同人用語の基礎知識

なあに、かえって免疫力がつく

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寄生虫キムチを食べると…「なあに、かえって免疫力がつく」

 「なあに、かえって免疫力がつく」 とは、どう考えても擁護するには無理な状況なのに、それを理不尽なまでにポジディブかつ肯定的に捉え、問題点を矮小化しごまかしたり、逆手にとって誉めそやすような独特の言葉です。

 使い方としては、食品系の不祥事や食中毒などの事故が起こり話題となった時に、唐突に 「なあに、かえって免疫力がつく」「なあにかえって耐性が付く」 などと反応して返したり、あるいはアレンジバージョンの場合には、一例として自分が好きな アニメ がストーリーが破綻して分かり辛いと批判されている時に、「なあに、かえって読解力がつく」 などと 「免疫力」 部分を差し替えて使ったりします。

 元ネタ は異なるものの、同じ事件をきっかけに同じ時期に流行って使われている言葉、魅力的とすら思う、○○で感染したら、ラッキーかもしれない などと一緒に使われるケースもあります。 いずれにせよ、ネット 上などでことさらに使う場合には、本心から擁護しようとしている言葉ではなく、大半が罵倒や揶揄の ニュアンス を持っています。 ネット上では、2005年末から2006年頭にかけて流行しました。

元ネタは、東京新聞のコラム 「筆洗」 から

東京新聞 「筆洗」 2005年11月24日
東京新聞 「筆洗」 2005年11月24日

 元ネタですが、東京新聞 (中日新聞) が2005年11月24日の 「源平富士川の合戦でもあるまいに、鳥の羽音に驚くような、最近…」 から始まる 「筆洗」 に書いた 「キムチは最近、寄生虫卵騒ぎで不評だが、なあに、かえって免疫力がつく。」 に由来します。

 このコラムは、「インフルエンザの特効薬」 のような扱いを受けていた医薬品 「タミフル」 にまつわる騒動を批判的に書いたもので、鳥インフルエンザ騒ぎやタミフル騒動などを 「苦々しい」「大騒ぎしすぎだ」 としています。

 その上で、「風邪気味のときは、ニンニクをこってり利かせた焼き肉を食べるに限ると教わり、以来、風邪対策の特効薬代わりにしてきた」 と、「気合で何とかしろ」 といわんばかりの論調でまとめ、最後に焼肉にはつき物のキムチを持ち出し、「キムチは最近、寄生虫卵騒ぎで不評だが、なあに、かえって免疫力がつく。」 としたものでした。

食の安全問題では声を張り上げるマスコミが、キムチだけはなぜか擁護

 コラム最後の一行の背景には、当時韓国産のキムチから寄生虫の が発見されたというニュースがあった訳ですが、「鳥インフルエンザ (新型の流行性感冒) やインフルエンザ、風邪 (普通感冒) などを、全部同じものだと思ってませんか?」「普通の日本人 なら風邪の時は玉子酒を飲んだり長ネギを首に巻くとかが相場だろうに、焼肉とキムチなんて初めて聞いた」「そもそもいったいどこの国の人なんですか?」 と批判が噴出。

 さらに同コラムが、アメリカ産牛肉のBSE (狂牛病) 騒ぎの時は 「輸入を再開するなど論外だ」「徹底した対策をとれ」 と大騒ぎしていたこと、この新聞社自体が長年にわたり韓国に極めて好意的な記事を頻繁に書いていたことから、「何で韓国産の寄生虫キムチだけは特別扱いなんだ」「ダブルスタンダード (ダブスタ) ではないか」 と話題に。

 掲示板2ちゃんねる ではガイドライン スレッド 「なあに、かえって免疫力がつくのガイドライン」 が同日中に立ち、言い回しが テンプレート 化して様々に改変されたバージョンが作られることになりました。

 なお風邪の時にどんなものを口にしたら良いのかは個人差があるのでしょうが、一般的には身体を温め栄養があり免疫力を高めてくれるもの、かつ消化・吸収しやすくて胃や腸に負担がかからないもの (玉子酒とかおかゆとか) が良いとされます。 食事の消化吸収活動には莫大なエネルギー (カロリー) が必要で、成人が肉体を維持するために使う総エネルギーの7割が消化に関するものと云われています。 風邪のひき初めに体力を奪うような食事はあまり望ましくないでしょう。

 焼肉は栄養があり、脂があまり多くなければ消化も比較的しやすい食材ですし、ニンニクは血液の流れを良くして体を温めるとされます。 しかし野菜たっぷりのキムチと合わせてもりもり食べるのが風邪気味の時の特効薬なのかは、それが比喩表現だというのを勘案してもあまり広くお勧めできる方法ではないかもしれません。 まあ 精神論 としての効能は否定しませんし、気持ちはわからなくもないですが。

専門家のコメント部分はまともなのに、記者の結論は 「??」

 ところで本文中には、例えば専門家の コメント を引用する形で、「タミフルは本来インフルエンザ発症後の治療薬。それをこんなに大量に“予防内服”に使えば「免疫力が弱まって耐性タイプの新型ウイルスをつくりかねない。とんでもない話だ」 など、しごくもっともな部分も多い記事となっていました (というか、専門家のコメントを引用している部分では、かなりまっとうなことを書いている)。

 しかし、それをまとめた結論が 「インフルエンザと風邪の混同」「寄生虫キムチでむしろ健康に」 では、執 筆者 の理解力に疑問符がつくのは仕方のないところでしょう。 彼ら新聞記者が、日ごろいかに誤った認識、結論ありきの考え方で取材した先のコメントをパッチワークして事実を捻じ曲げるか、それが垣間見える社説となっています。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年11月30日)
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