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声優さんの、ちょっとありえない演技 「棒読み」

 「棒読み」 とは、演劇の世界では 「へたくそ」 の意味です。

 セリフに感情や抑揚、演技がなく、棒読み状態になっているからですが、舞台や映画、テレビなどの演劇俳優と違い、声優さんの場合は声、セリフ読みこそが演技の全て (実際はそれだけでもないんですが) なので、「棒読み」 とはほとんど最上級の罵倒とも云えます。

 この種の 「声優を罵倒する」 表現や叩くポイントはいろいろあります。 例えば作品に声があってない (音響監督や監督の責任なんですが) とか、演技がわざとらしい、滑舌(かつぜつ) が悪くて何を云っているのかわからない、あるいは私生活が ファン から見て乱れているように見える…など、中にはほとんど私怨や言いがかりに近いものもあります。

 とはいえ、プロの声優として当然到達していなければならない技術的な レベル があるはずですし、また演技力は作品や キャラクター の完成度に直結している本業そのものだけに本人も言い逃れができません。 批判したり叩くほうにも正当で十分な理由があるので、声優さんご本人にとっては 「棒読み」 認定は辛いんだろうなぁ…って感じがしますね。

ネットスラングとしての、カッコつきの (棒読み)

 なお独特の ネットスラング として、カッコをつけて (棒読み) なんて表現する場合もあります。 これは感情がこもってないセリフ、白々しいセリフ、転じて本気でそうは思ってない意見を皮肉で書き込む場合に使います。 例えば

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なんて書くと、本心では 「ろくなもんじゃねえ」 なんて思っていることになります。 略して (棒) なんて書く場合もあります。

下積みもなく、いきなりメジャー主役デビュー、そして 「棒読み」

 通常声優さんは、劇団に所属したりアナウンス・声優の専門学校などを出て、比較的長い下積み時代 (マイナー作品や商品説明のナレーションなど、あまり表に出ない作品や、他の アニメ作品 のチョイ役、脇役 など) を経て、メジャー作品にデビューしたり、主人公 に抜擢されたりします。 「声」 と 「演技力」 が基本的に全ての声優の場合、他のアイドルや俳優などと違い、例えば50歳になっても60歳になっても子供の役や若者の役をこなせるので、実力が伴っていないのに、無理に早くメジャーデビューさせる意味がないんですね。

 しかし声優のアイドル化、歌手と声優の接近などもあり、それらを十分に経ずにいきなり大舞台に立たされたりするケースが続出。 さらに、そもそも元から才能がないなどの問題があると、アニメファンなどからバッシングを受けることになってしまうようです。

アニメ声優と棒読みと演技力

 この種の 「アニメ声優に対する高いハードル」 は、アニメが生まれ 商業 ベースに乗った頃から大なり小なり、熱心なファンの間ではよく話題に上る テーマ でした。 この種の話題でよく上るものに、1974年に放映されたアニメ 「宇宙戦艦ヤマト」 の大ブーム (第一次声優ブームを巻き起こした) の際の、「ヤマト」 の森雪役 の麻上洋子さんの例があります。

 当時若い女性の声優が少なかったこと、ヤマトが爆発的ヒットとなったことにより、ほとんどアイドルのような扱いを受けるようになりましたが、大人気になると アンチ も出てくるのは当然とばかりに、映画版が作られる際には、「森雪役は他の声優に」 とのアンチの署名活動などが行われていました。

 その後、「声優」 という 「職業」 が、「舞台俳優の副業」「映画俳優になり損ねた人の仕事」 のようなポジションから一段上がると、それまで実力派が揃っていた声優の世界に、アイドル志願のような若手の女性や、さらにはテレビタレントやお笑い芸人の 「副業」 のような形での声優業進出が目立つようになりました。

棒読み具合が癖になる…独特の棒読み萌え的な作品も

 2003年4月5日〜2004年12月まで全52話、テレビ愛知で放映されたアニメ 「マーメイドメロディー ぴちぴちピッチ」(横手美智子/ 花森ぴんく/ なかよし/ 講談社) の主人公 「七海るちあ」(中田あすみ) の劇中の入浴の際のセリフ、ぐるぐるあわあわ〜 があまりに棒読みで感情がこもってなかったことから、ネット掲示板 などで話題に。

 実際はその後、めきめきと上達し、2004年には続編となる 「マーメイドメロディーぴちぴちピッチピュア」(全39話) でも主人公るちあを演じて人気を博し、人によっては 「上手い声優と良い声優とは似て非なるものだ」「昔の棒読みが懐かしい」 なんていわれる状態にもなりましたが、2003年段階では 「この先どうなるのか…」 という不安感があったものです。

