学生鞄からスクバへ…軽くておしゃれな 「スクールバッグ」
「スクールバッグ」（School Bag） とは、主に中高生が通学時に用いるナイロンや合皮製のボストンバッグのことです。 略してスクバと呼ぶこともあります。 元々この種のバッグは革製の学生鞄 （かばん/ 学バン） が主流の時代に、スポーツ系の部活動を行ったり荷物が多い時に用いるサブバックのような扱いでした。 いかにもスポーツ用品を運ぶバッグと云った風情で、形状もかまぼこ型や台形のようなもので、表面に光沢のある明るい 色 のものでした。
しかし学生鞄が様々な理由 （後述します） によって存在感を喪失する中、1980年代末から1990年代に入るあたりから、「通学時の鞄」 として中心的な役割を担うようになっています。 またそれに伴い、鞄ではなくバッグという呼び方に変化しています。
スクールバッグの色や形、大きさなどは様々ですが、暗めの紺や黒、茶の長方形の本体に薄いグレーか本体と同色の比較的長い紐状の取っ手 （ショルダー） がリベットで固定される形でついたものが代表的です。 大きさはA4サイズの教科書や教材がゆとりをもって収納できる程度 （縦 25cm〜30cm、横 35cm〜45cm 奥行き 15cm〜20cm 程度）、本体上部には両脇の途中まで開く大きな開口部があり、両開きのファスナー （ダブルファスナー式） によって開閉が可能です。
その他前面部分にいくつかの開放式のポケットやファスナー付きポケットがついていて、内側には仕切りのついた多機能ポケットが設けられ、持ち物を整理して収納することが可能です。 ペットボトルや水筒のためのポケット、時代を下ると携帯電話用の収納部を持つ場合もあります。 とにかく実用性と収容力重視が大きな特徴です。
持ち方は肩にかける、手で持つ他、ランドセル や リュック のようにショルダー部分に両腕を通して背負うことも可能です。 ショルダーはおおむね 70cm〜80cm 程度の長さがあります。 重量は革製の学生鞄よりかなり軽く、重くてもせいぜい 1kg 程度までに収まります。 価格は高価なブランド品もありますが、標準的なものは数千円程度で、本革製の学生鞄などに比べるとはるかにリーズナブルです。
学校によっては学販品として特定の既製品が定められていることがあります。 その場合、スクールカラー に合った色が選ばれたり、校章や学校名などが入っていることもあります。 単に色や大きさだけが校則で決まっていて、生徒が好きなものを購入して用いることもあります。 革製の学生鞄の場合、いわゆる 「つぶし」 や持ち手の延長といった改造がされるケースが多かったものの、スクールバッグの場合は本体にあれこれ手を加えることは稀で、おおむね布製のマスコットやキーホルダーのような飾りを幾つかぶら下げるといったアレンジに留まることが多いでしょう。
つっぱりブームと変形学バンとスクバ
1970年代から1980年代にかけて、いわゆる不良・つっぱりファッションが流行します。 男子は学生服 （学ラン） の トップス を長くしたり短くしたり、ボトムス のズボンを太くしたりといった制服の改造に精を出します。 女子の場合は スカート をマキシ丈程度にまで伸ばした ロングスカート が 「渋い」 と呼ばれた時代です。
この頃は革製の黒くて硬くて重い学生鞄が主流でしたが、多くのつっぱりファッションの生徒は薄く潰し、取っ手部分は外して紐や鎖で延長し、ビニールテープなどを捲いて使用していました。 ノーマルの分厚い鞄は 「ブタ鞄」 などと呼ばれて避けられていました。 その他、ステッカーやシールを本体に貼ったりが 定番 のアレンジでしたね。
ちなみに取っ手の延長は手にぶら下げたままポケットに手を入れられるように工夫したものですが、その後様式化される中でアレンジもされ、例えば延長用に捲いた赤や白のビニールテープの色で 「喧嘩上等 （かかってこいや！）」「恋人募集中 （気軽に声をかけてね）」「彼氏・彼女持ちです （浮気防止で交際相手にそうせよと命じられる）」 みたいな意味をつけることもありました。 ステッカーはロックバンドなど好きなアーティストのそれや車やバイク関係とか暴走族のもの、日の丸やハーケンクロイツ、当時流行したジョークマスコット 「なめ猫」 や原宿のブティック 「クリームソーダ」 のものなどもありました。
1980年代後半になると、学校側から 「見苦しい」 と思われる変形学生服や変形通学鞄を減らすための様々な工夫がされます。 代表的なのは学ランから ブレザー制服 への変更などですが、鞄についてもサブバッグ扱いだったボストンバッグの通学用鞄への正式な採用など、様々な動きが起こります。 それに伴い、スポーツブランドのロゴなどが大きく入ったスポーティーでかまぼこ型のボストンバッグに代わり、現在のような黒っぽい箱型のものが使われるようになります。
また生徒の側からも、世代が変わる中で不良やつっぱりが 「古いもの」「ダサい もの」 とのイメージが徐々に広がり、とりわけ女子の長いスカートから ミニスカ への流行の変化などにより、「いかつい」「硬派」「渋い」 から 「スマート」「ナンパ」「おしゃれ」 なにより 「かわいい」 へと価値観や目指す方向の変化が生じます。 時代的にはバブル景気に向かいピークを迎えるあたりで、世の中は好景気に浮かれヨーロピアンでおしゃれな DCブランドが人気であり、そんな中で古めかしく暑苦しい学生鞄からスクールバッグへの世代交代が行われたのでした。
なおさらに時代を下ると、今度は背負いバッグのリュックも人気となっています。 ひと昔前までのリュックは、実用性重視でアウトドアやおたくっぽいイメージもあって避けられがちでしたが、通学用バッグとして急速にその存在感を増しています。
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