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風邪?花粉症?伊達マスク?…用途色々 「マスク」

 「マスク」 とは、顔や頭部に装着、あるいは被って覆い、保護するもののことです。 口元を覆うガーゼ製の布マスクや仮面やお面、覆面、あるいは日本では一般にゴーグルと呼ばれているようなもの (水中メガネやスノーゴーグルなどのスポーツ用品) も広くマスクと呼ばれます。 また酸素マスクなどのように、口から酸素を供給することだけが目的のものもあります。

 主な用途は顔面や頭部の保護、目の保護や、口や鼻から呼吸する際にウイルスや細菌、花粉、粉塵、唾液の飛沫などの吸い込み・吐き出しを防止・抑制するなどが代表的です。 とくに天然・化学問わず繊維の織編物や不織布で作られた衛生・医療用の白いマスク (サージカルマスク) は家庭用の日用品としてもよく使われ、日本においてはマスクの代名詞的存在でしょう。

 スポーツ用品としてのマスクはともかく衛生・医療用のマスクは、一昔前までは医療関係や食品製造関係、工事現場などの産業用途を除けば、学校の給食時に給食当番の子供がガーゼタイプのマスクを着用したり、風邪やインフルエンザに罹った時に他人にうつさないために使用するなど、実用性重視の使い方が 一般人 の日常的な使い方でした。 ファッション目的と云えば、せいぜい不良少年少女のマスク姿や、芸能人などの変装に用いるくらいでしょうか。 まだまだマスクが 「非日常」 だった、とも云えます。

 その後花粉症の被害がとくに都市部で深刻化し、花粉の吸入を防ぐためのマスク使用も一般化。 不織布で作られたマスクの登場 (1973年) や立体的なプリーツ型マスクの登場 (2000年) と普及により、主に都市部を中心に 「風邪やインフルエンザ、花粉の季節には街中にマスク姿があふれる」 という、現代日本の風物詩のような風景が見られるようになりました。

不織布マスクの登場と、花粉症・新型インフルエンザの流行

代表的な家庭用サージカルマスク
代表的な家庭用の使い切りサージカルマスク

 不織布マスクは日本で原型が作られましたが、それまで給食で使うような見慣れたガーゼタイプマスクと異なり、鼻から顎まで顔の下半分を大きく覆ういかにもメディカルな見た目であり、当初はその違和感と使い捨て前提のコスト感から、一般層への普及はあまり進まなかったようです (筆者も1990年代後半頃までは、街中ではほとんど見かけませんでした)。

 しかしその後、立体型・プリーツ型となった製品が 2000年に販売されると状況は一変。 呼吸が比較的しやすいこと、口部分に密着しないため化粧が乱れにくいこと、また1枚数十円から十数円程度へと低価格化が進む中で一気に普及することに。

 とくに花粉の当たり年とも呼ばれた1995年、それを経た次の当たり年2000年は飛散量も多く期間も長く、当時はまだ比較的割高な価格でしたが、前回の当たり年で苦しめられた大勢の花粉症患者が 「少しでも花粉を防ぎたいのぉぉぉぉ」 とこぞって使い始めることになりました。 マスクメーカーも積極的な広告・販売促進を行い、季節商品的に一気に広まります。 また2003年から翌年にかけて猛威を振るった新型インフルエンザ (いわゆるタミフル騒動が起こった) の流行などもあり、「冬・春はマスクだらけ」 のような状態になったのでした。

 一方、安価な使い捨てマスクとしての不織布マスクが広がると、「寒い時期の防寒用」「化粧や髭剃りを忘れた時の顔隠し用」 に使用する人も増えます。 中には 「マスクをすると美人に見える」「何歳か若返って見える」 という意見もあらわれ、ファッション用途での利用も増加。 これらは 「伊達マスク」 と呼ばれるようになり、マスク美人といった概念も広がります。

