同人用語の基礎知識

マウント/ マウントを取る

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自分が上がるか、相手を落とすか… 「マウント」

 「マウント」(Mount) とは、世間話や井戸端会議において、自分が周りの人や話し相手よりも優れている、格付けで優位に立っているとそれとなくアピールすることです。 直接相手と話している時に行われる場合もあれば、ネット掲示板 や Q&Aサイトなどのコミュニティの レス において行われる場合もあります。

マウンターが火花を散らす女子会
マウンターが火花を散らす女子会

 これらの行為を行うことは 「マウントを取る」「マウンティング」 と呼び、マウントしがちな人はマウンターとかクライマーと呼んだりもします。 語源は猿のマウンティング (猿山でボス猿を決める序列争い) からですが、格闘技におけるマウンティング (馬乗りになるマウントポジション) の影響だとする意見もあります。

 マウント行為を行う人の性別や年齢は問いませんが、一般的には男性より女性に多いともされ、この言葉自体もこうした行為を疎ましく思う女性が 「いるいるそんな人」 といった 「あるあるネタ」 の形で広く使い始めて定着したもののようです。

 マウント合戦が繰り広げられる場所としては、休憩時間における会社のオフィスや学校の教室、あるいは休憩所や給湯室、子供連れで訪れる近所の公園のベンチ、ランチ時の飲食店、同窓会などがよく挙げられます。 通常は友人知人や同僚・ご近所さんといった、同じような場所にいる似たような社会的ポジションの者同士でマウントし合うことになりますが、一方でネットにおいては全くレベルが異なる者のマッチングや偶発戦も行われ、無差別級・異種格闘戦と呼ばれることもあります。

 同窓会におけるマウント合戦は独特です。 同じ学校のクラスメイトだった昔の頃はともかく、卒業から十数年、数十年を経てそれぞれの社会的立場や境遇が大きく変わりがちなこともあり、通常戦や過去の延長戦はもちろん、立場入れ替わりによるある種の復讐戦が繰り広げられる場合もあります。 またそれを恐れて、生徒・学生時代に強者・スクールカースト上位だったものが多忙などを理由にリタイアするケースもあります。

 なおマウントの取り合いは1対1の2人だけで行われる場合もあれば、複数が相手になったり、周囲にギャラリー (オーディエンス) がいる状態で周りの人の目を強く意識したマウント合戦 (負けられない、後に引けない) となる場合もあります。

ネットにおけるマウントの聖地といえば 「発言小町」

 ネットにおいては、1999年10月から読売新聞オンラインが運営する女性向け掲示板サイト 「発言小町」 がマウント合戦の 聖地 としてつとに有名です。 恋愛や子育て、家族や職場の悩みなどを匿名で相談できる女性向け掲示板として国内最大のこのサイトは、全国屈指レベルの名だたる手練マウンターが集う夢のコロシアムとされ、日々華麗なドリームマッチが繰り広げられています。

 名勝負の数々や繰り出される妙技などはウォッチしている他の掲示板やコミュニティなどで折々にまとめられ論評されたり格付けがされており、場合によっては一定の ファン を持つスターマウンターも存在してたりします。 匿名掲示板であってもいつも同じ ハンドル固定ハンドル) を使用していて個人の識別が容易な場合もありますが、捨てハンドルによって匿名の海に紛れてルーキーマウンターを装っていても、独特な文体や内容、食いつきがちな話題などから古強者であるのが発覚するケースもあります。

 トップランクのマウンター同士の争いはそう起こるものではありませんが、捨てハンなどにより意図せず偶然に巡り合い、双方一歩も引かない闘いに発展したりすると、豪壮・燦爛たる技の応酬にプライドをかけた頂上決戦の風格が生じる場合もあります。

景気が悪いと生活が大変よね…うちも苦労してるわ…ちなみに夫の年収は3.000万円です

 マウントの取り方には色々ありますが、基本的にマウンティングは相手より自分が相対的にわずかでも上になりさえすれば良いので、自分を持ち上げるか相手を引きずり下ろすかのどちらか、あるいはその両方で行うことになるでしょう。

 自分を相手より持ち上げる、高い位置に押し上げるアピールでは、自分は相手より能力や スペック が高い、リア充 である、才能がある、幸せである、社会的地位が上であるといった言葉がそれにあたります。 逆に引きずり下ろすパターンでは、自分より相手を低い位置に押し下げるため、「こんなこともできないんだ」「あなたってそこがダメよね」「え?知らないの?」 などと上から目線で見下した言い方になるでしょう。

