同人用語の基礎知識

子供向けポルノ追放運動

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恐らく史上最大の広がりを持った運動でした。 でも…

 「子供向けポルノ追放運動」 とは、1990年に和歌山県の一主婦の訴えにより全国的な展開となった運動で、「エロティック」 な内容のマンガに対する、恐らく現在までで最大の反対・追放活動でした。 「児童向けポルノ追放運動」、または 「有害コミック排斥運動」 などとも呼ばれています。

 元々は、ある青年誌 (青年誌が子供向けの雑誌かどうかもそもそもの疑問ですが) に連載中のエロティックなマンガに対する、ある宗教団体の機関誌に掲載された、「コミックを通して全ての日本人を性の奴隷にしようとしている人々がいる」 との告発文が発端でした。 その後それを一因として 「コミック本から子供を守る会」 が結成され、運動は全国に飛び火。 問題のコミックが連載中止、単行本の自主回収となったのを始め、各地でマンガ専門店の経営者や店長、同人誌編集者の逮捕、あるいは書店や出版社への家宅捜査などが相次ぎました。

 それまでの類似の運動の時と同様、作品を作る (売る) 側の “自主規制” で沈静化しましたが (「出版倫理協議会」 という業界団体によって、いわゆる 「成年コミックマーク」 も、この時作られました)、その間の運動のあり方、制作者側の対応については、様々な否定的意見もあります。 → 「有害図書」 → 「有害コミック」 → 「児童ポルノ法案」 → 「青少年健全育成条例」

 なお業界団体による自主規制に関する年代別の施策については、次のページをご覧頂けると一目瞭然なように 「青少年を有害な作品から守る」 と云うのをそのもっぱらの目的としています。

○ 雑誌や出版物等に関する青少年関連施策

 「マンガは子供が見る物である」 との暗黙の前提がそこにはある訳ですが、その認識が昭和40年 (1965年) から全く変わらず、近年にあってはそうしたマンガの持つ子供向けイメージを引きずりながら 「児童ポルノ法案」 のように 「子供が読むことを禁じている成年向けの作品」 であっても規制の方向に持ち込まれようとしている点は、警戒して見ていなければいけない傾向だと思います。

実は筆者も若干の当事者でした…

 ところで運動がここまで盛り上がったのには、前出の主婦の訴え以前に、いわゆる連続幼女誘拐殺人事件の宮崎勤容疑者 (当時) が逮捕され、彼がマスコミの偏った報道により、いわゆる 「おたく」 的なイメージを体現した存在であったことが強く影響していた点は見逃せないポイントです (コミケ会場前で 「皆さん、ここに10万人の宮崎勤がいます!」 とTBSの女性レポーターがテレビ中継で叫んだのは有名な話です)。

 さらにそのすぐ後に東京都の生活文化局が市販されている 332種の週刊誌や月刊誌におけるセックス描写の調査と発表を行い、それを受けて朝日新聞が社説で 「貧しい漫画が多すぎる」 とのマンガバッシングを行っていました。 既にマンガ界の重鎮、手塚治虫氏は他界していたことなど、マンガを取り巻く環境が (たぶんにミスリードされていたものとはいえ) 最悪に近い状況だったという下地がありました。

当時のコミックを扱う出版社の状況は

 ちなみにこの運動が最盛期を迎えた頃、筆者は月刊誌4誌で3〜4作品のマンガ連載を持っていたんですが、もうモロに直撃を受けました… (;_;)。 べつに筆者の描いていたマンガは、美少女系でもHなシーンのあるマンガでもなかったんですが、それですら、出版・編集側の内容修正要求は、すさまじかった記憶があります。 知人には、そうしたジャンルで活躍している人もいましたが、彼らに対する風当たりの強さたるや、推して知るべし…って感じでしょうか。

 恨みついでに続きを書くと、4誌のうち創刊したてだった1誌は2ヶ月後の第6号で休刊 (セブンイレブンやローソンなどのコンビニが、その手のコミック誌を全面的に納入停止としたのが決定打でした)、別の1誌は極端に発行部数を落として低空飛行のまま2年後に休刊、残った2誌は乗り切りましたが、鬼のようなネーム修正を毎号食らって、半年余りの間は編集者としょっちゅうケンカしていました。

 Hシーンだけでなく、暴力表現や非行的表現 (タバコはもちろん、セリフのちょっとした言い回しなど) にまで、細かくチェックが入ったものでした。 自主規制の明らかに行き過ぎだった訳ですが、出版社上層部はともかく現場では、「その場を何とか乗り切るために」 ではなく、「コミック文化を滅ぼさない為に今は我慢の時」 みたいな悲壮感漂う切実な思いで作家の説得に走り回っている真面目な編集者も結構いて、修正要求に腹を立てながらも、切なく感じたものでした。

 宮崎事件も有害コミック追放運動も現在では遠い話になりましたが、猟奇的な犯罪は後を絶ちませんし、「児童ポルノ法」「青環法」 など、依然マンガを取り巻く環境が厳しい点は変わりがありません。 2004年の奈良県の女児誘拐殺人事件では、容疑者が捕まる以前の段階で、「犯人は 「フィギュア萌え族」 だ」 などと真顔で云うジャーナリストまで出る始末ですし、CCサクラの掲示板などが犯人の常駐先だったかのような憶測報道も流れています。 嫌な時代になったものですね…。

自分の躾の不備を他人に擦り付ける醜さ

 2005年〜2006年になって、警視庁を中心に、コミック本やアニメ、ゲームの 「青少年に与える影響」 の研究が盛んになってきました。 中には、「子供の読む漫画本には少女を性的に虐待する内容が多く含まれており、さらにそうした書籍がビニールで覆われて書店に並び、保護者などが内容を確かめられなくなっていて問題だ」 と話す人もいて、思わず苦笑してしまいました。

 成年向けコミックはビニール袋などで覆い、子供が誤って見てしまわないように配慮しろ! と 「子供向けポルノ追放運動」 の際に保護者団体が主張したので、書店や出版社はそれに従った訳ですが、自分たちが出した要求すら忘れているんでしょうか。 もはや 「因果関係などどうでもいい、これまでの経緯も関係ない、とにかく何が何でも規制するんだ」 と思ってやっているとしか思えません。

本格的なマンガ世代が親となって、少しは良くなるのでしょうか…

 「子供が手にしてはいけないもの」 を、「子供が手にする」 のは、保護者の指導、教育、しつけの問題です。 自分たちがろくにしつけもせずに、その責任を他人にばかり押し付けるのは独善的で本当に醜いと思います。 子供がタバコを吸うのは、自動販売機があるからではありません。 あなた方、保護者が、ちゃんと自分の子供をしつけていないからです。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2000年10月16日)
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