同人用語の基礎知識

長体・平体

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印刷用語ですが、やらないにこしたことはない処理です

 「長体・平体」 とは、印刷DTP の世界の言葉で、その印刷物の組版データに入れるべき文字がスペースに対して多すぎたり少なすぎたりした場合に、文字フォントに変形をかけて余白を調節することです。

長体・平体  例えば文字数が多すぎて見出しの に文字が入りきらない場合は、文字の幅を縮める 「長体」 を行います。 幅が狭くなるから結果として文字の背が伸びたように見えるので 「長体」 と呼ばれますが (狭幅ではありません)、高さは変えません。

 高さを低くする場合は 「平体」 と呼び、あわせて 「長体・平体」 処理なんてまとめて呼んだりします。 つまり文字を変形させて文字入れの調整をするって意味ですね。

長体・平体変形処理サンプル

長体 横幅の変更のみ 図の左下 (横方向に20%縮小)
平体 縦幅の変更のみ 図の右下 (縦方向に20%縮小)

どうしようもない時に、長体・平体一括変更で急場をしのぐことも…

 こうした変形は、活字版の時代からあり (縮小率により番号が振られた変形版がありました)、当時は視覚効果を狙うような使い方が多かったようですが、活字版が廃れパソコンによる DTP の時代となり、マウスで範囲指定してコマンド一発でOKとなると、その 「便利さ」 から、最終局面での微調整に大活躍することになりました。

 もちろん変形は、本来のフォントの形を変えることですから、他の項目と文字の見え方が変わったり (15%から 20%を超えるような極端な 「長体・平体 処理」 は特殊な用途を除き、タブーみたいなところもあります)、文字の形が不恰好になるので、特別な効果を狙うのでなければ、なるべくならやらない方が良い、窮余の一策のようなところがあります。 事前にきちんとレイアウトを切り、それにそった文字数でライティング (テキスト作成) をしていれば、本来はこんな処理はしなくて済むはずです。

 しかし納期ギリギリの印刷物発注だったり、DTP 業者が過酷な就労 環境 になっている場合もあって、「今回は仕方ない」 と割り切って使う場合も結構ありますね。 自分でテキスト作成からレイアウトから全てをやってる個人の趣味なんかと違い、こういう業界は専門に特化した業者やスタッフがぶつ切りの仕事をしているので、勝手に文字を変更できない、変更するには何人もの連絡を経由してクライアントや発注者に許可を得なくてはならないなど、ちょっと文字を削るだけで大騒動になってしまいます。

 まぁ 筆者 も似たような仕事をやっているのでここらは頭の痛いところですが、信頼を寄せてくれているクライアントさんによっては、「文意が変わらなければ、多少の文字の改変、誤字脱字の無許可修正を事後報告でやってよい」 なんていってくれる場合もあり、こういうケースではかなり楽になりますね。

 もっとも 「長体・平体 処理」 はとにかく楽なんで、何も考えずにどんどん処理しちゃう業者さんも多いようですけど。

マンガのフキダシのネームなんかだと…

 筆者は編集に身をおく前は商業誌で マンガ を連載していましたが、締め切りギリギリになって編集さんが自宅の仕事場の部屋で活字出力されたマンガのセリフ (ネーム) をカッターで切って完成した原稿にそのまま貼っている…なんて状況が何度かありました。

 先にネームは出しているので 原稿 の完成前に活字が上がってるわけですが、この場合は逆に、収まらない場合はフキダシをネームに合わせていましたね (^-^;)。 20年くらい前は、業務用パソコンが印刷所や編集に急速に普及し始まっていた頃でしたが、まだまだ神田や御茶ノ水 界隈 の活字屋さんも元気があり、余裕のある入稿をすると、担当の編集さんと一緒になって華麗な長体・平体を使ってセリフに迫力を持たせてくれていました。

 同人誌の場合、ネームは同人作家本人がワープロやパソコンで印字して張り付けるケースがほとんどですし、最近は紙など使わず、パソコン上で全てを完結してしまう作家さんも多くなっています。 印刷業界とはまた違った長体・平体の活用法が、こういう新しい時代の作家さんから、生まれてくるかも知れませんね。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2000年1月20日)
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