マンガやアニメの舞台が聖地化…そこで町おこしならぬ 「萌えおこし」
「萌えおこし」(萌え起こし/ 萌え興し) とは、地域活性化のための 「町おこし」「村おこし」 などを、萌え の力を使って行うことです。 具体的にはその町や村を舞台とした マンガ や アニメ の人気を借りて観光客を呼び込んだり、町や村のイメージキャラを 「萌えキャラ」 にする、キャラ のモニュメントや記念碑などを作って観光の目玉にするなどです。
こうした言葉が大きく使われるようになったのは、2007年のアニメ 「らき☆すた」 の人気により、埼玉県の鷲宮町が 聖地 と呼ばれ、ファン が殺到し、専門誌だけでなくテレビや一般紙なども報道し、大きな注目を集めるようになってからでした (後述します)。 それまでは、もっぱら 「アニメやマンガを使った町おこし」「萌えキャラによる町おこし」 などと呼ばれていましたが、前後して 「萌えおこし」 という言葉が使われるようになりました。
アニメやマンガキャラを使った客寄せは昔からありますが…
こうした試みで全国最大規模で、かつ有名なところでは、1989年の 「緑と文化のまちづくり」 の提言を元に、ゲゲゲの鬼太郎に登場する人気妖怪のブロンズ像を町の通りに配置した鳥取県境港市大正町の 「水木しげるロード」(鬼太郎ロード/ 妖怪ロード) の整備 (オープンは1993年) が、アニメやマンガを利用した常設の大きな 「町おこし」 として知られています。 オープンしたばかりの時にブロンズ像の盗難騒ぎが起こり、それがマスコミで大きく伝えられて話題となっていました。
オープン時には 23体だったブロンズ像も、2006年段階で 120体となり、各種イベントも開催。 2008年には累計観光客が 1,000万人を突破するなど、大いに盛り上がっているようです。 こちらは、漫画家の水木しげる (1922年3月8日〜) の生まれ故郷が境港市だったことから企画された 「町おこし」 でした。 2003年3月8日には、ロードの最終地点に 「水木しげる記念館」 もオープンしました。
新潟県新潟市の古町通り、ふるまちモール5 の 「水島新司マンガストリート」(水島ロード/ ドカベンロード) もよく知られています。 新潟市出身の漫画家、水島新司にちなんで整備されたもので、「ドカベン」 や 「あぶさん」 の人気キャラクターの銅像が、通りのあちこちに設置されています (こちらも、岩鬼がくわえている葉っぱが盗難にあい、大きく報道されていましたね)。
ところで、いわゆる 「バブルの崩壊」 を間に挟んだこともあり、90年代はこうした規模の比較的大きな 「町おこし」(ふるさと創生事業) は、計画されたものの頓挫したものが結構ありました。 もっとも有名なのは、神奈川県の 「手塚治虫ワールド」 の計画中止でしょうか。 「○○ストリート」 のようなものと違い、維持管理に莫大な費用がかかるテーマパークは、地方の財政悪化により急速に消えて行きますが、同じ頃に多数立ち上がった補助金による官製テーマパークの多くが破綻していますので、計画中止を残念に思う一方、「手塚さんの名前を汚さずに済んだ」 と考える手塚ファンは、多いようです (筆者 もそうですがw)。
なお資料館や記念館のようなものは各地に様々なものがあり、例えば前出の手塚治虫の場合には、手塚が5歳から24歳までの多感な時期を過ごした兵庫県宝塚市に1994年4月25日にオープンした 「宝塚市立手塚治虫記念館」 が有名です。 またアニメスタジオ、「スタジオジブリ」 の 「三鷹の森 ジブリ美術館」 も人気を博しています (2001年10月1日開館)。
ちなみに一風変わったアミューズメントパークとして、千葉県の 「バンダイミュージアム」 もありました。 等身大ガンダムやセーラームーン、ケロロ軍曹などなど、バンダイが玩具などの版権を管理する多数のキャラクターが集う巨大ゲームセンターのような施設でした (現在は閉鎖)。
全国各地に、アニメやマンガを利用したモニュメントなどが存在
なお単体でキャラの銅像やモニュメントが建つ レベル の 「町おこし」 は、実はかなりの数があり (ぜんぜん盛り上がってないのも結構あります)、また 「町おこし」 とはちょっと違いますが、三鷹市の水道局の ポスター、交通機関やらのマナー向上ポスターなどにアニメキャラが使われるケースは、ほとんど無数にある感じです。