 元々一部の人たちの間では、看護婦 (女性看護師) のナース服やナース帽に 萌える といった人たちが一定数いました。 しかしマスク自体は 「せっかくの顔が隠れてしまう」 と否定的意見も少なくない中、「マスクがあって当たり前」 の世相の中で 「マスク萌え」 も広がることになりました。 さらにマスクをつけたままエッチをする、マスクをずらしたり穴あきマスクを着用して男性器を舐める (フェラチオ)、マスク姿に射精する (マスク顔精) なども次々に登場するようになりました。

 こうしたことが相互に作用し、ナース萌えやメディカル萌え・フェチ眼帯包帯、あるいは絆創膏やギプス、松葉づえなども含む) から一歩抜きんでたマスクフェチという ジャンル を作り上げるまでになります。 とくに AV (アダルトビデオ) の世界では、顔を隠すことに一定の需要がある (素人出演者が顔バレしないため、あるいは素人感を出すための演出、容姿の難を隠す) こともあり、様々な作品が登場することとなりました。

ニコニコ動画の 「踊ってみた」「ニコ生」 などで広がるマスク姿

 一方、若者のマスク文化に別の新しい流れが始まります。 2006年12月に実験用のプレオープンでサービスが開始された 動画サイト 「ニコニコ動画」(ニコ動)、および翌年12月の 「ニコニコ生放送」(ニコ生) 開始による、素人配信者の登場です。

 素人の動画配信プラットフォームはこれが最初という訳ではありませんが、若者に人気のあったニコ動のサービスということで、様々なパフォーマンス動画をアップする人、ニコ生を配信するニコ生主 (生主) といった人たちが急増。 その一部に顔バレを防ぐためのマスク姿が現れ、「踊ってみた」 といったダンス動画や、画面上から視聴者に語り掛けるマスク姿などが多く見られるようになりました。

 同じ頃、アニメ 「涼宮ハルヒの憂鬱」(2006年4月から7月) が大ヒットしていて、ハルヒが通う県立北高校の制服も コスプレ の世界で大人気に。 踊ってみたムーブメントに同作品のエンディングに流れる 「ハレ晴レユカイ」 に乗せた踊り、通称 「ハルヒダンス」 が影響を与えたこともあり、この制服にマスクを組み合わせると、何やら自動的に踊ってみたやニコ生主のような雰囲気が出てくるのは面白いです。

 それ以前から顔出しで ネット による活動を行っていた若い女性には、ネットアイドル (ネトア) や コスプレイヤー なども存在していましたが、本人の姿を使った作品はあくまで写真などが基本で、動画の配信、ましてリアルタイムの生配信というのはあまりなく、「ニコ動」 が与えたインパクトは、とても大きいものでした。

 「荒い画質で マスク着用の セーラー服 の女の子を見るだけでイケる」 という剛の者まで現れ、また 「ニコ生で大人気の〇〇が脱いだ」 式のマスク姿をフューチャーした 18禁コンテンツ も登場。 制服メガネ といった 萌え属性 の一つに、マスク (白いサージカルマスク) が揺るぎないポジションを獲得することになりました。

「マスク」 による表情の変化…

「マスクの再現図」私で試して遊ぼ♪

これは再現図です。下のサムネイル画像へマウスオーバーすると、左側に大きな再現図が表示されます。

回線の状態によっては、表示までに少々時間がかかる場合があります。

サージカルマスク N95 防塵マスク サージカルマスク+眼帯 マスクなしノーマル

同人におけるマスクの存在感

 元々 同人 の世界には、マスクを扱った作品がそれなりに支持を受けていました。 ナース萌えや眼帯・包帯などを伴うメディカルフェチはもちろん、ミリタリー の世界ではガスマスク、あるいは覆面プロレスラーのようなマスク (覆面) も、エロ・非エロ含め、好きな人が多かったのですね。