 またマウンティングのための ネタ は直接的な自分や相手の長所・短所だけに限りません。 例えば 「家がお金持ち」「イケメン の彼氏がいる」「夫が一流企業の正社員」「子供が名門校に通っている」「息子がテストでいい点を取った」 といった付随する属性で相手と優劣を比べたり、場合によっては単に特定タレントの ファン歴 が長いとか、ゲーム でちょっと レアキャラ やアイテムを持っているだけとか、休暇の旅行先や昨日の夕食がちょっと豪華なのを自慢してマウントの武器とする場合もあります。

 こうした行為に走りがちなのは、根拠のない自意識やプライドだけは高いが自己肯定感が低く承認欲求に飢えた性格の人だとするのが一般的です。 こうした性格の人はしばしば虚勢を張りがちだったり、ブランド品などを買いあさるなど、自分をより大きく見せたいという欲求が強いと考えられています。 ただし、あまりに高圧的・あからさまに見栄を張る場合はあまりマウントとは呼ばれないかもしれません (単なる見栄っ張り扱いになりがちです)。

自虐風自慢や当てこすりによる、いやらしいマウンティング

 これらマウントは、あからさまな自慢話の形を取ったり直接的に相手を罵倒するのではなく、自虐風自慢 になっていたり、当てこすり・さや当て・言外のほのめかしのような形を取り、一般的には怒るべきかどうかが分からないギリギリのラインをいやらしく攻める場合が多いものです。

 分かりやすい例えをするなら、自分が 「連休中は田舎の実家に帰るの」 と云えば、相手が 「田舎がある人はいいな〜あたしなんて生まれも育ちもず〜っと東京の世田谷だから便利で快適だけど連休中も変化がなくて、田舎でちょっと不自由な生活もしてみたい」 みたいな言い方です。 こんな言い方をされるくらいなら、はっきりと 「田舎って不便じゃん」 と云われた方がまだスッキリするでしょう。

 云われた方は 「あれ?これ自慢されてる?」「嫌味?」 と疑問は感じても断定はできず、でも棘のようなものは感じられちょっと良い気分がしません。 云ってる方も必ずしも悪気があるわけでもないのでしょうが、このような感じでちょくちょくと小さな自慢話を挟んできたり、こちらが大事に思っているものを貶されたりすると、言い返したい気持ちになるのも仕方のないところ。 黙っていると、いつのまにか上下の関係が固定化し、「あなたっていつもダメね」 と云われ続ける関係になってしまうかもしれません。

 適当に相手の話に相槌を打ちつつ、そのうちボロが出るのを待ってカウンターを仕掛ける、とぼけたふりをして過去の話との整合性をつつく、これだけは許せないと思う言い方や態度にはあえて強硬な態度で臨むなどの対策は、健全な関係を維持するためのメンテナンス、あるいは自分の精神衛生を保つためにも必要かもしれません。 それが友人知人なら縁を切れても、クラスメイトや同僚やご近所さんでは、なかなか関係を断ち切れませんから、まずは自分を第一に考えて行動するようにしましょう。

相手より下アピール? 倫理的にマウントを取ろうとする 「弱者マウント」

 なおマウントは基本的に相手の上に行くことですが、反対に形式的には相手より下だとのアピール・不幸自慢を指して使う場合もあります。 この場合はとくに 「弱者マウント」 と呼ぶ場合もあります。 例えば誰かが 「もう2年間も恋人がいない」 と愚痴をこぼしたら、「2年間なんて短いじゃん、私なんて年齢=恋人いない歴だよ」 と返すみたいな感じです。 これは相手を慰めているような云い方をしつつ実際は 「その程度で不幸のつもりか」「強者のくせしてくだらない愚痴をこぼすな、黙れ」 という強い弱者マウントの取り方となります。

 こうした 「愚痴や自虐ではない攻撃的な不幸自慢」 は自慢の対概念として普通に存在しますが、ネットの議論などで弱者アピール (主に人権関連の話題で使われるもので、何らかのマイノリティ (少数派) だったり、貧困だ、家庭環境に問題があった、心身に障害や病気がある、いじめや性犯罪などの被害に遭ったなどの不幸不遇をことさらにアピールすること) によって自説を有利にし、論敵の反論を封じて沈黙を強いたり倫理的にマウントを取ろうとする人たちが可視化されたことにより、強い揶揄の意味で使われるようになっています。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2014年5月11日)
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