さらにゴールデンウィークや夏休みなどの休暇シーズンになると、マンガやアニメを題材とした特別列車が走ったり、遊園地などで特撮キャラや魔法少女系アニメの大規模な着ぐるみショーが演じられるなど、子供向け、家族向けの訴求力の高い コンテンツ としてお馴染みとなっています。
あからさまな 「萌え」 で云えば、みなべ町の びんちょうタン
より 「萌え」 に近いケースでは、備長炭の生産で有名な和歌山県日高郡の 「みなべ町」 による、「びんちょうタン」 が有名です。 2003年5月7日に 「あぶっちゃうヨ! びんちょうタン」 として登場したアルケミストの企画による備長炭を萌え 擬人化 した 「びんちょうタン」 は、みなべ町の 「みなべ川森林組合」 により 2004年1月から 公式 キャラクターとされ、またアニメ化するなど大人気となりました。
しかしこのケースでは、町やその団体が主体となっての 「町おこし」 ではなく、あくまで旧来の大河ドラマ舞台による町おこし、タイアップによる観光地化などと同じ、メディア側主導の形でした (アルケミストの担当者がみなべ川森林組合に売り込みをかけての採用でした)。
イメージキャラを作ったり、それが萌えキャラ化したり、作者 や作品ゆかりの地が観光地化するなどは、実はかなりの歴史があります。 極論すれば、「ディズニーワールド」 もそうですし、アニメやマンガ以外の作品ですと、有名作家の生家が記念館となったり、あるいは大河ドラマの舞台、寅さん映画における 「葛飾柴又」 など、枚挙に暇がありません。
まほろちゃん、シモンちゃん、アンナちゃん、電波りようこ、うじゅ…いろいろいますが
こうした既存のキャラを使ったものとは別に、新しいイメージキャラを作るケースもたくさんありますが、どこからが 「萌え」 で、どこからが旧来のイメージマスコット (ゆるキャラ…なんて云いますが) なのか、境目が難しい問題点はあります。
これは間違いなく萌えキャラだと、ネット などでも話題になったところですと、佐賀県佐賀市の子供向けサイト 「さがしキッズステーション」 の少女キャラ 「まほろちゃん」(少年キャラ、「大和くん」 とペアの、佐賀市大和町のキャラでしたが、町村合併でいったんサイトからいなくなり、その後復活)、国蝶のオオムラサキを擬人化した少女 「シモンちゃん」(羽の色や名前がオス (男性) となっているが、設定 の上での性別はなし、見た目は完全な女) を公式ウェブサイトのマスコットキャラクターに採用している茨城県下妻市のケースがあります。
また青森県むつ市むつ警察署の公式サイトのマスコットキャラ 「アンナちゃん」(漫画家、武井宏之氏のデザイン/ 恐山出身のキャラクター)、亀有信用金庫の 「夢叶ちゃん&たまるくん」、極めつけは 京都府京都市の 「東映太秦映画村」 の公式キャラ、「からす天狗 うじゅ」 などが知られています。
さらに一風変わったところでは、総務省の電波利用 電子申請・届出システムのマスコット 「電波りようこ」(仮名/ 魔女風の萌え少女) なんてのや、全国畳産業振興会の 「畳ビズ」(畳のエプロンをした3次元のメイドさん2人が歌い踊る) などもあります。 これらの多くはグッズ類が作られたり販売されたりはしていません (それぞれの公式マスコットではなく、あくまで公式サイトのマスコットに留まっています)。
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うご農協の 「あきたこまち」 5キロ入り 2,730円 (税込) |
一方で、いかにも狙って作った 「秋葉原土産」 的な商品ではなく、伝統的な商品のイメージキャラや包装パッケージを 「萌え化」 する場合もあります。 有名なところでは、秋田県羽後町の農協や酒販店などが既存の商品に 「萌えキャラ」 を起用するケースが挙げられます。
突出する秋田県 「うご」 の企画力
うご農協が 2008年9月22日に人気イラストレーターを起用したパッケージを使ったお米、「あきたこまち」 を発売すると、ネット通販で注文が殺到。 さらに酒販店らによる焼酎 「花嫁道中」、同年12月に農事組合法人こまち野の販売するイチゴには、「うご野いちごちゃん」 なるキャラクターも 新規 作成された上で段ボール箱に印刷 (いずれも西又葵さん イラスト)。 どれも記録的な販売量となり、ネットを中心に大きな話題となりました。
