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箇条書きマジック

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分かりやすく箇条書きされると正しく見えてくる… 「箇条書きマジック」

 「箇条書きマジック」 とは、詭弁 や印象操作の手法のひとつで、何らかの物事を定義したり比較する際に、論者の主張に沿った都合の良い部分や共通する部分だけを断定口調の箇条書きにして、実際以上に優れている (劣っている)、あるいは似ているかのように誤認させる行為を指す ネットスラング です。 議論に対する不適切・不誠実な態度や詭弁としては、いわゆる チェリーピッキング のひとつ (都合の良い要素のつまみ上げ) や 切り抜き のひとつとされることが多いでしょう。

 例えば人間とペットのイヌやネコを比べたとします。 いずれも 「頭があって顔には目が2つついている」「豊かな感情を持つ」「家に住むものもいれば路上で生活するものもいる」 などなど、数多くの共通点を見ることができます。 それらだけを並べて見るとまるで同じもののように見えるかもしれません。 でも実際は全く違う生き物であり、また先に挙げた特徴を持つ動物は他にもいくらでもいます。 共通点のみを摘出した比較らしき箇条書きなどほとんど何の意味もないといってよいでしょう。 もちろん人間とイヌやネコの比較なら誰でも 「おかしい」 と気が付きますが、比較対象を伏せたり、比較対象そのものがよくわからないものの場合は、すっかり騙されてしまうこともあります。

 ネット においては 2ちゃんねる などで ネタ として行われたり、炎上 で相手を悪魔化するために悪い部分だけを列挙したり、何らかのパクリ・盗作や模倣を批判する際に、「パクリ」「パクラレ」 の比較で異なる部分を意図的に無視して似ている部分のみで比べるといった手口に良く見られます。 人の錯覚を利用して騙すために使われるものなので、エセ科学やニセ・インチキ医学、陰謀論 などの詐欺行為ではとくによく用いられるでしょう。 言葉遊びやネタ、あるいは 雑談 としての論争で使われる程度ならともかく、他人に対する誹謗中傷や詐欺行為に用いられる箇条書きマジックは、時に甚大な被害を当事者に与えることもあります。

 箇条書きマジックの例として、2ちゃんねるでよく使われた コピペテンプレート の元となった 書き込み があります。 2004年9月14日にライトノベル板 (ラ版) に立てられた ラノベ に関するネタ書き込みで、同人サークル 「TYPE-MOON」 の ゲーム 「月姫」(2000年) の 設定 に似た 作品 が多いことを嘆いて批判するという形をしたものでした。

「最近月姫のパクリのラノベが多いですね」 コピペ

1:イラストに騙された名無しさん04/09/14 08:18:21 UayjmVIc

パクリ多いですね。 以下のものが出てきたらパクりの可能性が高いです。

○主人公が2重人格だ
○実は家は旧家だ
○しかも殺人衝動がある
○ヒロインが最強レベルだ
○妹がいる。呼び方は兄さんである可能性が高い
○メイドがいる場合もある
○出合って即効コンビを組むことになる
○主人公が正義漢だ
○トラブルがおきても「ほっておけない」と言い、首を突っ込む。
○そして自己犠牲もいとわない。
○人外のものがいる。
○やたら裏設定が詳しい
○主人公の武器はナイフだ
○一撃必殺系の攻撃がある
○登場人物がやたら自分に酔っている
○魔術が出てくる
○超能力も出てくる
○言ってみれば伝奇モノだ。しかも新伝糸奇だ。
○キャラがかぶってる。
○ストーリーがかぶってる。
○っていうかコピーのようだ。

 こうして共通点だけを都合よく箇条書きで列挙すると 「こんなに共通点があるのか」 と、これに該当するラノベは月姫のパクリではないかと一瞬思ってしまうかも知れません。 しかしそれぞれの項目を見るとラノベや マンガアニメ、ゲームなどでは 「ありがち」 な設定が多く、一部にはややこじつけに近いものもあります。 また当然ながら他作品それぞれには月姫とは異なる点もたくさんあるはずですが、全て排除されてしまっています。 具体的なパクリ作品名も挙げていないため、見た人はそれぞれの自分の中の 「ちょっと似ているな」 と思う作品を頭に浮かべ、「あれもこれも似てる」 とパクリ判定を無意識に強められもするでしょう。

