同人用語の基礎知識

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TRPGのみならず、多くのゲームのルーツ、「ゲームブック」

 「ゲームブック」(Game Book) とは、書籍の体裁を持ち、一定のルールに従い本文中にある選択肢などを選びながら読み進めて ゲーム (物語) を楽しむ、独特な形式の読み物のことです。 しばしば 「遊べる小説」「プレイするノベル」「選択型小説」 などと呼ばれます。 もっともわかりやすい説明としては、「本の形をしたロールプレイングゲーム (RPG)」 でしょうか。

ゲームブック 「火吹山の魔法使い」
代表的なゲームブック
「火吹山の魔法使い」(1982年)

 こうしたスタイルの読み物、シナリオは色々な種類があり、迷路やパズル、クイズなどが本文中に散りばめられ、ストーリーを追うような、「読書とゲームとが一体化」 したようなものもあります。

 一方で、「アドベンチャーゲームブック」「ペーパーアドベンチャー」 などと称される おたく な界隈で使われる 「ゲームブック」 に関しては、読者 の選択肢の選び方により物語が様々に分岐し、それぞれが異なった物語を楽しめ、また複数の結末、エンディングが用意された 「ストーリー重視」 のものとなります。

 これらは後のコンピュータゲームのRPGやアドベンチャーゲーム、ノベルゲームに近い、もしくは全く同じスタイルの 「書籍」 となりますが、同人 などの世界でもっぱら指すのは、こちらとなります。

 なお書籍単体で完結し完全に一人で遊べるものは 「ソロアドベンチャー」(ソロ) などと呼ぶ場合もあり、サイコロやボードゲームなどと併用した場合には 「ルールブック」 としたり、複数人で本を持ち寄り戦うような、対戦型のゲームブックなどもあります。

 「ルールブック」 として利用して多人数で遊ぶ形式の代表的なゲームスタイルには、テーブルトークRPG (TRPG) がありますが、後に登場したコンピュータゲームが 電源 (電気) を使うことから、これらと区別するため、まとめて 電源不要・非電源 と呼ぶ場合もあります。 「TRPG」(に使うルールブック) と 「ゲームブック」 とは、正確には似て非なるものなのですが、分かち難い密接な関係を持っています。

「同人」 の世界での 「ゲームブック」 の扱い

 「同人」 の世界でこれらの書籍を扱う場合には、大きく分けて2つのパターンがあります。 ひとつは、既存の作品やゲームブックを使った 二次創作パロディリプレイ を元にしたような SS の執筆や、攻略情報、論評などを行う ファン 活動です。 もうひとつは、「ゲームブック」 それ自体を新規に オリジナル で作る 「ゲームブック創作」 となります。

 こういった ジャンルカテゴリ を扱う同人活動やその制作物は、「非電源同人ゲーム」「電源不要同人」、あるいは 「創作ゲーム」「創作卓上ゲーム」 などと呼ばれます。

「ゲームブック」 の始まりと、遊び方

 こうしたスタイルの書籍の始まりについては、諸説あるようです。

 原型としてよく挙げられるものに、1979年〜1998年にかけて発表された アメリカの 「バンタムブックス」(Bantam Books) が発行した 「Choose Your Own Adventure」(1980年に学研より発売された日本語版タイトル 「きみならどうする?」 シリーズ) があります。 物語全体が数十から数百、中には千を超えるほど数多くの段落 (パラグラフ/ Paragraph) に分けられ、それぞれの段落ごとに選択肢が現れて、読者は自分が選んだ段落、ページに飛んで物語を進めるタイプのものとなります。

 例えば、

 目の前に古ぼけたドアがある、君はどうする?
   開けてみる → 15ページに進む
   開けずに待ってみる → 21ページに進む

といった感じになります。

 分岐後にまた分岐、その後また新しい分岐となり、物語の先読みができないスリルがあり、何度読んでも違った展開となる、独特なストーリーが楽しめます。 この 「きみならどうする?」 シリーズは日本でも大ヒットし、当時はこうしたスタイルの書籍が新しく発売されたり、ごく小規模なものは学習誌 (「月刊小学○年生」 みたいなもの) の別冊付録としてついてきたりしました。

 こうした形式の作品は後に発展し、例えばプレイヤー (読者) の体力の パラメータ やアイテムの所持の概念が現れて、メモ (アドベンチャーシート) や地図を取りながら読み進めるようになったり、先行して人気となっていた 「TRPG」 と共に、本のみで完結せず、サイコロを振って偶然や確率の概念を持たせるなどゲーム性が加味され、より複雑化してゆきます。