秋田県羽後町では、これの前段として、夏祭りでの 「盆踊り」 をテーマとした美少女イラストのコンテスト 「かがり美少女イラストコンテスト」 が2007年7月に同町のお祭りの企画として開催されていました。 その評判が後の 「うご萌え攻勢」 に繋がりますが、コンテストで集まったイラストなどはポスター化され、それぞれのポスターの背景に町の風景や特産品が掲載されたことにより、観光客も集まるようになり、新聞報道などでも 「地域活性化のモデルケース」 として紹介されるなど、大きな話題となっていました。
公式サイトを彩る、様々な 「萌え風」 キャラ
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さがしキッズステーション まほろちゃん |
みなべ川森林組合ウェブサイト びんちょうタン |
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むつ警察署ウェブサイト アンナちゃん |
茨城県下妻市ウェブサイト シモンちゃん |
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総務省 電波利用 電子申請・届出システム 電波りようこ |
東映太秦映画村ウェブサイト からす天狗 うじゅ |
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全国畳産業振興会ウェブサイト 畳ビズバンド |
亀有信用金庫 夢叶ちゃん |
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湯浅醤油醸造元小原久吉商店やまじゆあさ サイト みったん |
かがり美少女イラストコンテスト実行委員会サイト |
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うご野いちごちゃん ウェブサイト うご野いちごちゃん |
JAうご 「あきたこまち」 サイト |
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自殺サイト なぜ死んではいけないのですか? 浄土真宗 親鸞会ウェブサイト |
ちた地域若者サポートステーション ウェブサイト 知多みるく |
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鹿児島県 ウェブサイト 税務課ページ 自動車税をおさめ隊 |
大阪 日本橋プロジェクトNP「音々」 音々(ねおん) |
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東武鉄道 ウェブサイト 姫宮なな |
京浜急行電鉄株式会社 ウェブサイト けいきゅう♪ドレミたん |
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沿岸バス株式会社 ウェブサイト 豊岬あゆみ & 南沢みるか |
新感覚こみゅにけーしょんサイト[たちぷろ] 立川たっちたん |
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女子高生キムチ ウェブサイト |
萌えキャラ、いしおか恋瀬姫ムービー 石岡商工会議所青年部 |
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富山観光アニメ プロジェクト ウェブサイト 「泣かせる空に会いたい」 |
ボートピア梅田マスコットデザイン大賞 ウェブサイト 「桜」 稲垣早希 |
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徳山競艇 中国地区選手権競走 特設ウェブサイト 瀬戸ノ海龍 |
徳山競艇 徳山クラウン争奪戦 特設ウェブサイト アマユコット王妃 |
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東京・西八王子 松栄山 了法寺ウェブサイト | コスぷらっしゅ×京都競馬場 JRA ウェブサイト |
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自衛隊徳島地方協力本部 ウェブサイト | 自衛隊徳島地方協力本部 ウェブサイト |
