同人用語の基礎知識

ヤシガニアニメ
ヤシガニ屠る/ ウニメ

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もはや伝説的(悪い意味で)となったアニメです

 「ヤシガニアニメ」 とは、1998年4月24日に放映されたテレビアニメシリーズ 「ロスト・ユニバース」(1998年4月3日〜9月25日 全26話/ テレビ東京系列) の第4話 「ヤシガニ屠る」 があまりにもすごいデキだったので、それを由来、語源とした、極めてデキの悪い アニメ に対する罵倒的な表現です。 作画破綻の度合いを測る単位として、「1ヤシガニ」 なんて使い方をする場合もあります。

 「ロスト・ユニバース」 は同名の神坂一による ライトノベル SF作品を原作としたアニメで、大ヒット作 「スレイヤーズ」 と同じ原作者、制作会社ということもあり、元々非常に期待される作品でした。 ところが時代は 「新世紀 エヴァンゲリオン」(エヴァ現象) のアニメブームが加熱する大アニメ粗製濫造時代。

 アニメスタジオやスタッフの人的リソースが底を着き、膨大な数のアニメ作品が低予算、少人数でギリギリの制作に追われているなか、ついに過去類例を見ないほどの低品質アニメとなり、作画は破綻するわ、塗りミスや透過光処理の位置ズレは頻発するわ、動画の数が少ない (というか、中割りがない!) わで、エヴァ大ヒット以降アニメ番組急増時代の記念碑的作品 (作画破綻) となっています。

もはや伝説と化したヤシガニアニメ

ロスト・ユニバース
ロスト・ユニバース

 なお原画・動画はリップルフィルムと SAN HO STUDIO、制作はイージーフィルム。 セルアニメから CG へと急激に制作環境が変わる時代背景の中、意欲的な新機軸をいくつも打ち出した作品だったのですが、その後出来の悪いアニメを称して 「ヤシガニアニメ」 と呼ぶようになるほどのインパクトを破綻の形で示してしまったのは、自業自得とはいえ現場はちょっと気の毒な感じです。

 あまりにタイトなスケジュール、低予算、制作上層と現場との意思疎通のなさ、海外下請けスタジオの技術力のなさ…ある意味この時代を象徴するアニメでしたね。

 そのすごさは実際に見ないと理解できないものがありますが、子供が描いた似顔絵が、普通のアニメで演出やギャグの効果として使われているコマ落ちのぎこちない動きで、全編を覆っていると考えれば近いかも知れません。 インターネット が普及して、動画もあちこちに出回っているようなので (DVD などではリテイク(修正) されているため、最初の放映のものでないとニュアンスはわかりません)、興味のある方は調べてみるのも一興でしょう。

 ちなみに 「ヤシガニ屠る」 ばかりがクローズアップされる同作品ですが、全体的には決してボロクソに叩かれるような飛びぬけて酷い作品だったわけではありません。 なお同年には 「アキハバラ電脳組」(1998年4月4日〜9月26日) も、スタッフが作画について異例のコメントを出すなど、かなり危うい橋を渡っていた記憶があります。

ガンドレス、ヴァラノワールも登場、ここにヤシガニ3部作が揃い踏み

ガンドレス
ガンドレス

 さらに翌年 1999年には、ヤシガニ系アニメ不朽の迷作、破綻アニメの金字塔とも呼ばれるアニメ映画 「ガンドレス」 (GUNDRESS/ 3月20日/ 日活/ 原作/ 天沢彰/ 士郎正宗/ サンクチュアリ/ スタジオジュニオ) が、なんと未完成状態のまま東映系で封切される事態に。

 製作の遅延で封切日が遅れたり、未完成版の直後に完成版に差し替えたり、あるいは一部未完成部分があるまま公開するアニメ映画は過去にいくつもありますが、この作品は全ての点で過去の例を遥かに凌駕していました。 例えば キャラクター の色塗りが単色のみの塗りつぶしだったり、動かなかったりセルの重ね指定が間違いだらけだったり…枚挙に暇がありません。

