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趣味の世界でどっぷりはまってしまうこと… 恐ろしい 「沼」

 「沼」(ぬま) とは、趣味の世界の深みにどっぷりと ハマり 込んでしまうこと、一度落ちたら二度と抜け出せないくらいにドハマリしてしまうことです。 一般的な言い回しである 「底なし沼にはまる」「泥沼にはまる」、あるいは 「奈落の底に落ちる」「○○中毒」「○○キチガイ」 などと似た ニュアンス ですが、嵌まり込んでいる本人はやたら幸せそうで嬉しそうなのが、趣味の世界の言い回し独特なニュアンスでしょうか。

 なかでも男性によるコレクション・収集系の カテゴリ自虐・自嘲気味に広く使われてきた言葉となっており、例えば切手のコレクションなら切手沼、音楽ならレコード沼、腕時計の収集なら腕時計沼といった感じで、何かに接尾する使い方 (○○沼) をします。

 また本来は収集がメインではないはずの趣味でも、道具に凝りだして止まらなくなるケースでも良く使われます。 例えば一眼レフなどレンズ交換式カメラの世界ならレンズ沼、釣りの世界ならルアー沼、などといったぐあいです。 コレクション的な趣味や遊び以外でも使うケースは多く、例えばギャンブル沼などは、一度はまったら、生活を根こそぎ破壊する代表的な沼と云えるでしょう。

 なお 「沼」 を使ったスラング・ジャーゴンはこれ以外にも様々あり、腐女子同人 の世界では、どっぷりとはまり込んだ好きな キャラクターカップリング (カプ/ CP)ジャンル を指したり (後述します)、ゲーム とくに オンライン で他 プレイヤー と遊ぶ ネトゲ において、頭の悪いプレイや頭の悪い人間を悪しざまに呼ぶ使い方 (後述します) もあります。

好きで好きでたまらない、ドハマリしたキャラ、カップリング

 腐女子や同人、とくに2000年代以降の やおいBL の話題の中で、とにかく大好きでドハマリしたカップリングやジャンルのことを指す時にも 「沼」 がよく使われます。 好きすぎて抜け出せなくなった、どんどん深みにハマり込んでまだまだ底が見えない、絶賛ドハマり中を意味する言葉となります。

 自虐・自嘲のニュアンスを持っているのは男性が趣味の世界で使うニュアンスとほとんど同じで、また何かに接尾して 「○○沼」 といった言い方もする場合があるなど、用法もほぼ同じです。 この場合、対義語は一般に 地雷 (苦手、大嫌いなカップリング、ジャンル) になります。

一度ドハマリしたら二度と抜け出せない機材オタの底なし沼

レンズ数本と防湿庫まで買ったら後は 「沼」 一直線
レンズ数本と防湿庫まで買ったら後は 「沼」 一直線

 一般的な趣味の世界における 「沼」 の使い方のうち、おたく の世界と比較的近いジャンルの例としては、カメラの 「レンズ沼」 が良く知られ、またとても身近な存在でしょう。

 いわゆる 「機材オタ」 の代表格ともいえ、新しいレンズが次々と欲しくなってしまう深刻な病ですが、お手軽ズームレンズから始まって、やがて小三元 (F4通し) や大三元 (F2.8通し)、大口径の単焦点、それらを保存するための防湿庫…あたりまで進むと、そろそろ沼の淵から足をずっぽりと踏み入れている状態です。

 この段階となると金銭感覚もマヒしてきて、何しろ1本20万円以上は当たり前なレンズを何本も買っているので、ストロボ (スピードライト) や三脚などにも相応の出費をしていることでしょう。 カメラ本体もエントリー機からフルサイズのハイエンド機、もしかしたらプロカメラマン御用達なフラッグシップ機に買い替えているかも知れません。

 その後、現行品や新製品のレンズをあらかた揃え尽くしたら、次はディスコン (生産中止) された名玉や個性的で味わいある無数のオールドレンズ、希少性のある伝説的な名玉、他メーカー製レンズなどが待ち構えています。 この辺りから沼も本番といった感じで、より良い撮影のためのレンズ購入から徐々に意識が離れ、集めるための購入、購入のための購入となってきて、入手してから一度試し撮りしただけのレンズが自室にうずたかく積まれ、このままではまずいと思っても、もがけばもがくほど、足元をすくわれ深みに入り込む感じがします。

 もちろんこれは、レンズ以外のあらゆる趣味のあらゆる道具類に当てはまります。 またカメラが好きな人はメカ好きな傾向を持っていることも多く、前述した腕時計とかオーディオ、自動車、オートバイなどを、本業・副業として同時に趣味としている場合もあります。 まるで様々なジャンル別の沼が、ぽっかりと口をあけて人が落ちるのを今か今かと待ち構えているようです。

 いずれの沼にもとことんまでハマったら大きな金銭的負担がかかるものですし、オーディオにおけるオーディオ沼など、単に機材を買いそろえるだけではなく、オーディオルームのための自宅の増改築や新築、オカルトじみた超高額の周辺機器や各種工作への傾倒など、ほとんど宗教にのめり込む人間のような大きな負担を本人にも周囲にも強いる場合があります。 やめたくてもやめられない、抜け出したくてもそれが叶わない様が、まさに底なしの沼といった感じです。

抜け出せないといいつつ、なぜかちょっと嬉しそうな沼の住人

 コレクション癖のある人、道具やモノづくりが好きな人、物品の所有で満足感だけでなく優越感や快感を覚えるタイプの人は、なるべく近づかないのが健全でしょう。 もちろんその趣味が本当に好きで、それを支えるそれなりの経済力があるなら、いずれ何らかの理由であっさり卒業できたりもしますから、必要以上に恐れず人に迷惑をかけない範囲で思う存分お好きにどうぞといった感じです。 まぁ実際、沼にはまってる時はそれが本当に楽しかったりしますから。

 なお人を沼に突き落とす際に、その最初の一歩、きっかけとなるものについては、とくに 「撒き餌」 などと呼ぶ場合があります。 例えばそれがカメラのレンズなら、撒き餌レンズなどとなります。

オンラインゲームにおける 「沼プレイ」 や 「沼」

 一方、沼にハマり込むといった地形名の沼本来の意味とは無関係に生じた使い方もあります。 代表的なのがオンラインゲームなどにおける、頭の悪いプレイ、あるいはそうしたプレイをする人を侮蔑する意味の 「沼プレイ」 や 「沼プレイヤー」 あるいは単に 「沼」 です。

 こちらは、知的障碍者の略称、知障 (ちしょう) を 誤変換当て字 にした罵倒語 「池沼」 をさらに略した 「沼」 であり、すなわち 「沼プレイ」 や 「沼プレイヤー」 は 「知的障碍者のようなプレイだ、プレイヤー だ」 という意味となります。 同じような用いられ方をする 「ガイジ」(障碍児の略) と同じ使い方であり、数ある ネットスラング の中でも極めつけに差別的で醜悪な部類に入るものでしょう。

 当然ながらとても表向きで使えるような言い回しではありませんが、ネトゲ特有の 煽り 煽られの罵詈雑言の中で、2010年前後以降くらいから見かけるようになってきました。 初見だと、これまでの沼の使われ方から 「面白くてハマってるプレイやプレイヤー」 の意味にも思えてしまうのが厄介ですが、そのうち誤用が広がって意味が上書きされる可能性もあります (そもそもこの使い方自体が ガチ勢 のドハマりプレイの沼の転用や誤用という説もあります)。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2009年10月21日)
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