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水戸納豆カレー ウェブサイト | ミタキハウス 酒屋みたき ウェブサイト |
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瀬戸農産物加工企業組合 ウェブサイト |
U.S.FORCES JAPAN (在日米軍) ウェブサイト 「わたしたちの同盟」 |
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足利ひめたま製作委員会 公式さいと | 京都府統計データ 平成22年国勢調査サイト |
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神奈川県警・瀬谷警察署公式サイト 瀬谷野あじさい・瀬谷野けやきの双子 | 南海フェリー ニューキャラクターキャンペーン |
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SHIZUOKA 萌えしょくプロジェクト ウェブサイト |
ワイン娘 (ワインではなく、ぶどうを擬人化) |
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おおいた萌えおこしプロジェクト (ただし自治体主体の企画ではない) |
いすみ鉄道 “萌え妖精”の「上総いすみ」(かずさいすみ) |
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自衛隊岡山地方協力本部 ウェブサイト ジエイのお仕事 | 讃岐Project ウェブサイト |
「萌えおこし」 を有名にした作品が登場
なおこれらの動きは、前述した通り、当初は 「アニメを使った町おこし」「萌えキャラ利用」 などと呼び方で、「萌えおこし」 とまでは、呼ばれていませんでした。 そんな中、大きな注目を集め、広く 「萌えおこし」 という言葉をキーワードとして広めた 「事件」 が起こります。
アニメ 「らき☆すた」 と、その舞台、埼玉県鷲宮町です。
聖地巡礼 (聖地探訪) ブームを巻き起こした 「らき☆すた」 の鷲宮町
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らき☆すた ランチ&公式参拝 in 鷲宮 告知 |
いわゆる 聖地巡礼 (舞台探訪) といった文化が、おたく 界隈では昔からあります (オタク系以外でも、特定作品のファンらが昔からやっていますが)。
しかしこの言葉が一般マスコミも注目する形で大きく広まった理由のひとつに、2007年のアニメ 「らき☆すた」(美水かがみ/ コンプティーク/ 角川書店/ 2007年4月〜2007年9月/ 原作連載は2004年1月〜) の人気と、この作品に登場する柊姉妹 (二卵性双生児の柊かがみ、柊つかさ、他に姉が2人いる) の住む神社 (鷹宮神社) のモデルとなっている埼玉県鷲宮町の鷲宮神社への初詣・参拝客の大幅な増加があります。
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「らき☆すた」 の聖地、「鷲宮神社」 |
この神社の存在や、そこに訪れることなどは、元からネットなどでコアなファンには知られていて注目されていたのですが、アニメ雑誌 「月刊ニュータイプ」(Newtype/ 角川書店/ 1985年3月8日創刊) が 「聖地特集」 を組んだことにより (2007年8月号 「らき☆すた的 「遠足のしおり」 ポスター」 の付録なども)、さらにファンらが殺到。
これを受けて、鷲宮町や隣の幸手市 (主人公 こたなの住む町のモデル) の商店街の若手などが主体となって、同年から様々なグッズ類やイベントを企画しました。
2007年12月2日には、聖地化されていた鷲宮神社で公式参拝 (らき☆すた ランチ&公式参拝 in 鷲宮/ らき☆すた原作者やアニメ声優などが参加するイベント) が開催。 記念グッズの発売や町ぐるみのサービス、記念碑の建立などが行われ、熱心なファンおよそ 3,000人〜3,500人が集結し、この頃からネットや一部マスコミなどでも、「萌えおこし」 という言葉が広く使われるようになったようです (時期が重なる前述した秋田県 「うご」 と共に語られるケースも多かったです)。