 その後話題になったものには、アニメ 「ソウルイーター」(SOUL EATER/ 大久保篤/ 2008年4月7日〜/ テレビ東京) のマカ (小見川千明) なども 「棒萌え」「成長系声優萌え」 のファンには、たまらない声優さんのようです。

「赤ずきんチャチャ」 もすごかった…「チャチャにおまかせ!」

 この種の 「棒読み」 が話題となった作品は、昔からそれなりに数がありましたが、とりわけある種の 「大騒動」 になったものに、アニメ 「赤ずきんチャチャ」(テレビ東京系列/ 1994年1月7日〜1995年6月30日/ 彩花みん) があります。 主人公チャチャ役の鈴木真仁、やお鈴ちゃん役の並木のり子は完全に無名の新人で、しかもリーヤ役は声優未経験のアイドル、SMAPの香取慎吾。

 脇に ベテラン、実力派が配されていたものの、メインキャストの棒読み具合はすさまじく、初期の頃は不評だったり、話題にすらならないありさまに。 しかし独特のテンションのギャグや、無名新人声優らの頑張りから徐々に話題となり、しまいには、「あの声が癖になるんだ」 と賞賛する おたく系 のファンが大量につくことになりました (まぁ 筆者 もそうですがw)。

 「ぐるぐるあわあわ〜」 なんかもそうですが、棒読み、へたくそさをあざ笑い罵倒するというよりは、おかしなイントネーションや、後に上達して 「ごく普通の声優レベル」 に達した時の、昔の下手な時を懐かしむファンの温かい目線からの 萌え 的な表現ともなっているのは、面白いところです。

 ちなみにここで上げた 「ぴちぴちピッチ」 や 「チャチャ」「ソウルイーター」 などは、棒読みと呼ばれながらも、それなりに評価を得た作品で、実際は 「棒読み声優死ね!」 的な罵倒一辺倒の酷い作品、声優さんもいます。 個人をあげつらうのも何なのでいちいち個別の作品には触れませんが、正直、これでは作品に関わった全ての人が かわいそう だ…なんて怒りを感じる声優さんも、結構いたりします。

「実力」 ではなく、「事務所の力」 や 「政治力」 が配役に影響していると思われる場合は…

 逆に、アニメ映画の声優や吹き替えなどで、声優業とかかわりのほとんどないお笑いタレントやアイドルが声を当て、それがへたくそだった場合には、バッシングはすごいものがありますね。 長期にわたって放映するアニメのテレビシリーズなどと違い、映画なんかは 「成長の過程を見守る」 なんて見方はできませんし、またテレビシリーズなどで声優が演技していた役を、映画化の時に芸人やアイドルが 「奪う」 状態になると、元からいたファンらもキャスティングそのものに怒りを感じるケースも多く、中には 原作レイプ だ! などとして、反対署名を集めるなんてケースもあります。

 こうした 「アニメや声優とは無関係の役者やアイドル、芸人を声優にする」 って事例の目だった形での最初は、宇宙海賊キャプテン・ハーロック の劇場版 「わが青春のアルカディア」(松本零士) における、ハーロックの先祖ファントム・F・ハーロック役の石原裕次郎の起用でしょうか。 わずか5分ほどの出演にもかかわらず、ギャラは主演の井上真樹夫を上回るとされる 1,000万円。 当時アニメ雑誌などでも話題となっていました。

 この映画が公開された1982年は、1970年代に放映された 「宇宙戦艦ヤマト」 の大ヒットと、それによるアニメブーム、声優ブームが巻き起こっていて、さらに「銀河鉄道999」 の大ヒットもあり、アニメ全体がかつてない大きな分岐点にきていました。 製作者側は話題づくりのための石原裕次郎起用というよりも、これを機に、押しも押されもせぬ一流俳優を起用することで、アニメを 「子供のための動く マンガ から、第一線のカルチャーに押し上げるためのきっかけにしようとの意図もあったようです。

 ただしこの映画は興行的には成功したとは云いがたく、テレビアニメシリーズの 「わが青春のアルカディア 無限軌道SSX」 も不調。 多くのアニメファンの間では、「アニメに無関係の役者に高額のギャラを払うより、声優やアニメーターの就労 環境 改善に回すべきだった」 と批判されることとなりました。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2004年8月10日)
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