同人用語の基礎知識

肉筆回覧誌

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同人誌の原点のような同人誌、肉筆回覧誌

 「肉筆回覧誌」(にくひつかいらんし) とは、文字通り肉筆、すなわち手書きの イラスト や文章をそのまま スケッチブック (スケブ) や大学ノートなどに記入する体裁の同人誌のことです。 1冊のノートをサークルの仲間で交代で記入したり、それを見たりするので、たいていは回覧する体裁を取ります。

 同人 の活動などで回覧を前提としないもの、例えば個人で作ったものは、「肉筆誌」 や 「肉筆本」 となります。 また 「肉筆同人誌」 などとも呼びますが、いずれにせよ肉筆本は原則として 一冊しか存在しない = 回覧が前提 となっているであろう点は同じです。

 同人誌 とは同好の士と趣味で作った雑誌・本のことですが、恐らくこの言葉の意味に一番近いのは、小・中学生の頃に マンガ が好きな人なら一度はやった 「クラス内回覧の肉筆ノートマンガ」 なのかも知れません。

 現在では、マンガや小説の同人誌に限っては、「即売会で 頒布 する為に自費で作った本」 のことを指すといって良い状態ですし、オフセット印刷 までは手が出なくても、コピーはどこのコンビニにもありますし、自宅にプリンターも当たり前にある時代です。 また 同人誌即売会 の存在も広く知られているので、しょっぱなからいきなり印刷した同人誌を作るケースが多いようですが、それでも手軽に の回覧ができる肉筆回覧誌は、小学生から大学生までの学生や、マンガサークル、マンガ研究会、アイドル研究会、ゲーム のファンサークルなどで普通に見かけるポピュラーな同人誌として健在なようです。

 大学の漫研などでは、外部頒布用 (発表用) の同人誌はオフセット印刷で発行、それとは別に、サークル内部だけのために肉筆回覧誌をいくつも回している場合もあります。

肉筆の持つ迫力と、他人の絵を見ることによるレベルアップ

 安価な印刷方法が普及し、ちょっとした 部数 の本でも気軽に発行できるようになった現在でも肉筆回覧誌が廃れないのは、やはり肉筆イラストの持つ迫力や、他人のイラストワークを生原稿で直接見ることによる回覧参加者の技術向上に結びつく効果があるからだと思います。 消しゴムで消していても伝わる下書きの線、修正の痕跡、色塗りの方法など、印刷されたものでは伝わらないアナログな情報が肉筆イラストなどには詰まっています。

 回覧の参加者は大半が友人やサークルの仲間でしょうから、それを前にして技術的な討論なども可能になりますし、そもそもその回覧誌に自分がイラストなどを描くこと自体、いくばくかの 「失敗ができない」 緊張感もあって、よい修行になると思います。

 ただし1970年代くらいまでは、そもそもプリンターやコピー機自体がほとんど普及せず (もっとも普及の早かった大学あたりでも、まだまだ贅沢品扱い)、個人が印刷物を作るのが現在よりはるかに難しく費用もかかる時代でしたから、当時の肉筆回覧誌と現在のそれとは、内容や体裁がほとんど同じで効用も近いものがあったとしても、意味合いはかなり違っていると思います。 昔はそれしか選択肢がありませんでした。

ほんのちょっと前までは、コピーですら大変でした…

 現在はどこにでもあるコピー機 (複写機) ですが、筆者が子供の頃 (1970年代) は、紙と云えばわら半紙か画用紙、ケント紙、模造紙、印刷と云えば謄写版 (ガリ版) の時代でした。 コピー機やプリンターが普及していなかったので、現在のような上質な印刷用紙やコピー紙もありません。

 青焼きと呼ばれる湿式の複写機はありましたが、取り扱いが面倒で印刷物の寿命も短く、しかも高価。 一方ガリ版は、ヤスリ板の上で鉄筆でロウ紙に手書きで描く (原稿 を書く (描く) のではなく、「切る」 と云っていました) 必要があり、印刷工程も面倒な上に、印刷物の取り扱いもやっぱり面倒なものでした。 ちょっと手で触ると容易にインクがにじんで紙と手が汚れたりしましたし。

 筆者はお小遣いをためて、学校などで使っているようなB4の謄写版を購入、中学生の頃に自宅で同人誌などを刷っていましたが、イラストなどでベタ部分など作ろうものなら、インクがいつまで経っても乾かない…なんて苦労もありました。 紙とペン、インクで描く漫画やイラストと根本的に描き方が違っていて、どうにも扱いにくく感じていました (印刷中にロウ紙がビリっと破れたりすると、一応修正の方法はあるとは云え、ちゃんとした印刷にするならほとんど最初からやり直しみたいになって凹んでいました…)。

 なお コミックマーケット が始まったのは1975年12月21日ですが、初期からしばらくは、同人誌即売と云うよりは、肉筆回覧誌の閲覧などがメインで、頒布物は1枚ものの、今で云う ペーパー のようなものが多かったようです。 サークル参加者も大学などの漫研などが多く、当時はこれで十分だったんですね。

 その後 アニメ ブームなどをはさみ、同人誌は頒布するのが主流となって行きますが、脈々と続く肉筆回覧誌は、今後も 「学校の美術の時間以外で描いたイラストを、生まれて初めて他人に見せるためのもの」 として、ずっと続いてゆくのでしょう。

恐るべき 「昔描いた肉筆回覧誌」 の殺傷力

 ところでこうした肉筆回覧誌は、大学の漫研あたりのものなら代々部室に受け継がれて保存されたりもしますが、中学の頃に仲良しグループで作ったものなどは、その後それぞれが進学してバラバラになったりして散逸、行方知れずになる場合が多いようですが、実は後になって意外と ひょっこりと出てきたりします。

 他人が持っていた場合には同窓会などで、自分が持っていた場合には、引越し、それも実家から独立とか結婚などの人生の大転機にあたるケースが多いようです。 懐かしい反面、「死にたくなる」 ほど恥ずかしいのもこうした肉筆誌。 今と比べたら稚拙な技術のイラスト、中二病邪気眼 丸出しの、おかしな設定で作られた恥ずかしいMy キャラ の数々、思わず穴があったら入りたくなったりもするようです。

 筆者も当時そういうものをいくつか作っていましたが…やっぱり即死させる威力がありそうです…。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年3月22日)
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