同人用語の基礎知識

倍角/ 併せ字/ 合体文字

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ワープロ専用機などの表示・印字用の特殊な文字キャラクタ

 ネット掲示板 などにおける 「お遊び」 の 「倍角」「倍角文字」 とは、「イ」 と 「ヒ」 で「イヒ (化)」 や、「火」 と 「暴」 で 「火暴 (爆)」、「糸」 と 「冬」 で 「糸冬 (終)」 のように、半角カタカナや記号、一部の漢字などを組み合わせて無理やり作った別の字のことです。 「併せ字」「合体文字」 などとも呼びます。

 「外道」 などの場合、半角カタカナの 「タ」 と 「ト」 を併せて 「外」 とした 「タト道」 や、文字通り倍角となる 「タトえ首」 と表記することもあります。 「締切」 なら 「糸帝 七刀」 です。 また形状再現としては不完全 (「いちた」 がない) ながら、「死ね」 を 「タヒね」 などと書く場合もあります。

 こうしたものは、ネットならではの言葉遊びとして、顔文字 (文字顔)フェイスマークアスキーアート/ AA などと並ぶおなじみのお遊び的な表現方法です。

ワープロなどに存在した、フォントの 「倍角」

 本来の意味の 「倍角」 などの語源は、ワープロ専用機の 「倍角文字」 や 「ニ倍角」「横倍角」(フォントを横に伸ばして大きくする機能とそのフォント、色が使えなかったり、文字装飾の機能が少ない時代によく使われた機能) の名称から来ていて、さらにそのルーツは、活版印刷用の活字の種類から来ています。

 ネットなどで使う場合は意図的に自分の手で行うことから、それぞれ 「手動倍角」 とか 「手動ニ倍角」 などとも呼びます。 後に似たものは クサチュー語 や 「へた字」「ギャル文字」 などとも呼ばれています。

文字キャラクタが少なかったり装飾しづらい時代に大活躍

 我が国の パソコン通信 は1982年8月開局の 「Mac Event」や、1983年4月、日本初のパソコン通信サービスと呼ばれる大阪のデータブレーン社による 「COM・COM」、1984年1月の 「千代田・常磐マイコンクラブ」「Tele Star」 などなどから始まりました。 その後 ASCII-NETPC-VANNiftY-Serve東京BBS などの大手商用パソコン通信ネット局のテスト運用、開局が相次ぎ、全国に広まりました。

 初期の頃はモデムもなく、音響カプラで非常に遅い通信速度でしたし、扱えるデータ量も少なく、わずか数バイトで飛ばせるジョークとして 「倍角文字」 は重宝したんだと思いますね。 とりわけ初期は、半角カタカナしか使えないような 環境 もあり、シャレだけでなく実用性もありましたし、パソコン好きの若者同士のシャレ、冗談として自然発生的にあちこちで誕生していたようです。

 またパソ通の時代は、フォントサイズを自由に変えることも出来ませんでしたから、「糸冬 (終)」 などには実用的な意味も多少はありましたし、当時の文字コードに含まれない漢字を使った三国志の武将名を表示するためなど (張合βとか)、少ない文字キャラクタを埋める工夫の一種でもありました。 さらに インターネット の時代、検索エンジン避け のための工夫として、特定のキーワード (例えば ドラマ同人半ナマ の話題を隠す目的で、「特撮」 を 「牛寺才最」 と表記するなど) といった使い方も生まれています。

文字遊びは、文字を使い出した瞬間から生まれるものなのか…

 筆者 の実感でも、チャット などでも一行で済む 「倍角文字」 は、手軽で使いやすかった記憶があります。 色々と下らない倍角文字を作っては、せっせと辞書登録して使っていたものです。 そういえばありえない文字 (例えば 「え゙」 とか 「く゚」) なんてのも、感嘆符代わりに使うようなものが結構ありましたねw

 ただしこうした 「文字を併せて遊ぶ」 表現は、例えばネットなどのない大昔から隠語を表す一種の庶民の知恵として存在していましたし、文字の一部を似た別の文字と入れ替えて遊ぶのも (「ガンダム」 を 「ガソダム」「ザク」 を 「ザワ」 にするなど) 同人の世界では 「まがい物であるのをあらわすシャレ」 として、同人誌 の名前や同人誌文中なんかにも比較的初期から使われていたりしました。

 「倍角文字」 や 「併せ字」 というような呼び方は、パソコンやパソ通の普及し始めた 80年代後半から 90年代にかけて、自然発生的にあちこちで使われるようになった表現ですが、そもそも漢字自体が 「へん」 や 「つくり」 を組み合わせて構成されている訳ですし、平仮名カタカナはその簡略版です。 日本人はじめ漢字を使う人々にはこうした発想が元々備わっているのかも知れません (「吉原」 を分解し隠語で 「トロゲン」/ 土(ト)、ロ、原(ゲン) と表したり、逆に文字の組み合わせで顔を作る 「へのへのもへじ」 などは、その一例でしょう)。

 ちなみにこうした文字遊びが庶民の隠語や流行語として作られるだけでなく、時の権力によってあげつらわれるといったケースもあります。 例えば有名なところでは、江戸時代、名君と呼ばれる第8代将軍 徳川吉宗が治める享保7年 (1722年)、男女の心中が社会問題となり、その発端の一部に近松門左衛門などによる世話物・心中物と呼ばれる人形浄瑠璃の流行があったとして、上演や出版の禁止・差し止めがされましたが、その際の理由の一つに、「心中」 は武士の本分である 「忠」 の字を上下で切って逆さに繋げた形に通じるものがあって不心得である」 との真偽不明の難癖があったとの話もあります。 その後この 「心中」 という言葉は使用を禁止され、「相対死」 と呼ばれるようになっています。

機種依存文字を排する形で、インターネットにクサチュー語登場

 ところで当時のパソコン通信では、ホスト局によって使われる文字コードが異なり、基本的に身内ばかりで使うような 草の根ネット のような場所なら問題はないのですが、上記大手商用パソ通ネットなどでは、半角カタカナはじめ 機種依存文字 が含まれるケースの多いこうした表現を、お遊びにしてもネット上のエチケット (ネチケット) 以前のソフトウェア上問題アリの行動として敬遠する 雰囲気 がありました。

 そこでインターネットのいわゆるアングラ系匿名掲示板の住人によって、機種依存文字などを排した新しい 「倍角文字」 がまとめられました。 それが クサチュー語やクサチュー文字 です。 「クサチュー」 の語源は、この文字一覧データを制作された掲示板 「あめぞう」 の常連さん、腐れ厨房さんの固定ハンドル名に由来します (クサチュー語で書くと 「勹廾千ュ―言吾」)。

後にギャル文字やへた字などと装いを変えて流行

 こうした言葉遊びは 「面白い」 として、後には携帯電話の メール などを使う女子中高生に飛び火、「ギャル文字」 が登場しました。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2001年11月14日)
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