さらに翌 2008年には、鷲宮神社の初詣客が、昨年の 13万人から、好天も手伝ってか一気に倍増の 30万人に膨れ上がり (実に 17万人増)、萌えを使った町おこし、「萌え起こし」 のモデルケースとして、他の自治体の注目も大きく集めることに。 その後作品に登場する柊一家を、鷲宮が 「住民登録」 し、住民票交付も行うなど、大きな話題となりました。
「らき☆すた」 萌えおこし大成功の影に
ところでなぜ 「らき☆すた」 の 「萌えおこし」 は、これほどまでに成功したのでしょうか。
鷲宮神社初詣三が日参拝数 (万人/ 主催者発表) | ||
2005 | ![]() ![]() |
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2006 | ![]() ![]() | 9万 |
2007 | ![]() ![]() | 13万 |
2008 | ![]() ![]() | 30万 |
2009 | ![]() ![]() | 42万 |
2010 | ![]() ![]() | 45万 |
2011 | ![]() ![]() | 47万 |
2012 | ![]() ![]() | 47万 |
2013 | ![]() ![]() | 47万 |
2014 | ![]() ![]() | 47万 |
らき☆すた」 コンプティーク連載開始 2004年1月号〜 「らき☆すた」 テレビアニメ 2007年4月〜9月 ※数値は主催者発表 |
ひとつには、訪れる人をもてなすイベントを鷲宮商店街の若手と、この騒ぎを聞きつけた、角川とつながりのある一般市民 (権利関係の調整を行った)、さらに コミケ のスタッフをしたこともある熱心な 「らき☆すた」 ファンが、ボランティアで運営や盛り上げに協力したことが大きかったようです。
ネットの 掲示板 などのルポを見る限り、「ハメを外す不心得者には毅然とした態度」「しかし普通のファンには心づくしのサービスと温かいおもてなし」 さらに 「無関係な一般客とわけて、きちんと管理」 がされていて、その手際のよさ、手作り感に、「行ってよかった」「また行きたい」 と思わせる魅力があったようです。 筆者も訪れて、同じような感想を持ちました。 また地味ながら 「2600年の歴史がある、関東最古の大社」 という由緒ある神社という付加価値も、興味を引くプラスアルファとして働いていたようです。
一般に町おこしなどを行うと、例えば大河ドラマの舞台となった…なんてキャンペーンですと、鉄道や旅行会社、NHKなどの放送関係と広告代理店などが組み、全体の音頭を取って 「観光ビジネス」 としての 「町おこし」 をする場合が多いものです (自治体の若手が主体となってやるような、手作りの町おこしは、権利関係でドラマの名称を使えなかったりします)。 当日売られる食べ物や飲み物が割高 (ぼったくり価格) だったり、取ってつけたような安普請の記念撮影用セットや臨時で作られた仮設の施設などでイベントを行ったりし、しばらくたつと何もなくなってしまったりします。 その点でも 「らき☆すた」 のイベントは異色だったようです。
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TOMYTECの 「鉄道むすめ」 鉄道会社の制服のフィギュアで ゲーム化などの他、実際に駅の キオスクなどでも販売 |
大河ドラマやアニメに限らず、どんな作品にも流行り廃りはありますし、「らき☆すた」 の人気とファンの来訪が今後もずっと続くことはないでしょう。 従って今までのこの種の盛り上がりでは、「流行っているうちに稼ごう」「今のうちに儲けよう」 と、無理な価格設定でグッズや飲食を提供するなどして、ファンらの反感を買う場合も多かったものです。
その点、「よく分からないけど、若い人がたくさん来るから、おもてなししよう」 なんて素朴な手作りイベントだったのが、鷲宮の人気の秘密でしょうか。 2009年頃からは、きっかけとなった 「らき☆すた」 の人気やそのファンという枠を超え、年末のコミケ終了後に全国から集まった参加者が訪れる 「アニメファンの聖地」「おたくの聖地」 のような性格をも持ち始めています。
