踏むまでわからない…踏んだらえらいことになる…「地雷」
地雷は踏むまでわからない でもわかってても踏み抜くこともある (同人する子) |
「地雷」(じらい) とは、それと知らずにうっかり関わったり近づくと酷い目に遭う、不幸 になってしまう…といったような意味の若者言葉の一つです。 戦争の際に使う兵器と同様 (後述します)、罠のように隠れて攻撃・損害を与えるもの、踏んで被害に遭うまでわからない危険なものという意味となります。
俗語表現では何かに接頭して使う場合が多く、例えば買ってしまったら時間とお金を浪費するばかりの駄作な ゲーム を 「地雷ゲーム」(地雷ゲー)、普及せず負けハードとなってしまうゲームハード機を 「地雷ハード」 などと呼びます。
おたく 界隈、同人 界隈ではゲームなどで使われるようになって広まりましたが、後にはつまらない アニメ を 「地雷アニメ」 と呼んだり、人気が出ず売れないだけでなく、スキャンダルや トラブル で ファン を奈落の底に突き落とすようなアイドルタレントを 「地雷アイドル」、ネトゲ で一緒のパーティーでプレイすると下手くそで足を引っ張ったり不快な言動を繰り返す プレイヤー を 「地雷プレイヤー」 などと呼んだりもします。
一般人 の間でも、それと知らずに関わったら自分が悲惨な目にあう異性を地雷女・地雷男などと云ったりもします。 実際に付き合ってみないと問題が分からないような隠れた問題、踏んで爆発しないとわからない欠点、すなわち地雷を持っているといったニュアンスで、昔から 普通に 世間一般で意味の通じる常套句の一つとも云えるでしょう。
なお関わる前から 「地雷っぽい 雰囲気」「きな臭い、ただならぬ空気」 を漂わせている場合は、地雷臭 と呼び、地雷が確定的だと決めつけることは地雷認定、多数の地雷が待ち構えているような状況は地雷原、地雷だと分かっていながら積極的に踏みにいく人 (ある意味で、よく訓練された ような人)、あるいは無知などによって地雷だと分からないまま手をだす人を地雷処理班 (人柱) などと呼びます。
また 「やってはいけない」「持つべきではない」 という意味で何かに接頭して使われる場合もあります。 例えば地雷女にありがちなメイクを地雷メイクと呼んだり、脱オタク のファッションの話題で、身につけてはいけない危険な アイテム (いかにもおたくっぽいアイテム) を地雷アイテムなどと呼ぶ場合もあります。
見たくない、大嫌いで不快なカップリングなども
なお 2000年代以降の 同人 の世界では、腐女子 による主に やおい や BL の話題の中で、自分が大嫌いな カップリング (カプ/ CP)、ジャンル のことを指す意味でも、この地雷がよく使われるようになっています。 その場合とくに 「地雷カップリング」(地雷カプ) などと呼んだりします。
イラスト コミュニケーションサービス pixiv (ピクシブ) や Twitter (ツイッター)などを閲覧していて、自分の嫌いなカップリングのイラストなどを不意に目にする機会が増え、うっかり リンク を踏んだことによる不快感、苛立ちを表すのに便利な言葉でもあり、急速に広まっています。
「爆弾」 や 「ミサイル」 ではなく、なぜ 「地雷」 なのか
関わると不幸になる物品はたくさんあります。 兵器に限っても 「爆弾」 や 「砲弾」「ミサイル」 もそうですし、「銃弾」 やナイフなどの刃物もそうでしょう。 それなのに、なぜあえて地雷が使われているのかと云うと、他の兵器に対し地雷は、「避けようと思えば避けられる」「自分から近づいたり踏まなければ巻き込まれなくて済む」 兵器だからです。
その意味では 「落とし穴」「罠」「あり地獄」 といった カテゴリ の言葉が意味として近いと云え、「突然襲い掛かる避けがたい不幸」 という意味だけではなく、自らの誤った判断から招き入れる自業自得の不幸だとも云えます。 過去に地雷を踏んで懲りた人には 「近づいたら危険だ」 なんてわかるのに、そうでない人は分からない…それを外部から見て揶揄したり嗤ったりするような、踏んでみないとわからないという意味との二重の使い方がされているのが大きな特徴です。
ただしゲームや アニメ、映画などは、個々人の 趣味 や好みによって評価が大きく左右されますから、ある人にとっては地雷でも、別の人にとってはそうでないかもしれません。 自分にとって何が地雷で、それはどのような地雷臭を漂わせているのか。 実際に手を出す前に賢く選択するのが良いのでしょう。 自ら地雷を踏み抜いてから文句を云っても始まりません。
本来の 「地雷」 とは?
ちなみに本来の 「地雷」 は、戦争の際に地上、もしくは地中に埋めるタイプの爆弾兵器で、ターゲットとする車両や人間がそばに近づいたり接触すると、それにより起動して爆発、危害を加えるものです。
第一次世界大戦時、登場したばかりの戦車を迎え撃つために考案され、時限式やリモコン方式などもあり、また大きく分けて人間をターゲットとする対人用と、戦車や軍用車などをターゲットする対車用、およびその両用があります。
敵兵力に対する直接的な打撃や、敵兵力の地雷に対する警戒心を利用して前進速度を低下させるなどが主な目的ですが、兵士などは一気に爆殺するよりも重症を負わせたり身体に重大な傷害を負わせる方が戦術的・戦略的に有益な場合もあるので、対人地雷などでは、わざと威力を弱めたようなものもあります。 これは、死亡した兵士はその場に捨て置くことができますが、生きていたら助けるための負担を敵の他の兵士に強いることができますし、身体に大きな欠損を持つ兵士が大勢帰還したら恐怖心や厭戦気分を敵国民に与えることができるからです。
地雷は基本的に敵の侵攻を防いだり遅らせるためのもので、その意味では攻撃用の兵器ではなく防衛用の兵器と云えるものです。 しかし一度設置・埋設 (散布) した地雷を撤去するのは難しく、戦争や紛争が収まってなお長期にわたって被害を出し続けている場合が少なくないこと、とくに対人地雷については非人道的であるとして、世界的に削減や禁止の方向に動いています。
なお地雷が設置、散布された場所は 「地雷原」 と呼びます。 海上もしくは海中に設置される似た兵器は、「機雷」 と呼びます。 空中に散布する形の同 コンセプト の兵器は俗に空中機雷などと呼ぶ場合もあります。