同人用語の基礎知識

もう疲れたよパトラッシュ
パトラッシュ、疲れたよ

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ルーベンスの絵の前で… 「もう疲れたよパトラッシュ」

 「もう疲れたよパトラッシュ」 とは、体や精神がヘトヘトに疲労困憊した時、希望や意欲、モチベーションが大きく喪失した時に、おたく腐女子、あるいはごく普通の多くの日本人がついつい無意識に口にする愚痴、弱音のセリフです。 細かい言い回しでバリエーションがありますが、基本的には 「パトラッシュ」 と 「疲れたよ」 がセットになっていればこの言葉となります。 なおさらに悲惨な場合は、このセリフの後に 「ぼく、なんだかとても眠いんだ…」 が続きます。

 元ネタ は言わずと知れた国民的 アニメ作品 「フランダースの犬」(1975年1月5日〜12月28日/ 全52話/ フジテレビ系列/ 世界名作劇場) の主人公、ネロ・ダースの最終回 (「天使たちの絵」/ 1975年12月28日放送) における作中セリフからです。

 やっと辿り着いた憧れのルーベンスの の前で、運命をともにする愛犬パトラッシュに語りかけるこのセリフ (正確には 「パトラッシュ、疲れたろう…僕も疲れたんだ…なんだか、とても眠いんだ」) は日常生活でもすこぶる使い勝手がよく、ギブアップもしくはその寸前ですの決めゼリフとして定番のものでしょう。 ネット の世界では初期の頃から頻繁に使われる言い回しですが、悲惨さをアピールすると同時に愚痴として自分を慰めることもできるので、ネットなどない時代から一人の時につい口にしてしまう人が続出するほど、日本人の血肉になった言葉と云えるでしょう。

 このセリフがここまで広まったのは、この作品の最終回が視聴率30%以上という驚異的な視聴者数を持っていたこと、「懐かしアニメ特集」 のようなテレビ番組や雑誌企画で、このセリフが数限りなく取り上げられてきたこと (やり過ぎて、ハイジ沖田ネロ などと呼ばれ、ある意味では陳腐化するほど)、さらにそうした状況を踏まえ、他のアニメや マンガ などで度々 パロディ としても取り上げられてきた点があります。 元作品自体も度々再放送されたりリメイクもされていて、「日本人なら知らない人はいない」 という作品になっている点が大きいのでしょう。

 ネットの世界でも アスキーアート (AA) となり、オリジナル展開のものだけでなく、改変されたものも数多く出現しています。 代表的な物としては、パトラッシュが他のものになって 「パトラ…誰だよお前」 になったり、パトラッシュがネロを引っ叩いてネロが 「ぶべら」 になるなどですが、いずれにせよ、広く世代を越え親しまれるシーン、そしてセリフとなっています。

人気作品 「フランダースの犬」 とセリフの刷り込み効果

 往年の名作アニメのクライマックスシーン、感動の名場面で使われたセリフが、日常生活の中で無意識に出てしまうほど浸透しているケースは色々あります。 例えばスイッチを押す時、ネットで買い物をすることを ポチる といいますが、これは人気アニメ 「タイムボカンシリーズ」 に登場する作中セリフ、「ポチっとな」 が元ネタとなっています。 これも別にタイムボカンのファンがそれをアピールするために使っているわけではなく、日本人の魂に刷り込まれた新しい日本語だといって良いでしょう。

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オリジナルパターンのAA
パトラッシュ、疲れたろう。
 
   ,.-─-、
   / /_wゝ-∠l
   ヾ___ノ,. - >
   /|/(ヽY__ノミ
  .{   rイ  ノ
 
僕も疲れたんだ…
何だかとても眠いんだ…パトラ…
小型化版AA
さらに小型化されたAA

 この 「もう疲れたよパトラッシュ」 もその代表選手のような言い回しですが、なぜこの物語が日本でここまで人気を得て、さらに言い回しまでがこれほど定着したのでしょうか。

悲劇性が強調された日本版フランダースの犬

 アニメ 「フランダースの犬」 は、イギリスの女性作家ウィーダ (Ouida/ Marie Louise de la Ramèe/ 1839年1月1日〜1908年1月25日) が19世紀に書いた児童文学 「A Dog of Flanders」 が原作となっています (日本でも明治41年に日高善一訳の同名小説として出版)。

 19世紀のベルギー北部のフランドル地方を舞台に、美術をテーマとした貧しい少年の悲劇の物語となっていますが、原作では少年は15歳の設定であり、「絵描きの夢破れて半ば自ら死を選ぶ」 といった筋書きとなっています。

 くだんの最終回のシーンもほぼ同様の内容となっていますが、ヨーロッパでは悲劇の物語というよりは、志半ばで自分から人生を切り開くことを放棄した負け犬の物語であり (あと数日生きながらえていれば、状況は劇的に改善し栄光が待っていた、つまり夢を諦めるな、最後まで希望を捨てるなとの反面教師的な内容だった)、あまり注目もされていなかったようです (類似の物語が数多く存在したこともあります)。

 日本のアニメ版フランダースの犬は、少年ネロの年齢設定がずっと下で10歳ですし、度重なる不運、それによる誤解、周りの大人の無理解などにより、ネロが自らの力では克服できない悲劇に巻き込まれ、選択の余地なく死を迎えるような内容となっていました。

 こうした改変はフランダースの犬が紹介された国によっていくつかのパターンがありますが (アメリカなどでは最後に大聖堂で凍死せず、また行方不明だった父親が名乗り出るなど、ハッピーエンドとなっているものもあります)、日本版のこうした筋書きは日本人の死生観にも合致し (死によって救済が図られる、真の安らぎを得られるなど)、いたく琴線に触れるものでもあったのでしょう。

 なかでも空腹と疲労困憊の中、雪中をさまよい、やっと訪れた教会大聖堂で目にした憧れのルーベンスの絵の前で、大好きなパトラッシュと共に天使に誘われながら天国へと旅立つ姿は感動的に描かれ、より悲劇性を増すと同時に、子供だけではなく大人にも強い印象を与えるものとなっていました。

 おたく用語や ネットスラング には、もうこれで終わりだ…といった意味の言葉がたくさんありますが、現在使われているそれらの言葉のひとつの原点がこの 「もう疲れたよパトラッシュ」 であり、日本人が日本人としての感性を持ち続ける限り、この言葉も永遠に語られてゆくことになるのでしょう。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2004年8月25日)
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