「すごろくブック」 と 「ゲームブック」

 ところで日本には 「すごろくブック」 と呼ばれる独特な本がありました。 サイコロを使ったり、「目をつぶって適当なページを開く」「次ページへの続きが 「あみだくじ」 になっている」 などの偶然の要素を持つ書籍タイプのもので、選択肢がなく 「すごろく」(双六) そのままに、運だけが頼りの低年齢向けのゲームブックのようなものでした (現在大手出版社などから出ている 「すごろくブック」 は、これとはまったく違います)。

 筆者が小学生の頃、こうした本が書籍ではなくノート形式 (塗り絵のページを切って一部分だけをめくり、着せ替えごっこをするような、「遊べる本」 というくくりの安価な子供向けのノート) のものが出ていた記憶があります。 また学校の先生が作ったり、先生に指導してもらい作った記憶もあります。 時代で云うと1970年代前半になるのですが、ここらはゲームブックの話題としてもあまり出てきませんね。

 1980年代になり、ポプラ社より発行された 「にゃんたん」「むちゃのねこ丸」(1988年) シリーズなどがありますが、年代的にあわず、ここらはちょっと謎となっています。

 「TRPG」 の初期のゲームブック作品とされるものに、サイコロを使う1976年発表の 「Tunnels & Trolls」 がありますが、1974年には 「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(Dungeons & Dragons/ D&D) も発表されていますし、その後の多くの 「ゲームブック」 が、基本的には 「TRPG」 や、後にはテレビゲームの 「RPG」 をしばしばベースとしています。 「ゲームと本との境界線をなくす」「本を使って何か面白いことができないか」 というのが、様々に実験されていた時代だというのもあるのかも知れません。

日本における 「ゲームブック」 の流行と発展

 学研の 「きみならどうする?」 シリーズの人気は先に見たとおりですが、純粋なゲームブックの形式の書籍などが人気になる一方、ボードゲームと組み合わされた 「TRPG」 の人気も盛り上がり、「新しい知的ゲーム、遊び」 として1980年代から中学生や高校生、さらに大学生などの若者の間で徐々に盛り上がってきました。

 直接の要因として、日本ではホビージャパンが熱心に紹介し、多くのファンが生まれた 「ダンジョンズ&ドラゴンズ」 による 「TRPG」 の人気と、「それが一人でできる」 というゲームブックの存在感がありますが、これとは別に、「ファミコン」(任天堂/ Family Computer) や 「メガドラ」(SEGA/ MEGA DRIVE) で発売された人気ゲームを原作とするゲームブックなども、ゲーム雑誌類などから登場して人気になっていました。

 その後は徐々にテレビゲームのソフトそのものに注目を奪われ影が薄くなってゆきましたが、この時代の 「おたく文化」 を考える上で、決して無視できない存在感を持っていたといって良いでしょう。

 ちなみにこれは蛇足ですが、いじめられっ子の少年が古ぼけた本を開いたら異世界と現実世界が交差し、本の中の異世界ファンタージエンの崩壊とお姫様を守るための冒険をする…という ファンタジー があふれる映画 「ネバーエンディング・ストーリー」(The Neverending Story/ Michael Ende/ はてしない物語) が、同じ頃の1985年3月16日に日本で封切られ大ヒットとなっています (制作した西ドイツやイギリスでは1984年に公開されましたが、その頃から日本でも大きな話題となっていました)。

 この映画や原作の物語、その書籍に 「ゲームブック」 の要素はありませんが、「本の世界に入り込む」「本の世界に読者が関与し冒険をする」 というイメージはゲームブックそのものとも云え、この映画のすばらしい映像表現とともに大いに 「おたく」 な人たちの想像力を掻き立て、高揚させていたのではと思います。

 ちなみの蛇足で、任天堂のファミコンや SEGA の SG-1000 が発売されたのは1983年、「ドラゴンクエスト」 と 「ファイナルファンタジー」 が発売されたのが1987年、家庭用の ビデオデッキ もこの頃に本格的に普及し、「おたく文化」 は黄金時代を迎えつつありました。

