防ぎきれないほどの砲撃を浴びせれば必ず勝つる!? 「飽和攻撃」
「飽和攻撃」 とは、防御側の処理能力を上回る量の 攻撃 を行い、敵の防御・防衛網をオーバーフロー・パンクさせて突破する攻撃戦術のことです。 敵の対応余力を超えた攻撃を一気に叩き込むことで、一部は対処されてもしきれない部分は相手に届くという考え方です。
例えばある防空レーダーが同時に探知・補足・追尾できる目標数が10だとすると、11発のミサイルを同時に発射すれば1発はそれらから逃れる可能性があります。 また迎撃ミサイルの対処能力が10発なら、残った1発は反撃を受けることなく目標に到達する可能性が高いでしょう。 敵の探知や迎撃を避けるための技術的に高度で高価な武器を用意するよりも、手持ちの武器の数を単に増やすだけで効果が期待できる点が大きなメリットです。
この戦術を成功させるためには、敵がどれだけの攻撃を防げるかの限界数 (キャパシティ) を正確に把握し、それを超える規模の攻撃量を準備・同時投射する必要があります。 とはいえレーダーや迎撃ミサイル、管制システムらの性能や配備数などは軍事機密であるため、おいそれと実際の能力を敵が得ることはできません (一応公称値が発表されることもある)。 従って予想される最大量よりさらに多い数、圧倒的な数で行うことが多いでしょう。 攻撃などは仮に当たったところで必ず期待通りの損害や ダメージ を与えられないケースもあるからです。
一方で、敵の防御・対処能力が皆無であれば、たとえ1発であっても飽和攻撃が成立するともいえます。 飽和するかどうかはあくまでこちらの攻撃量と敵の防御・対処能力との相対性によって定まるからです。 また敵の防御・対処能力は一定ではなく、その場の状況によっても変化します。 例えば陽動作戦によって無意味な場所に移動させられたり、意表を突く奇襲攻撃や破壊工作によって能力が著しく落ちることもあります。
これは別の言い方をすれば、あらゆる戦術あるいは 戦闘 は、こちらが敵に対して飽和する形で行うことを目指すべきだとも云え、数の論理の優位性、正確さや 質 より物量がものを云う数の戦いが 勝利 する上でもっとも大切だという昔からの戦いの教えを再認識させるものでもあります。 これはあらゆる戦いの基本となる考え方でもあり、包囲戦や 各個撃破 といった戦法にも広く通底するものです。 もちろん歴史上にも寡兵が大軍を破った華々しいケースはたくさんありますが、それは滅多に起こらないに勝者によって誇張されて伝わるからで、しょせんは 「戦いは数だよ兄貴!」 というわけです。
航空戦やサイバー戦の基礎となる戦術
現代の飽和攻撃の 概念 がよく用いられるのは、軍事 の世界では航空戦、とくにミサイル攻撃においてでしょう。 対空レーダーやミサイルが同時に追尾・迎撃できる数には限りがあります。 例えば世界最強とも呼ばれるアメリカのイージスシステムは同時に捕捉・追跡可能な目標は128以上、そのうち脅威度が高いと判定された10以上 (一説では18個) の目標に同時に対処できるとされます。 イージスを積んだ艦艇が複数いれば同時迎撃能力が向上し、データ共有による相乗効果も期待できますが、全体の対処能力を超えた数の攻撃はもちろん対処不能であり、防ぎきることはできません。
もっともイージス以外にも防空のための装備がありますし、そもそもアメリカ正規軍に高価な対艦ミサイルを飽和するほど浴びせられる敵がどれだけあるかはわかりません。 冷戦時代のソ連がアメリカの空母打撃群を撃破するために考案した集団攻撃戦法がよく知られていますが、実際に行われたことは当然なく、どのくらいの効果が発揮可能かは未知数です。 とはいえ近年では、変則的な軌道を描いて飛翔するミサイルの登場や、安価に大量生産が可能なドローン兵器の群れによる攻撃も登場しています。 ギリシャ神話の最高神ゼウスが娘アテナに与えたという邪悪を払う無敵の盾を意味するイージスですが、その真価が発揮されるような事態が起こらないでいて欲しいものです。
一方、火器を用いた攻撃ではなく、サイバー戦でも飽和攻撃が注目されます。 むしろ IT 関係における基本的な攻撃としてこちらの方がよく耳にするものでしょう。 代表的なものに サーバ を ターゲット とした DOS攻撃 があります。 サーバの処理能力を上回る大量のアクセスやデータを送りつける手口で、多数の bot を使ってより大規模化した DDoS攻撃 なども当たり前になりつつあります。 結果、負荷に耐えられなくなったシステムはダウンしたり、サービス停止を余儀なくされ、公的なサービスや大手企業のシステムが攻撃されるたび、ニュース報道などでも紹介されるようになっています。
なお おたく の世界では、アニメやゲーム、アイドル関係の 公式 が、矢継ぎ早に イベント や グッズ を大量展開することを飽和攻撃とか物量攻撃と呼んで揶揄することもあります。 そんなにたくさん出されても追いつけない、お財布が持たないというわけです。 こうしたやり方はファン殺し、出されるグッズは お布施グッズ や集金グッズなどと呼ばれることもあります。