 エロの部分でいえば、「月光仮面」 の パロディ として1974年に 「月刊少年ジャンプ」(集英社) で読み切り掲載、翌1975年から連載が開始された永井豪さんの 「けっこう仮面」 があまりに有名ですが、これらは広義の 「マスク」 という名称は同じでも、現在のマスク萌えとは異なる部分も多いでしょう。

 ただし 「一部は隠れているけれど、それ以外は露出している」 というのは 萌え要素 にはしばしば欠かせない要素であり、とくに裸体表現を伴う場合、マスクはしているけれど体は裸、というのは、健康的なただの裸より魅力があると考える人は少なくありません。

 とくにマスクは、眼帯や包帯などと同様に、普段はまったく意識していない 「人間」 の飾り気のないリアルな 「生物」「動物」 としての息遣いを感じさせてくれますし、病気などによる弱々しさ、いつもとは違う表情などに、日常の中の非日常、新鮮な印象や淫靡なイメージを喚起するものでもあるのかもしれません。

おたくや腐女子の、実用品としてマスク

 なお同人や おたく腐女子 の界隈ではこのほか、イラスト の作成や模型・フィギュアの製作などにマスクが必要となるケースがありました。 例えばイラストならエアブラシを使うとき、模型・フィギュアなら、同じくエアブラシやサーフェイサーのスプレー缶 (缶サフ) による塗装作業で塗料やシンナーなどの有機溶剤を使うときなどです。

 これは作業に伴い細かい粒子となった絵の具や有機ガスを吸い込まないための対策で、十分な換気をするとともに、N95マスクや吸収缶つきの防塵・防毒マスクなどが利用されています。 またそうした作業を行う場合は、必ず作業に適したマスクを着用するようにしたいものです (野外やベランダ、開け放った窓のそばで扇風機やサーキュレーターをガン回しでやるとなお安心です)。

「マスク」 の色は白が定番

 日本ではマスクの色は白というイメージが強いこと、また直接身に着けるものということで、人によっては パンツ などの下着類や 靴下 などと同等の扱いをしていることもあり、「マスクは清潔感のある白」(あるいはせいぜい、とても薄いピンク色) が定番となっています。 それ以外の色のマスクもありますし、カラスマスクと呼ばれる黒くてしばしば革製のマスクなども昔からありますが、一般的には暴走族御用達だったりビジュアル系ファッション・ボンテージファッションや SM の扱いだったりで、あまり見かけるものではないでしょう。

 しかし中国などで若い人たちの間で不織布の黒いマスクなどが流行し、その流れが韓国へ行き、いわゆる韓流スターが身に着けるようになると、日本でも都市部を中心に、2010年代後半頃から若い人の一部に黒や濃い色のついたマスクを身に着けた姿が一定数見られるようになりました。 なお中国は経済発展と共に大気汚染が深刻化していること、内陸部の砂漠や乾燥地域の砂塵が黄砂となって飛来することからマスク需要が高まり、近年は日本以上のマスク大国としても知られています。

2011年3月 「東日本大震災による福島第一原発事故」 とマスク

 一般に、日常生活においてマスクをするのは、日本をはじめアジアに多く、欧米などその他の国ではほとんど見られないとの話があります。 これは実際その通りで、この辺りは衛生感覚の違いや大気汚染の状況や黄砂の影響など、お国柄が出ている部分でもあるのでしょう。 最近は日本でも海外からの観光客などが増え、とくに桜が咲く時期は多くの外国人が訪れるようになっています。 街中マスクだらけの春の日本は、事前にそうだと情報を得ていても、欧米の訪日観光客にとってはちょっとびっくりする風景だったりもするそうです。

 2011年3月に起こった東日本大震災では、福島第一原発も大きな損害を受けました。 日本のみならず世界中で放射性物質の漏洩や拡散の不安が広がる中、マスクだらけの日本の街角の映像は、「放射性物質があんな簡便なマスクで防げるわけがない」 と、一部で話題にもなったようです。 というか、筆者の知り合いの外国人も、「マスクじゃ放射性物質防げない、日本人もっと理性的だと思った」 などと半分は冗談めかして悲しんでいましたが、「いや、花粉症です」 と説明したら納得してくれました…。