学園都市ヴァラノワール
学園都市ヴァラノワール

 結果、初日の舞台挨拶は中止、前売り券の払い戻しをしたり、来場者に後日完成版ビデオを無料配布する約束をしたり、さらには配給の東映に制作の日活が多額の賠償を支払ったり (それは順次、下請けの制作プロにドミノ倒しで請求された)、スタッフロールに多くの黒塗りがあるなど、異例だらけの公開となりました (実質完全な未完)。

 転じて、デキの悪いアニメ映画、未完成のまま上映する映画を、「ガンドレスムービー」 などと呼ぶ場合もあります。 また、最低最悪のアニメを表す 「単位」 として、「1ガンドレス」 なんて使われ方もしていました。 なお実際にアニメを制作したスタジオジュニオは、サンクチュアリからの損害賠償請求を受け活動を停止。 その前に関わっていた 「白鯨伝説」 の失敗などもあり、アニメ界から名前を消しました。

 2002年に登場したアニメ(OVA) 「学園都市ヴァラノワール」(アイディアファクトリー) も、華麗なヤシガニの系譜に燦然と輝く佳作として忘れられない存在です。 シーンごとに違う顔、静止画をズームアップやズームアウト、パンでこれでもかと動的に魅せる編集の妙などは、アニメの世界に新しい表現の地平を開いたと評してかまわないでしょう。

 なお 「ヤシガニ屠る」、「ガンドレス」、「ヴァラノワール」 を称して、俗に 「ヤシガニ三部作」 と呼ばれています。

「顎アニメ」…東映版 「Kanon」

 2002年1月にこの カテゴリ のアニメ作品で話題になったものと云えば、東映アニメーションがアダルト美少女ゲームを原作とするアニメ作品を初めて制作するとして注目を集めた 「Kanon」 があります。 「泣きゲー」 として空前の美少女ゲーム黄金期を強力に牽引した名作のアニメ化ということで大きな期待を集めたものの、その余りのキャラクターデザインから、「顎がでかすぎる」「顎アニメだ」 と話題となりました。

 もっとも、この作品は決して作画崩壊していたわけではなく、原作ゲームのキャラクターデザインの特徴を頑張って再現しようとしていただけなのですが、アニメとして見た場合、バランス的にどうなのよ…ってなキャラデザ、全体で13話だったためストーリーが駆け足すぎたり、ゲームで使われていたBGMをあまり使わずオリジナル楽曲で雰囲気が変わっているなど、ファン からの評判がかなり低いものとなってしまいました。 後日談となる特別編1話の 頒布 が、あまりに厳しい条件だった (関連商品を大量に購入しないと実費購入資格が得られなかった) のも、批判の対象ともなっていました。

 その後、わずか5年後となる2006年10月から、京都アニメーション版が全24話で制作されテレビ放映されました。 こちらは原作のシナリオや演出を強く意識した内容となっていて、作画クオリティも高かったため、結果的に東映版は 「黒歴史」 扱いとなってしまいました…。 筆者もどっちを取るかと云われたら京アニ版になりますが、とはいえ東映版にも味わいがありますし、沢渡真琴はどっちも可愛いので問題ありません。 あう〜。

記録はいつだって破られるためにある…恐るべし、MUSASHI GUN 道

 1998年〜1999年、飛んで 2002年にかけての 「ヤシガニ3部作の季節」 を超える作品は、もう当分出ないだろうと長らく云われていました。 ヤシガニアニメの歴史もこれで終わりかと思われていた昨今、萌えブームも終盤の2006年4月9日になって BS-i とネット配信 (GyaO) の形で放映されている 「MUSASHI GUN 道」(原作/ モンキー・パンチ/ ACCプロダクション) が、あらゆる点で過去作を凌駕していると話題になっています (^-^;)。