また毎年秋に行われる秋祭りの 「土師祭」(はじさい) では、ファンらが集い作った 「らき☆すた神輿」 も登場し、コスプレイヤーなども集結。 練り歩くさまは別名 「オタクニカルパレード」 とも呼ばれています。
大手代理店などが入っての 「町おこし」 ですと、版権利用料やロイヤリティの関係で、結果的に 「ぼったくり価格」「短期間限定」 にせざるを得ないのだと思いますが、せっかく興味を持って訪れてくれた若いファンに、悪い印象を持って帰られても 「町おこし」 としては失敗でしょう。
町おこし、地域おこしとしてお祭りやイベントの開催も
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商品コラボの枠を超え、イベントやお祭りが開催 されるケースも (長野県飯田市のインターナショ ナル・フィギュア・マーケット (IFM/ 2007年〜) |
「らき☆すた」 による鷲宮の 「萌えおこし」 の成功を見て、後を追う自治体や商店街も多いようですが、くれぐれもファンを裏切るようなイベントや安易な商品コラボによる 「町おこし」 には、しないで欲しいと思います。
というか、「おたく」 はそういうことへの嗅覚はとても鋭いものですし、ネガティブ な情報はネットを通じて瞬く間に広がりますから、成功はおぼつかないと思います。
萌えおこしが全国紙で度々好意的に扱われたことにより、「商売や企画のための投資として上の人を説得しやすくなった」 ことも手伝い、適当な絵師を見繕い、地域活性化のNPO法人などを立てたり既存団体と組んで、自治体や商工会に萌えおこしを提案、プロデュースする企業なども雨後のタケノコのように生まれています。
様々な企画が出ては消えしていますが、2009年以降のイベントや企画の大半が、厳しい言い方をすると失敗している現実もあります。 広報や認知度上昇あたりが目指すべき成功ラインであって、安易に既存商品に適当な萌え絵をつけてぼったくり価格で売るだけ (萌え商品コラボ) では、悪名が広がるだけでしょう。
イベントやお祭りを開催し盛り上げるのはとても大変ですが、地域に密着した 元ネタ となるアニメ作品があるとか、イベントや催しと一緒に盛り上げるなどがない限り、この 「商法」 も先が長くない印象です。
コミックマーケットの地方開催で町おこし? コミケットスペシャルが開催地を公募
世界最大の 同人誌即売会 イベントである 「コミケ」 が、夏と冬の年2回、東京ビッグサイト で開催する通常のコミケに加え、不定期に開催している スペシャル の開催場所を公募すると 2008年9月15日に発表。 コミケットスペシャルは、過去にも沖縄の 沖縄コンベンションセンター や有明などで開催していますが、2010年3月21日に開催予定の次のコミケットスペシャルを地方で開催し、その地域の活性化に役立ててもらおうとの意欲的な試みとなりました。
その後に開催場所として茨城県水戸市が選ばれ、メイン会場となる 伊勢甚泉町北ビル を中核とし、町全体を使ったイベント 「コみケッとスペシャル5」 が開催されました。
そしてついには日本全体が 「萌え」 の力で…
かねてから 「アキバ系」 と呼ばれていた自民党麻生太郎議員は、2007年の外務大臣時代に 「マンガのノーベル賞」 となる 「国際漫画賞」 を創設するなど、熱心にアキバカルチャーの推進を図っていました。
翌2008年、総理に就任。 未曾有の経済危機の中、ついに2009年4月になり、新しい経済対策のひとつとして、アニメやマンガ、ゲーム の殿堂、「国立メディア芸術総合センター」 を117億円で都内に整備すると文化庁が発表。 アメリカ大統領の経済対策、「グリーンニューディール」 に対して、萌えニューディール などと極々一部で呼ばれる事態となっています。
ただしその後自民党は選挙で大敗、政権を失ってしまい、計画は頓挫してしまいました…。 しかしNHKまでが 「アニメの殿堂」「国営漫画喫茶」 などとテロップまで出して批判してたのは酷かったですね。 あたまに 「いわゆる」 とつければ、正規の名称も内容に対して正しい名前も使わなくて良く、反対陣営やマスコミがネーミングしたネガティブ名称で呼称して良いということなんでしょうか。
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