 月姫やラノベ作品のいくつかをちゃんと見て知っている、あるいはラノベ全体の傾向を何となく理解できる人はネタだと分かって笑えますが、そうでない人はこの箇条書きに触れる文脈によっては、誤解して信じてしまう可能性があります。 またこのコピペの優秀なところは、「月姫」 大ヒットによって実際にその影響を受けた作品がないではないことから、それが バイアス となって 認知に歪み が生じた一部の極まった ファン (月厨) に同様の主張をする人が少なくなかったことへの皮肉や揶揄が感じられる点でしょう。 最初の書き込みが本当に明確なネタや 釣り を意図したものかどうかは不明ですが、以降はこの スタイル の箇条書きマジックが量産されることとなっています。

人はなぜ箇条書きに弱いのか

 箇条書きは情報が整理され論理的にも見えるため、眺めているうちについ思考が受動的になり 「正しい」 と錯覚しやすいと考えられます。 受動的になりがちなのは、断定口調の短文の繰り返しによって長い文章を読む面倒や手間が省ける安心感と、整理されまとめられたシンプルな見た目の美しさ、構造化された簡潔さが、高い説得力という錯覚を生むからです。

 思考が受動的になると異なる部分が排除されていることに無頓着になったり、列挙されている情報が本当なのか、きちんとした裏付けがあるのかといった警戒心や猜疑心も薄れますし、ソース や他資料に当たるといった面倒な確認作業に対する モチベーション も生じません。 結果、同じ箇条書き内ですら生じている矛盾点をも見落としてしまうほどの思考停止状態に陥ることがあります。 また数が多ければ質だけでなく量でも正確さが担保されているような感覚を覚えやすいでしょうし、逆に数が少なくても人によっては 「ここには書かれていない似ている部分が他にもあるぞ」 と勝手に偏った考え方を強める事すらあるかもしれません。

 何らかの知識を得たり判断の根拠を探す時、手間や面倒といったコストをあまりに避けようとすると、相手の思うつぼに ハマっ てしまうこともあるでしょう。 詭弁や印象操作や詐欺はそうした人の心の隙間を狙います。 自らの利益のために 「〇〇である10の理由」 みたいなキャッチーな箇条書きで人を誤った方向に誘導しようとする人や団体はたくさんいます。 整理された言葉の美しさとか勢い、量などに惑わされず全体を俯瞰で見たり文脈を押さえる、一つの文章や人の意見だけをよりどころに全てを判断しない、そして何より 「分かりやすすぎる文章や意見には何か裏がある」 という健全な疑う心を持つことが大切なのでしょう。

 ビジネス の世界では、「結論から先に云え、書け」「要点をきちんとまとめろ」 とは、新社会人の頃から散々叩き込まれるほとんど絶対的なセオリーとなっています。 情報や報告を受け取る人にムダな時間をかけさせるなはたぶん正しく、タイパ が重視される現代にあって前提条件の提示や起承転結に沿って順を追った丁寧な説明は人の時間を奪う 「時間泥棒」 扱いです。 簡潔な (あるいは で乱暴な) 断言をしない話に発話者の自信のなさを感じてしまう人すらいます。

 「分かりやすく簡潔に」 は、人に読んでもらったり聞いてもらうことを前提とした発信者の姿勢や心がけとしては一つのあるべき回答ではありますが、受信者として重大な判断をする場合には、手っ取り早く結論を求める姿勢は仇となりかねません。 情報が溢れる時代、そもそもよくわからない箇条書きを読んでまで自分がその話題に関わる必要があるのかまで考えられると、誤った情報に振り回されることも少しは減らせるかもしれません。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2010年2月9日)
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