 ヤシガニ屠るやガンドレスは作画が破綻していたり、動画数が極端に少なかったり、あるいは未完成状態であったりしたわけですが、この 「MUSASHI -GUN道-」 では、それらをさらにパワーアップしてフィーチャーしている上に (動画数はヤシガニよりは多いw)、ついにストーリーと演出にまで圧倒的な破綻が押し寄せており、「もはや訳がわからない」、「逆に新鮮だ」 とまで云われることに。 第6話にして予告が二転三転したあげく 「総集編」 が流れたり、スタッフと監督との確執が ネット のブログで流れるなど、途中の経緯も異例ずくめです。

 今は昔と違い、アニメは録画してパソコン上に簡単に動画キャプチャして、そのまま YouTube(ユーチューブ/ ようつべ) あたりにアップロードされて大勢に共有されてしまう時代ですし、噂が噂を呼び、もうしばらくは 「MUSASHI GUN 道」 の時代が続くんでしょうか。 主人公ミヤモトムサシの第2話での台詞、「うおっまぶしっ!」(ぜんぜん眩しがるような シチュエーション じゃない) や 「喋りすぎは命に関わるぞ」(タクアン和尚) は、もはやネットで流行語の兆しすら見せています…。

 制作者側には不本意なのでしょうけど、ある意味近年でも稀な話題作となっていますね (ネットでの話題沸騰ぶりに着目したのか、7月7日に 「作画破綻状態の回」 をそのまままとめたDVD (MUSASHI 〜放送オリジナルバージョン〜 DVD-BOX) を急遽初回限定生産で発売するなど、開き直っているのもすごい。 んでその DVD は予約開始と同時に当初予定数を 完売 の勢いw)。

ヤシガニアニメの歴史…幾度となく繰り返されるアニメブームと作画破綻アニメの登場

 思えばヤシガニ時代の前にも、破綻した作画が乱れ飛んだ時期がありました。 宇宙戦艦ヤマトや初代ガンダムがブレイクした80年代のアニメブームの時です。 例えば1982年の 「超時空要塞マクロス」(1982年10月3日〜1983年6月26日/ 毎日放送/ 全36話) は 「動かないアニメ」 と揶揄される作画となり、中でも第11話 「ファースト・コンタクト」(1982年12月19日放映) は、当時のアニメファンの間では語り草ともなっています (ただし海外発注分のクオリティはひどかったものの、国内制作分には優れた作画や演出も多く、放送回ごとに評価の落差が激しかった)。

 ブーム末期のタツノコプロのアニメ 「天空戦記シュラト」(1989年4月6日〜1990年1月25日/ テレビ東京系/ 全36話+総集編2話)の末期も、作画破綻、崩壊アニメを 「シュラってる」 と呼ぶようになるほど悲惨な動きをしていましたし、作品全編ではなくシリーズの何話かが前後の回と比べて許容範囲を超えるほどの劣化をしているケースは、ほぼすべてのアニメ作品にあるといってもよい状態でした (ふしぎの海のナディアの南の島編やアフリカ編、「北斗の拳」 のカサンドラのウイグル獄長の場面など)。 全てを国内スタッフで制作できない以上、これは仕方のないことなのかも知れません。

 また今日の作画的な破綻アニメは、何も 「MUSASHI GUN 道」 だけではありません。 作画はかろうじて破綻していないけれど、動画が極端に少ない紙芝居アニメ、ほとんどラジオ劇のような背景画ばかりが出てくるようなアニメすらあります (「妖怪伝・猫目小僧」(1976年4月1日〜9月30日/ 全24話/ 東京12チャンネル) という、ほぼ全編が切り絵や止め絵、静止画のスライドやカット割りのみで構成された 「ゲキメーション (劇画+アニメーション=劇メーション)」 と呼ばれる独創的な作品がありましたが、あれに倣って 「劇メーション」、「結果的ゲキメーション」 などとも揶揄されます)。