 ちなみに筆者はマスクをつけると8歳くらい若返って見えるので、普段からマスク派です。

新型コロナウイルス感染症によってマスクが消えた…転売禁止措置も

「取得価格超」は禁止 15日からマスク転売規制―閣議決定」 時事ドットコムニュース (2020年3月10日)
「取得価格超」は禁止 15日からマスク転売規制―閣議決定」
時事ドットコムニュース (2020年3月10日)
「アベノマスク」全世帯に2枚ずつ配布された
「アベノマスク」全世帯に2枚ずつ配布された

 2020年初めころに中国・武漢で発生し、その後世界的な感染拡大を引き起こした新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)。 日本においても多数の感染者や死者を出し、感染拡大の防止が叫ばれるようになりました。

 国や自治体は 「3つの密を避けましょう」(密閉・密集・密接 を避け、濃厚接触 による感染を防ぐ) や 「不要不急 の外出は控えましょう」「こまめに手洗いをしましょう」 といった要請を繰り返し行いましたが、そのうちのひとつに 「マスクをしましょう」 がありました。

 元々感染症対策としてマスクは広く利用されてきましたが、関連の報道や話題が出るたびにマスクが触れられることもあり需要が急増。 そもそも春先は花粉症の季節でもあり、また日本で流通しているマスクの多くが感染症の発生源でマスク需要が増大している中国だったこともあり流通量が激減。 転売屋 などによる買い占めも手伝い、ドラッグストアをはじめ街中のお店から一斉にマスクが消える事態となりました。

 ドラッグストアや日用品を扱うお店には朝からマスクを買い求めようとする人々が長い行列を作り、一部ではトラブルから暴力沙汰も発生。 通販サイトでは在庫があっても価格は上昇しており、ネットオークションサイトでは高値による 転売 も横行。 医療関係者など必要な人にすら行き渡らない状態となりました。

 国ではマスク増産の要請を行うとともに、小売店で購入したマスクを取得価格より高値で売ることを禁じる国民生活安定緊急措置法の政令改訂を決定 (3月10日)。 15日から施行し、違反者には懲役または罰金が科せられることとなりました。 6月には逮捕者も出ています。

 その後も世界的に極度のマスク不足が続き、日本においても入手困難が恒常化すると、本来使い捨てのサージカルマスクを洗って複数回使おうとの呼びかけがなされたり、「マスクを手作りしよう」 といった呼びかけや、具体的な作り方の紹介、自作したマスクの紹介などもされるように。 キッチンペーパーなどを利用した手軽さに重点を置いたものなどもありましたが、生地のデザインにもこだわった布製のおしゃれなマスクも次々に登場し、「かわいい」「自分も作りたい」「欲しい」 といった声が広がり、バラエティに富んだマスクを街中で見かけることができるようになりました。

 同人関係では、推しキャラ がプリントされた布地を使ってマスクを制作、「これで合法的に推しアピールしながら街中を歩ける」 とばかりに積極的な 腐教 に勤しむなど、先行きの見えない厳しい状況の中、息抜きのような話がでることもありました (筆者の周りだけかも知れませんが)。

ガーゼ製の布マスクを全世帯に2枚ずつ配布…「アベノマスク」

 また洗うことで繰り返し使えるガーゼ製布マスクの、全国民への配布も実施。 これは安倍晋三首相と政府がこれまで行ってきた経済対策 「アベノミクス」 に倣い、いくばくかの揶揄の意味も込めて 「アベノマスク」 と呼ばれるようになりました。 なおこの施策の発表が4月1日だったことから、当初はエイプリルフールの ネタ だと感じた人も多かったようです。

 元から一部の人にとっては生活必需品でもあるマスクですが、これほどの規模で世界中で、日本で、マスクマスクと騒がれたことは歴史始まって以来なのかも知れません。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2007年10月22日)
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