ノロノロ対応して行列を牛歩させるとサークルの大手度がアップ!?
「牛歩サークル」「牛歩」 とは、「同人誌」 を買うためにやってきたお客さん (「一般参加者」) などへの対応をわざとノロノロとやって、自分の 「サークルスペース」 前に行列を作らせ、「行列ができるほど人気があるんだ」 などと回りに思わせようとする 「同人サークル」 のことです。 また悪意はないものの、単純に対応が下手で結果的に行列を作るようなサークルを揶揄する時にも使われる言葉です。
一般的に 「同人誌即売会」 などのイベントでは、人気のあるサークルには購入希望者が殺到し、スペース前に人だかりや行列ができるものです。 またその行列の長さなどが、しばしばそのサークルの人気度、いわゆる 「大手サークル」 の証明、あるいは 「勲章」 のように捉える向きもあり、こうしたある意味で姑息な対応をするところが出るようになりました。
牛歩テクニック、あれこれ
実際のやり方としては、購入希望者1人1人と短くない世間話をいちいち交わす、ちょっとした 「オマケ」(キャラクターの描かれた 「しおり」 とか 「便箋」 など) を購入者にプレゼントする際に、いちいち面倒な 「くじ引き」 や 「あみだくじ」 を引かせる、同人誌のページの一部 (裏表紙など) にその場でサインペンなどで手書きのイラストを描く…などがあります。
ただしこれらは、「とても親切でファンサービスに熱心なサークル」 との区別がとてもつけにくく、「悪意の牛歩」 なのか、「単にバカ丁寧で良心的な、サービス旺盛サークル」 なのか、判断が微妙になる場合もあります。 「同人誌」 の頒布数が日に数十部程度の弱小、無名のサークル (「ピコ手」 など) なら、これらの対応を行っていても会場を混雑させ、イベントスタッフの手を煩わせるような長大な行列などできませんし、「一生懸命サービスしてくれるサークル」 との好印象はあっても、叩かれるべき 「悪行」 とも思えません。 これらのことを行っているサークルが、全て牛歩サークルという訳ではありません。
牛歩サークル、その迷惑度とは?
一方で、悪意のある 「牛歩」 の場合、その影響は深刻です。 「サークルスペース」 は長机1本を左右で2分割して1スペースとする程度の非常に小さなものなので、数人が人だかりになると、それだけで隣のサークルの前を塞いで迷惑になったりますし、通路の真ん中付近に 「配置」 された 「サークル」 が長い行列を作ってしまうと、人の流れの動線をふさぎ、会場内の混雑に拍車をかけてしまいます。 また限られた時間内に希望のサークルスペースを回ろうとしている 「一般参加者」 も、ここで取らなくて済む余計な時間を食わされて迷惑をこうむることになります。
まあ本当に人気があって同人誌購入希望者が殺到しているのならサークル側に責められるべき問題があるとも云えませんし (誰でも知っているような大手が誤って島の真ん中などに配置され混雑が発生すると、むしろイベント運営側が批判されたりもします)、ある意味仕方がありませんが、それを意図的にやっているとなると、これはもう明白に 「迷惑行為」、さらには 「イベントの妨害行為」 でしょう。
牛歩サークル、言葉として生まれたのは1980年代末
「牛歩」 そのものは、歩みが遅い、鈍い、などという意味の言葉ですが、これには 「遅い」 というニュアンスの他に、「時間稼ぎ」 というネガティブなイメージがついて回っています。 と云うのは、政治の世界では、特定の法案などを通したくない野党などが、「牛歩戦術」 と呼ばれる国会対応をしばしば行い、それがマスコミなどで否定的に報じられることにも理由があります。 「言論の府で、言論ではなくノロノロ歩きで戦うとは何事だ」 というわけです。
こうした国会や議会での 「牛歩戦術」 は、議会制民主主義の国では昔から世界中で行われているようで、日本では小選挙区法案を阻止するために 1929年 (昭和4年) に帝国議会で立憲民政党が行ったものが、その最初とされます。 以降、終戦を挟んで1940年代を中心に、何度か大きな法案で行われてきました。
その後はしばらく長いブランクがあったのですが、1987年 (昭和62年) に売上税法案の採決 (後の消費税) の阻止のために社会党や共産党、公明党、民社党、社民連などが国会では実に 1947年の自由党の牛歩以来 40年ぶりに 「牛歩戦術」 を復活。 翌年 1988年にも同じ消費税法案を防ぐために大規模な牛歩戦術が取られ、ある意味でコミカルな牛歩の様子と共に、当時はちょっとした流行語にまでなっていました。
転じて、わざとノロノロ対応して行列を作らせるサークルが、「牛歩サークル」 と呼ばれるようになりました。
牛歩サークル以外にも、困った 「大手ぶりっこ」 サークルが…
言葉としての 「牛歩サークル」 は 1988年頃から使われるようになりましたが、こうした方法を使うサークルは、実はそれ以前、比較的古くから存在します。 「同人誌」 の頒布数などは自己申告、公称の世界なので、「大手」 っぽく見せるためには、それ以外のイメージが大切なんでしょう。 また実際はたいした 「牛歩」 ではないのに、列に並んでいる短気な購入希望者が、ことさらに 「あのサークルは牛歩だ」「おかげでひどい目にあった」 などと吹聴することもあり、「牛歩サークル」 という 「言葉」 が、一人歩きしている場合もあります。
現在では 「パソコン通信」 や インターネットの普及により、どのサークルの人気があるのか、読者からの意見や話題の多さで推し量ることもでき、安易な牛歩はすぐに発覚しメッキが剥げるものですが、80年代前半やそれ以前はそうした情報交換の場がほとんど存在せず (まぁコミケにずっと通ってるような人は、どこが人気があるのか、少なくとも自分の好きなジャンルでは何となくわかったりするものですが)、「行列の長さ」 こそが、人気サークルの一番分かりやすい証明のようなインパクトがありました。
このほか、例えば大量の 「同人誌」 を持ち込み、それが全て売れた (ハケた) と思わせるために、空のダンボールを持ち込んでスペースの後ろに積んだり、過去の同人誌のタイトルを 「○○は売り切れました」 などと大きく書いてスペース前にいくつも貼ったり、サークル主催者が、やたらきらびやかで高価そうなブランドの服やアクセサリーで着飾っていたりと、「売れている」「人気がある」 と錯誤させるための様々な方法がありました。
ここらは男性向け同人の世界でも聞く話ですが、とりわけ多かった印象があるのは、女性向けの女性サークルによる 「牛歩」 でしょうか。 ここらはやっぱり、「他のサークルとの見栄の勝負」 みたいなところもあるんでしょうか。 まぁ 1980年代はコミケなどでも女性のサークルや一般参加者が圧倒的に多かったですから (現在でも女性の方がずっと多い)、鞘当もそういうのが目立つんでしょうね。
なお三国志関係での 「牛輔サークル」 は、全くもって関係がありません。