「ファイティング・ファンタジー」「ロストワールド」、名作の数々

 この頃の代表作としては、「TRPG」 をベースとし、こんにちゲームブックの代名詞・本家とも呼ばれているイギリスの 「ファイティング・ファンタジー」(FF/ Fighting Fantasy) シリーズの第一作、「火吹山の魔法使い」(The Warlock of Firetop Mountain/ 1982年/ スティーブ・ジャクソン・イアン・リビングストン/ 日本語訳/ 浅羽 莢子/ 図この項目冒頭) があります。

 またその派生シリーズ 「ソーサリー」(Sorcery!/ 1983年) 4部作、一風変わった対戦型のゲームブックとして一世を風靡した 「ロストワールド」(LW/ LOST WORLDS/ 1983年) シリーズ、「グレイルクエスト」(Grailquest/ 1984年/ 邦題/ ドラゴン・ファンタジー) なども、後年復刻版が相次いで発売されるほどの人気を持っています。

和製ゲームブックワールドが一気に開花

ゲームブック 「悪魔に魅せられし者」
ドルアーガの塔」 3部作
第一弾 「悪魔に魅せられし者」
(1986年)
ゲームブック 「クイーンズブレイド」
クイーンズブレイド」
「流浪の戦士レイナ」(2005年)

 これらは海外のゲームですが、日本語版が発売され人気となると、「ドルアーガの塔」(ナムコによる同名テレビゲームのゲームブック版/ 1986年/ 図右上) や 「ネバーランドのリンゴ」(林友彦/ 1986年) など、国産の優れたゲームブックが登場。 ゲームブックブームを強力に牽引してゆく動力源となりました。

 なおコンピュータゲームとしての印象の強い人気タイトル、「ドラゴンクエスト」(ドラクエ) も初期の頃にはゲーム本編を原作としてゲームブック化されていました。

 中でも 「ドラゴンクエストII」 は名作の呼び声も高く、マンガアニメ など様々なメディアに登場したドラクエの中でも、根強いファンを持つ作品のひとつとなっています。 当時友人がハマってやってました…。

 2000年代以降の特筆すべき作品としては、前述した 「ロストワールド」(LW) の日本語版 (復活 「ロストワールド」 シリーズ) として登場し、ゲーム内容などは本家を踏襲しながら日本独自のビジュアル重視で人気作となった 「クイーンズブレイド」(QB/ クイブレ/ Queen's Blade/ 2005年/ 図右下) があります。

 ホビージャパンによって発売されたこのシリーズは、キャラクター ごとに1冊、本文にふんだんに人気イラストレーターの美少女剣士の イラスト が配され、ゲームの楽しみのほか、当代一流の実力派 絵師 の画集のような趣もあり、コミックや小説になったり、アニメ化などもする大ヒットとなりました。

「ゲームブック」 の衰退と、様々な環境の変化

 1980年代に高い人気を誇ったゲームブックや TRPG も、1990年代となると勢いがなくなり、家庭用ゲーム機の RPG や、パソコン用のアドベンチャーゲーム、ノベルゲームにその立場を明け渡すことになります。

 似たような作品がたくさんでてファンらが食傷気味となったこともありますが、とりわけ1990年代中ごろの 「ノベルゲーム」 のブームは強烈で (アニメやマンガ全体のジャンルの勢力図すらも、大きな影響を受けた)、誰でもパソコンを持っている時代となると、様々なノベルゲーム制作用のツールなども登場し、既存作品のファン活動、ゲーム制作なども、「要電源」 が主流となって行きました。

 一方で、2000年4月2日には、トレーディングカードブームなどの影響もあり 「電源不要」 の オンリーイベント である 「ゲームマーケット」 が立ち上がり、意欲的なオリジナルゲームを制作する 同人サークル などが多数詰め掛けています。 1990年代から2000年代にかけ、「同人」 や 「おたく」 界隈が全体として膨張する時期だったこともあり、「TRPG」 や 「ゲームブック」 自体はゲームの主流からは外れたものの、数多くのファンや力のあるサークルなどが 「電源不要」 のジャンルに数多く生き残っていたということなのでしょう。

 サークルによっては安価な100円ショップなどでゲームのアイテム作りのための素材を調達して、凝ったカードゲームやボードゲームを作る一方、「ゲームブック」 自体は 同人誌 のような 「書籍」 の形にせず、フロッピーディスク や後には CD-ROM の形で 頒布 するケースなどもあります。

 書籍の電子化なども進んでいますが、パソコンや電子書籍ビューア必須のある意味 「要電源の電源不要」 といった頒布の形もあり、その独特の進化はまったく新しい何かを、これからまた作り出してくれるのかも知れません。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2010年1月14日)
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