感に満たされそれだけで何かを成し遂げた気がするのと基本的には同じでしょう。 ライフハック情報をせっせと読んで 「はてブ」 などのソーシャルブックマークサービスでシェアしただけでは、当たり前ですが仕事が早くなる訳でも、生活が充実する訳でもないでしょう (かなり 自虐的 な意見になっています…)。

 ライフハックのはるか以前から存在し、耳にタコができるほど染み付いている 「善は急げ」「急がば回れ」 なども、日常の業務に忙殺されてつい忘れてしまう毎日。 筆者 を含めほとんどの平凡な技術者や社会人にとっては、ライフハックとは 「こうなりたい自分の姿」 を夢見るための、ある種の現実逃避型の 「大人の ファンタジー」「娯楽」 なのかも知れません。

 子供の頃と違い、自分の手で岩から抜いたエクスカリバーを持ってお姫様を助けに行く物語ではあまりに幼稚すぎていまさら夢中にはなれないけれど、最新の モバイル 端末とライフハック術を駆使して上司 (中ボス) を打倒し困難なプロジェクトを叩きのめす物語なら、あるいはリアリティを感じ没頭できるし、娯楽じゃなく仕事のためという言い訳を自分にもできる…だってほら、あの有名なベンチャー企業の CEO だって、そうして成功したっていってるし…でもマルチはNG、みたいな。

あなたが脱ライフハックで成功するために今すぐ実践すべきたった3つの方法

 非生産的な行為をやめてライフハック的に生きるためには、

[1] 次から次へと手当たり次第に情報を得る時間を減らし、きちんと取捨択一して有益なもののみ実践する、[2] 使いこなせそうもないデジタル小物や三日坊主で終わる手帳などをむやみに買わない、[3] っていうか、ごたくはいいからとにかく手を動かせ、働け。 モチベーションなんざ、後からついてくるもんだ。

 …強い意思や高い目的意識以前に、これらが一番のライフハックなのかも知れません。

 これが、「あなたが脱ライフハックで成功するために今すぐ実践すべきたった3つの方法」 です (もちろんこれもファンタジーです…でも我が人生に悔いなし (キリッ)。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2006年2月10日)
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