 アニメの大ヒット作品が生まれ、アニメやおたく文化がブームになり、そのブームで一儲けをたくらむ広告代理店やテレビ局が無茶な制作スケジュールでたくさんのアニメを作ってしまう。 しわ寄せは現場にばかりかかり、末端のアニメーターの就労環境が改善することなく、海外の下請けへの丸投げが横行。

 一説にはスポンサーからくる総予算のうち、現場の製作部門に回るのは20%を切っているそうです。 つまり8割以上が、広告代理店やテレビ局にピンハネされる訳です。 この限られた予算で、標準的な30分アニメ1本でおよそ 100人前後の人間を動かし、5,000から1万枚もの動画と、数百枚の背景画像を仕上げるわけです。

 「おかしなフィルムを上げてくる」 制作会社を笑うのも良いですが、そろそろ視聴者の側でも何らかのアクションがあっても、良い頃なのかなとも思います。 ただまあ、全く同じ条件で、優れた作品を作ってるスタジオや制作会社もあるので、何ともいえない部分もあったりするんですが…。

MUSASHI、ロリポップ、財前丈太郎…新3部作も目前の憂鬱

 なお、あまりのインパクトに 「MUSASHI -GUN道-」 ばかりが注目を浴びていますが、ほぼ同じ時期に放映が開始された 「まもって!ロリポップ」 2006年7月2日〜 (岐阜放送/ 菊田みちよ/ 講談社/ サンシャインコーポレーション・オブジャパン/ スタジオコメット)、「内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎」 2006年7月6日 (テレビ朝日系列/ 北芝健/ 新潮社/ トランス・アーツ) の両作品も、MUSASHI に勝るとも劣らないなかなかの作画っぷりで話題になっています。

 「MUSASHI -GUN道-」、「まもって!ロリポップ」、「内閣権力犯罪強制取締官 財前丈太郎」 の3作品を持って、「ヤシガニ新3部作」 もしくは 「ヤシガニアニメ新御三家」 と呼ばれるようになるのも、そう遠くないかも知れません…。 まぁ作画破綻を面白がるのも飽きた頃、いずれ視聴者の健全な拒否反応でヘンな作品は淘汰されるんでしょうけど、まさか 「ヤシガニ四天王」 とか 「ヤシガニ五虎将」 とか、「ヤシガニ六賢人」 とか 「ヤシガニ七本槍」 とか、そっち系統に伸びることにならないように祈っています…。

ウニメも忘れてはなりません

 ちなみにアニメ版 「シスター・プリンセス」(2001年4月〜9月 /全26話 /テレビ東京/ メディアワークス)の第12話 「バカンスはラブよ ♥」 の予告で 「ウニの中から千影の声が…」 との描写が公式サイトであり、放映された内容が実際その通りだったため、「訳のわからない駄作アニメ」 を、ウニ+アニメ=「ウニメ」と呼ぶ場合もあります。 原作と設定が違うこともありしょっぱなから叩かれていた同作品ですが、もちろん作画のレベルの低さも折り紙つきの作品と呼んでよいでしょう。

キャベツ事件とは…?

 「キャベツ事件」 とは、2006年 10月4日より TBS 系 BS-i ほかで放映を開始したアニメ、「夜明け前より瑠璃色」(AUGUST/ 月文化交流会) の第3話 「お姫様 料理対決!!」(10月18日放映) において、キャベツの千切りをするシーンで、キャベツがあんまりな造形と切られ方をしていたことを指し示した言葉です。 ほとんど緑色のボール、もしくはメロンです。 それがスポンジを切るようにばっさりと真っ二つに…。

 さらにサラダとなったキャベツは千切りしたのに葉っぱ状態となっていて、って云うかキャベツに見えない…。 全体的にそれほど惨いできではないアニメなんですが、ちょっとした気の緩みで 「事件」 になってしまうのは大変ですね。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2003年11月19日)
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