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元は工業製品の仕様書… 「スペック」

 「スペック」(Spec) とは、「Specification」、すなわち工業製品・サービスの仕様やそれを書き留めた文書 (仕様書) など、要求される基本的な機能や性能、あるいは特性などを列挙した 「諸元表」 といったような意味の言葉です。

 本来は 「その工業製品やサービスを設計し生産・提供するなかで、個々の製品やサービスが必ず満たさなくてはならない要求事項」(最低限達しなくてはならない性能) の情報の集まりを指す言葉で、生産者側が実際に製品やサービスを作ったり、その品質を守るための指標とするものなんですね。

 しかし、これらの情報の一部が商品カタログや広告宣伝などで内容の紹介データとして明示され、一般ユーザーが購入をする際、他の類似商品との比較検討材料としたり、スペックの数値そのものに魅力を感じて購入するユーザーの存在などもあり、工業業界の専門用語を超えて一種独特な意味を持っている場合もあります。

「スペック」 の数値の信頼性

 スペックとしての自動車やオートバイなどのエンジン出力 (馬力) とか燃費、カメラや映像機器の解像度とかバッテリーの持ち時間、耐久性とか、あるいはパソコンの演算速度などは、ある一定の条件下でその能力、スペックが発揮できるというものですが、それが必ずしも購入したユーザーの一般的な利用環境とは合致しない場合もあります。 測定はその製品のメーカーを監督する官庁や業界団体などがルールを作って同一条件下で行いますが、その条件が異なると同じ性能や特性は発揮できないケースが多くなっているのですね。

 例えば自動車の 「燃費」 の測定には、自動車に積載する重量 (乗車人数)、エンジンの水温や油温、外気温、タイヤの空気圧や実走行するテストコースと走行速度、走行距離などが定められています。 自動車メーカー側はその条件下でもっとも良い数値がでるように設計・調整したり、試験を行いますから、条件がちょっと変わる (乗車人数や積載貨物が増える、加速や減速を繰り返す、速度を上げるなど) と、途端にカタログ上のスペック数値とはかけ離れた数値になってしまったりもします (逆にカタログ数値をオーバーする性能を出すような製品もありますが)。

 また大量生産される工業製品ならば、許容の範囲内とはいえ、個々の製品ごとに性能のバラつきなどもあるものです。 「当たり」「ハズレ」 があるんですね。 賢いユーザー、消費者としては、あまりスペックの数値だけを追い振り回されるのではなく、その製品によって自分が何をしたいのか、何を目的にその製品を買うのかを、じっくり検討するのが正しいやり方なのでしょう。

 もっとも、カタログに記載されたスペックを元に、「世界最高性能の製品を所有する」 という満足感もありますから、ここらはお財布と相談となるのでしょうけれど。

人間の性能とか経歴を履歴書的にまとめる時にも使われる 「スペック」

 この言葉は、車やオートバイ、家電製品やパソコンなどの工業製品における基本性能=スペックという使われ方が多いのですが、それが転じて、特定の人物の身体的な性能や特徴、その人間の履歴書的な経歴やプロフィール、社会的な ステータス などを、ある種のジョークとして 「スペック」 と呼ぶ場合もあります。 例えば 「俺のスペックは、21歳大学生 ♂、身長 171cm、体重 64Kg、○○風の イケメン」 なんて感じです。

 このような表現方法は、パソコンが普及し、パソコン通信 が広まって、ネット 上で様々な話をする中で自然発生的に使われるようになったものですが、それ以前にも工業製品の性能やスペックを人間に当てはめて表現するのはポピュラーでした (根性のある人を馬力があると呼んだり、大食漢を燃費が悪いと評したり)。 民生用、業務用 (特機)、あるいは軍事用問わず、工業製品を設計し作る技術者たちの間では、スペックを人間の能力やプロフィールに当てはめるのは、昔からシャレで使われていた言い回しなのでしょうね (戦前の文書などにも、技術者らの 「開発秘話」 のような手記で、同僚や友人を技術的なスペック風の内容で紹介するなんて記述を見かけます)。

 なおこれと同じ使い方をする言葉として、ゲームキャラクター 能力値を真似て使われるようになった 「ステータス」(Status) とか パラメータ (Parameter) などと呼ぶ場合もあります。 また一定の性別や年齢、高い学歴、家が裕福、容姿端麗などの好条件を、その他のパラメータ数値を上積みして全体として高い評価とする補正要素とする場合もあります。 この場合は、ステータス補正 とか、美男子なら 「イケメン補正」 などと呼びます。

 さらに全体的にバランスが取れておらず、特定の能力、パラメータのみに力が集中している場合 (例えば容姿は最悪、頭も悪いけれど、体力があり健康だけには自信がある) などという場合には、全振り などと呼ぶ場合もあります。

「高スペック」「低スペック」、さらには 「スペック厨」…さまざまな派生用語

 「高スペック」(ハイスペック) とは、その製品なりがライバル製品との比較や、複数の同一製品内の平均値に比べ、数値上高いスペックを持っているとの意味です。 「低スペック」(ロースペック) はその反対です。

 あくまで他者と比べた 「相対値」 の話なので、どこからが 「高スペック」 でどこからが 「低スペック」 なのかはケースバイケースです。 また用途によって求められる性能も違いますから、使う人の印象、主観が大きい言葉と云えます。 転じて、人間に当てはめる場合、背が高いとか学歴が高い、家が資産家であるなどの人物特徴を、「高スペック」 などと呼ぶ場合もあります。

 一方 「スペック厨」「高スペック厨」 とは、スペックの数値などに異常に執着する人を、厨房 (幼稚な考えをする非常識な人) の扱いをしてくさす表現となります。 まあ商品を購入する際に、どこに価値を見出して決断するかは個々人の自由なので、別にカタログスペックのみを最大の判断基準、価値としていても問題はないのですが、こうした人たちが、しばしばネットの 掲示板 などで、ライバル製品を 叩く ためにこうした情報を多用するケースがあり、それを 「ウザイ」 と感じる人が多いのが、こうした罵倒語が作られる原因なのでしょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2000年7月10日)
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